日産、18年間のゴーン体制から日本人新社長の西川体制でどう変わる?(1/2)
- 筆者: 桃田 健史
ゴーン氏、日産入りからあっと言う間の18年間
カルロス・ゴーンCEOが2017年4月1日付で、日産のCEOから代表取締役会長へと役職が変わる。思い起こせば、ゴーン氏が鳴り物入りで日産入りしたのは、いまから18年前の1999年だ。なんと、18年間である。これほど長い間、彼が日産を率い続けるとは、我々メディアはもとより、日産の社内でも想定していなかったはずだ。
ゴーン氏が日産入りした当初は「コストカッター」と呼ばれ、製造拠点の再編や、部品メーカーによるサプライチェーンの大幅な見直しに着手。そうして日産を身軽にした上で、一気に商品ラインアップを入れ替えた。その陣頭指揮を執ったのが、いすゞ自動車からヘッドハンティングされた、デザイン部門統括責任者(後のチーフ・クリエイティブ・オフィサー)の中村史郎氏だ。ムラーノやインフィニティFX(日本未発売)など、優美で大胆なデザインを次々と量産化。そして、ZとGT-Rに新たなる道筋をつけた。
その中村氏は2017年3月31日をもって、専務執行役員を退任する。同氏には様々な取材を通じて、筆者は大変にお世話になった。かなり無理な取材リクエストについても対応して頂いた。この場を借りて、御礼を申し上げたい。
長い間、お世話になりました。本当にお疲れさまでした。
西川(さいかわ)体制で問われる、2大領域のバランス感
2017年4月1日、日産のCEOに西川(さいかわ)廣人氏が就く。同氏はこれまでもゴーン氏の右腕として日産の経営をやりくりしてきており、基本的にはこれまでの経営体制が大きく変わることはないと思われる。だが、経営に対する姿勢は大きく変わる可能性がある。
なぜならば、自動車産業界がいま、100年に一度の構造転換期に突入しており、日産としても旧態依然とした製造販売業からの大転換に迫られているからだ。自動車産業界の構造転換を語る上で、大きく2つの領域を挙げなければならない。
ひとつは、「n数商売」だ。これは、大量生産・大量消費を意味すること。自動車業界におけるn数とは、絶対的な車両の台数を意味し、具体的には新車の販売台数を指す。自動車産業は、その創成期から「より多くのクルマを売る企業が成功者」という民主主義的な発想を基盤として成長してきた。
この論理の中で、ゴーン体制では、日米市場の二極化から、中国、インド、ロシア、そして東南アジアなど、いわゆる新興国での製造と販売を伸ばしてきた。また、高級車インフィニティのブランド戦略を刷新してきた。
近年では、日産、インフィニティ、そしてダットサンの3ブランド体制で世界市場に対応している。
もうひとつが、「インテリジェント化」だ。今年1月の米ラスベガスで開催された世界最大級のITと家電の見本市「CES2017」で、「日産インテリジェント・モビリティ」構想を発表した。これは、パワートレインの電動化(エレクトリック・ヴィークル:EV)、自動走行化(オートメイテッド・ヴィークル:AV)、そしてクラウドとつながる(コネクテッド・ヴィークル:CV)が融合した形だ。
こうした「n数商売」と、「インテリジェント化」は相反する関係にある。インテリジェント化が進めば、最小限の台数で最大限の社会受容性を満たすことができるからだ。
日産に限らず、自動車メーカー各社は今後、こうした自動車産業界の「矛盾」に対して、「n数商売」と「インテリジェント化」とのバランスをどう取るかが、経営における最大の課題となる。
「インテリジェント化」の中のEVについて、日産はルノーグループと含めて世界最大の累積販売台数を誇っている。また、新型セレナで「単一車線における自動運転」と称した商品戦略で、日系メーカーの中では頭ひとつ、AV実用化をリードしている。
逆に言えば、日産は「インテリジェント化」の実用化が他社よりも進んでいるがゆえに、「n数商売」とのバランス感を取ることが難しいと言える。
こうした難題にどう立ち向かうのか。西川体制のお手並み拝見だ。
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