ゴーン氏逮捕で“どうなるニッサン!?”|浮いた高額報酬は国内向け車種拡充に充てよ!

明らかになった50億の隠し報酬! さらに余罪も次々と明らかに

日産のカルロス・ゴーン会長が、有価証券報告書に虚偽記載を行った疑いで逮捕された。2010年度から2014年度までにカルロス・ゴーン氏が受け取った報酬の合計額は99億9800万円だが、有価証券報告書の記載は、約半額の49億8700万円とされていた。

このほかにも日産の子会社や孫会社の資金で住宅を購入したとか、家族旅行の費用を負担させたという報道もある。数億の報酬を得ながら有価証券報告書に虚偽の記載をしたり、家族旅行の費用まで負担させたとなれば、「どこまでケチなのか!?」と思うのは当然だろう。

ちなみに日本企業の常識的なトップは、極端に多額の報酬を好まない。むやみに税金ばかり徴収され、企業に良くない影響を与えるからだ。自分が受け取る報酬以前に、お金を有効に使いたいと考える。

そして企業のトップが最も優先するのは、優れたモノ造りとか、世の中への貢献だったりする。そこに満足感を求めるのだ。その意味でもカルロス・ゴーン氏の金銭欲を丸出しにした犯罪は、ショッキングであった。

カルロス・ゴーン氏は会長だから、一緒に仕事をしていた西川 廣人社長を含めた日産の上層部にも帰責性が生じる。なぜもっと早い段階で不正を見抜けなかったのか。東京地検特捜部が、法人の日産も立件する方向で検討中との報道も納得できる。

>>ゴーン体制崩壊でどうなる!? 日産の次期モデルを画像で見る[フォトギャラリー]

賛否両論あるが・・・日産V字回復や、Z・GT-R復活の功績は大きい

問題は今後の展開だ。カルロス・ゴーン氏は、日産の社長や会長を務めると同時に、ブランドイメージを構築する重要な柱になっていた。就任当時のリストラには賛否両論あったが、業績を回復させたのは事実だ。

商品面では、スポーツカーの「GT-R」や「フェアレディZ」を復活させたり、身近な車種ではコンパクトカーの「ティーダ」や「ノート」などの人気車も、ゴーン体制になってから生まれた。

カルロス・ゴーン氏はインパクトの強い風貌、要点を鋭く突いたスピーチなどに個性があり、同氏の辣腕ぶりとリンクして、従来の日産が持っていた官僚的なイメージを見事に覆した。

そして山積みの難題を片っ端から処理していくヒーローのようなカルロス・ゴーン氏が、実は陰で私服を肥やす悪事を働いていたから、20年前の業績悪化から立ち直った日産のイメージまで大きく損なわれた。

日本はオマケ!? 世界市場注力の一方で国内急降下! 新型車も出なくなった

国内販売で5位に堕した日産、もはや6位のマツダに接近か

日産の国内乗用車メーカーにおける販売ランキング順位は、トヨタ/ホンダ/スズキ/ダイハツに次ぐ5位だ。すでに下がり切っているから、直近で一層下がることは考えにくいが、今の状態が長く続くと日産の状況は一層悪くなる。

日産と同様にカルロス・ゴーン氏が会長を務める三菱は、国内販売順位が最下位の8位とはいえ、今回の一件は将来に悪い影響を与える。

仮に日産や三菱が「今は海外で稼ぐから、日本国内は低迷しても構わない」と考えていたら、今の状態を放置するだろう。日産車の売れ行きはさらに下がり、6位のマツダに近づいていく。

逆に国内販売を多少は上向かせたいと考えるなら、新型車の国内投入を活発化するなど対策を立てるべきだろう。最近は両社とも新型車の発売が滞っていたからだ。

日産の新型車は国内で2年に1度しか発表されない!?

日産と三菱は2014年2月に、両社が共同開発した「日産 デイズルークス」と「三菱 eKスペース」を発売した。この次に発売された新型車は、日産が2016年8月の「セレナ」、三菱は2018年3月の「エクリプス クロス」だ。OEM車を除くと、日産の新型車発売は2年に1車、三菱は4年に1車になってしまう。このゴーン体制下で確立された、国内市場に対する消極的な姿勢を改める必要がある。

ちなみに2018年度上半期(2018年4~9月)において、日産の世界生産台数に占める国内の販売比率は、軽自動車を含めて11%だった。軽自動車の生産を三菱が受け持つことから、小型/普通車に限定すると、7%まで下がってしまう。三菱も軽自動車を含めて、国内の販売比率は世界生産台数の7%だ。

しかし、この「日本はオマケの市場」という認識を改めて、国内への商品投入を活発化させるのは容易ではない。

今こそ浮いた高額報酬を国内向け車種の開発費に充てよ!

商品開発には多額の原資も必要だが、カルロス・ゴーン氏に支払っていた金額をそのまま充当すると、結構な開発が行える。

2010年度から2014年度の5年間に受け取ったゴーン氏の報酬の合計額は、新聞などの報道によれば前述の99億9800万円になるからだ。

一般的に車両の開発費用は、プラットフォームを刷新すると200億円から300億円といわれるが、基本部分を従来型と共通化した派生的な車種なら100億円前後で済む。5年間で100億円ならば勘定は合う。リーマンショックなどのために開発が凍結された次期型「日産 キューブ」とか、「ホンダ フリード」「トヨタ シエンタ」のような3列シートの売れ筋コンパクトミニバンを開発すると良いだろう。

実際国内の日産販売店を取材していると、キューブのフルモデルチェンジやコンパクトミニバンの新型車投入を要望する声は大きく、それだけの需要が潜んでいるということだろう。

日本では売っていない、海外専用の日産・インフィニティ車を国内にも欲しい!

あるいは、海外で販売されながら日本で扱われない日産車にも、実は魅力的なラインナップは多い。

欧州で生産されるコンパクトカーの「マイクラ」(日本名は「マーチ」だが、現行型のタイ製マーチとは全く別物)や「ティーダ/パルサー」(仕向け地によって名称が異なる)、コンパクトSUVの「キャシュカイ」(先代モデルは”デュアリス”として国内でも販売)、インフィニティブランドに含まれる上級SUVの「QX30」や「QX50」(先代モデルは「日産 スカイラインクロスオーバー」として販売されていた)、実は日本で生産されているインフィニティQ60(旧モデルは「スカイラインクーペ」)など、かなりのラインナップを持っている。

5年間で100億円を投じれば、日本でも喜ばれそうなこれらの海外向け車種を国内へ積極的に投入することも可能だろう。

日産の西川 廣人社長は、記者会見でカルロス・ゴーン氏が行ってきたことを「負の遺産」と表現したが、マイナスを抑えて極力プラスになるように頑張って欲しい。そのためには自動車メーカーの強みとなる魅力的な新型車を発売することが不可欠だ。

再び「日本の日産」に戻って欲しい。

[筆者:渡辺 陽一郎]

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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