2代目NSX、およそ6年の歴史に幕! ホンダスーパースポーツの集大成、ファイナルモデル「NSX Type S」が目指すのは“究極の2代目NSX”
- 筆者: トクダ トオル(MOTA)
- カメラマン:島村 栄二・茂呂 幸正・Honda
ホンダは2021年8月30日(月)、2代目NSXのファイナルモデル「NSX TypeS(エヌエスエックス・タイプエス)」国内向けモデルを正式に発表した。3モーターハイブリッドシステムを搭載し、2016年8月に世界に先駆け電動スーパースポーツカーの姿を世界に提示した2代目NSXも、残念ながらこれで最後。
「究極の2代目NSXだ」と開発者が語る新型NSX Type Sは、世界限定350台を販売。うち国内向けは30台となる。価格は2794万円(消費税込)で、2022年7月に発売の予定。同年12月には生産を終える。
およそ6年で幕を閉じる2代目NSXの集大成となるType S、その詳細をご紹介しよう。
初代・2代目で一貫する開発テーマは“扱いやすいスーパーカー”であること
欧州のライバル車とは一線を画す高性能ぶりで、市場初参戦ながら世界の支持を集めた初代NSX
ホンダ NSXは、初代モデルが1990年にデビュー。先進的な総アルミ製モノコックボディを持つミッドシップレイアウトの本格的なスーパースポーツとして、ポルシェやフェラーリといった世界の強豪スーパーカーに果敢に挑戦した。
高性能でありながら、当時のライバル車のように街乗りなど低中速走行時で気をつかうものではなく、日常での乗りやすさも兼ね備えた“扱いやすいスーパーカー”というコンセプトが支持を集めた。その衝撃はのちにライバルたちへも大きな影響を与えるほどだった。
初代NSXは数度にわたる大きな改良を重ねながら、2005年まで15年の長きに渡り生産が続けられた。
初代生産終了から10年近く経った2016年に復活した2代目NSX
現行型の2代目NSXは、初代生産終了後10年近くが経過した2016年に復活した。
3モーターハイブリッドシステムを4WDと組み合わせる独自の「SPORT HYBRID SH-AWD(Super Handling-All Wheel Drive)」を武器に、新時代の電動化スポーツカーの先駆けとして華々しくデビュー。“扱いやすいスーパーカー”という初代の美点を活かしながらも、性能面では大幅にアップさせている。
初代は栃木県に専用工場を開設し、量産車のような生産ライン体制ではなく、ほぼ手造りで少量が生産されていた(モデル末期には三重県の鈴鹿工場に変更)。2代目も同様の生産スタイルながら、その拠点を米国に移設している。
2代目NSXは2019年5月にマイナーチェンジを実施。SH-AWDのハンドリング性能やデザイン面でさらに進化を遂げている。
新型TypeSは2代目を極めた“スーパーNSX”だ!
システム最高出力は600馬力を上回る超高性能化を実現!
新型NSXの開発を統括する本田技研工業 完成車開発統括部 車両企画管理部の水上 聡 LPL シニアチーフエンジニアはType Sについて『2代目を極めた“スーパーNSX”だ』と表現する。
開発当初、ファイナルモデルを意識して開発した訳ではないというが、結果としてこれが2代目NSX6年間の集大成となる“究極系NSX”となった。
2代目の特徴である高効率・高出力な3モーターハイブリッド「SPORT HYBRID SH-AWD」は、新型NSX Type Sでエンジン、ハイブリッドシステム共に性能を向上している。
3.5リッターのV型6気筒ツインターボエンジンは、ターボチャージャーを高耐熱化させ過給圧を5.6%アップ。インジェクターの燃料噴射流量も25%アップさせた。さらにインタークーラーの放熱量も15%アップさせ冷却性能を高めるなど改良を加えた。
ベースとなる2020年モデルに対し、エンジン単体でも最高出力で+16ps、最大トルクで+50Nmハイパワー化し、最高出力529ps(389kW)/6500~6850rpm、最大トルク600Nm/2300~6000rpmをマークする。
さらにハイブリッドシステムのIPU(インテリジェントパワーユニット)も、バッテリー出力と使用可能容量を拡大している。
結果として、新型NSX Type Sのハイブリッドシステム最高出力は、2020年モデルの581psに対し、610psに向上。システム最大トルクも同様に、646Nmから667Nmへとアップさせた。
これにより従来モデルに対し、さらにアクセルの踏み込みに対し瞬時に反応が可能となり、さらに伸びを感じる加速フィールを得ることが出来た。
ハイパワー化に対応し限界時のハンドリング性能も向上した
ハンドリング面では、グリップ性能を向上させたNSX専用設計のピレリ社製 P-ZERO(前:245/35ZR19/後:305/30ZR19)を装着。
ホイール幅を拡大した新設計の専用鍛造アルミホイールによるワイドトレッド化、磁性流体式アクティブダンパーシステムの減衰力向上といった改良も加えられ、サーキット走行時などの限界性能時のコントロール性も向上している。
実地テストや風洞実験などを重ね、機能性を極めたデザインが結果として“カッコいい”!
新型NSX Type Sは、“究極系NSX”らしい進化をデザイン面でも実現させている。現行モデルと比べるとその差は一目瞭然だ。
NSX Type Sのハイパフォーマンスをビジュアル面でも表現。前後バンパーのデザインを刷新させるなどし、アグレッシブさを増した戦闘的なスタイルに進化させた。
もちろん、NSX Type Sの外観デザインは、見た目の派手さを追求したのではない。
レース経験を積んだエンジニアとデザイナーが、最先端のシミュレーションや風洞実験、さらにテストコースでの走行実験を重ねながら時間をかけて修正しながらデザインを完成させたものだ。
ラジエターやインタークーラーの冷却性向上に加え、フロントスポイラーからリアディフューザーにかけてのダウンフォース性能向上によるハンドリングへの好影響など、全てが意味のあるデザインとなっているのが特徴である。
ホンダが蓄積してきたレースのノウハウを投入し、機能性を最大限向上させた究極のデザインが、結果として“カッコいい”かたちに仕上がった、という訳だ。
NSX Type Sのボディカラーは、新色のカーボンマットグレー・メタリック(+69万3000円)をはじめとする全10色。内装色もレッド、オーキッド、エボニーの3色から選択出来る。価格は2794万円(消費税込)。
全世界限定350台のうち、日本国内向けはわずか30台。ホンダでNSXを取り扱うことが出来る特別なディーラー「NSX PERFORMANCE DEALER(エヌエスエックス パフォーマンスディーラー)」にて、2021年9月2日(木)より予約受注を開始。2022年7月から納車を開始する予定だ。
[筆者:MOTA(モータ)編集部 トクダ トオル/撮影:島村 栄二・茂呂 幸正・Honda]
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