三菱 新型eKワゴン・eK X(クロス) 新型車解説|心機一転! 新体制で挑む軽の意欲作が誕生(1/2)

三菱・日産の共同開発による話題の新型軽自動車がデビュー

いまなお進化が著しい「軽の世界」に“デリカ顔”の新シリーズも登場

クルマにはいろいろなカテゴリーがあるが、その中で最も進化が著しいのは軽自動車だろう。全長が3395mm、全幅は1475mmという限られたサイズのボディに、驚くほど広い室内を確保して、内装も上質だ。メカニズムは先進的で、マイルドハイブリッドシステムによって燃費を向上させた車種もある。歩行者を検知できる緊急自動ブレーキなど、機能は小型/普通車と同レベルになった。

そして2019年3月28日、三菱 eKシリーズがフルモデルチェンジを行った。eK X(クロス)という“新型デリカD:5顔”のSUV風クロスオーバーモデルも用意したので、注目度も高い。

というわけで、新型eKワゴン・eKクロスの概要を見ていきたい。

◆“ワゴン”と“クロス”、あなたはどっち派!? 2つのモデルを写真で比較

姉妹車は「日産 デイズ」、三菱の工場で生産するが新型の開発は日産主導に

eKシリーズは、三菱と日産による合弁会社「NMKV」(Nissan Mitsubishi Kei Vehicleの略)によって開発された。eKシリーズの姉妹車には、日産デイズがある。

NMKVにおける役割分担は、先代eKシリーズ(及びデイズ)では三菱が開発と生産を受け持ち、日産は企画と原材料の調達などで参画した。新型では役割が変わり、企画は両社だが、開発は日産が行った。エンジンやプラットフォームも先代型は三菱製だったが、新型は日産が開発している。

その一方で生産はeKシリーズ、デイズともに三菱の水島製作所が受け持つ。「開発は日産、生産は三菱ではやりにくくないか」と両社の開発者に尋ねたら「企業風土も異なり、いろいろな課題が生じた。苦労はしたが、互いに分かり合えたことも多かった」と返答された。

「eKワゴン」と「eK X(クロス)」の違いを徹底比較する

eKカスタムが廃止されeK Xに進化!

eKシリーズの基本的なグレード構成は、標準ボディに相当するeKワゴン(写真左)と、eKクロス(写真右)に分かれる。先代型のエアロパーツを備えたeKカスタムは廃止された。ちなみに姉妹車、日産のデイズには、先代型と同じく標準ボディとハイウェイスター(カスタムに相当)がある。

eKシリーズの場合、eKワゴンは営業車などの用途も視野に入れたベーシックモデルに位置付けられる。フロントマスクは馴染みやすいデザインで、エンジンはノーマルタイプのみを搭載した。

いっぽうeKクロスは、外観をアクティブなSUV風に演出している。フロントマスクはデリカD:5に似た形状で「ダイナミックシールド」の考え方に基づく。ボディパネルが両側からフロントマスクに回り込むデザインで、その特徴的な部分にLEDヘッドランプとターンシグナルを配置した。

最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)は155mmでeKワゴンと変わらず、足まわりの設定も共通だが、外観の見栄えは大きく異なる。

ボディサイズを先代型と比べると、全高が20mm拡大して1640mmになった。ワゴンRやムーヴとほぼ同じ数値だ。

ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は2495mmだから、先代型に比べると65mm長い。ホンダN-BOX/N-WGN/N-ONEの2520mmには及ばないが、軽自動車では2番目の長さになる。

ホイールベースが長ければ後席の足元空間を広げたり、走行安定性を高める上で有利だ。その代わり最小回転半径が拡大して大回りになりやすいが、eKシリーズの14インチタイヤ装着車はホンダNシリーズと同じ4.5mになる。小回り性能は悪くない。

eKワゴンとeKクロスでフロントマスクは大きく異なるが、ボディの基本スタイルは共通だ。車内に入ると、前方はボンネットが少し視野に入り、車幅が分かりやすい。後ろ側はサイドウィンドウの下端を持ち上げたから、斜め後方の視界を損なった。

インテリアの質感が向上し収納も充実、前席の座り心地も良好だ

インパネの周辺は上質だ。主力グレードのエアコンはタッチパネル式のフルオートで、インパネの中央が光沢を伴ったブラックになるから見栄えが良い。

eKクロスにはオプションのプレミアムインテリアパッケージ(価格は5万4000円)が用意され、内装色がブラック&タンになり、本物のステッチ(縫い目)もあしらわれる。シート表皮は合成皮革とファブリックに上級化され、内装の質はコンパクトカーを飛び越して、ミドルサイズ並みに高い。

前席はシートのサイズに余裕を持たせ、背もたれが背中の形状に沿ってサポートする。体重が加わる背もたれの下側もしっかりと造り込んだから、着座姿勢が安定しやすい。

収納設備は豊富に備わり、グローブボックスの上側にはボックスティッシュが収まる引き出し式のボックスがある。車検証はドアポケットに収まり、グローブボックスを広く使える。インパネには引き出し式のトレイも装着した。

後席空間は広くなったが実際に座ってしっかり確かめて欲しい

後席は前席と対照的に座り心地が悪い。床と座面の間隔が不足して足を前方へ投げ出す座り方になり、座面の柔軟性も乏しい。座面の前側は斜めにカットされ、大人が座ると座面が短く感じてしまう。

開発者は「後席には子供が座ることを考えて、座面を低く、短く感じるようにデザインした。後席の背もたれを倒して畳んだ時に、荷室との段差を抑えることにも配慮した」とコメントする。

それならば、シート生地にはもう少し伸縮性を持たせて座り心地をしなやかにしたい。「荷室との段差を抑える」ために座面を低くした件については、ワゴンRのような後席の前倒しに応じて座面を下げる機能を採用すれば解決できる。

後席は広く、身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先には握りコブシ3つ少々の余裕がある。Lサイズセダンを上まわる広さだから、座り心地を改善すれば、上質な内装と相まって大人4名が快適に乗車できる。惜しいところで詰めの甘さが露呈した。

マイルドハイブリッドを新設定、エンジンの実用性能も向上した

エンジンはeKワゴンがノーマルタイプ、eKクロスはマイルドハイブリッドとマイルドハイブリッドのターボを用意した。前述のように新開発されたエンジンで、ノーマルタイプは最大トルクの6.1kg-mを実用域の3600回転で発揮する。先代型のノーマルエンジンはパワー不足が目立ったが、新型では解消された。

eKクロスでは、このエンジンにマイルドハイブリッドの機能を加えた。減速時にはモーターが発電を行い、リチウムイオン電池に充電する。アイドリングストップを終えて発進する時は、モーターがベルト駆動でエンジンを再始動するから、ノイズが小さい。走行中はエンジンの駆動力も支援する。

ただしeKワゴンのノーマルエンジンと、マイルドハイブリッドのeKクロスでは、燃費数値にほとんど差がない(WLTCモード燃費はマイルドハイブリッドのeKクロスGが少し悪い)。そこを開発者に尋ねると「実用燃費には効果があり、アイドリングストップ後の再始動音が静かになるなど、燃費以外のメリットも多い」という。

プラットフォームとサスペンションも刷新して、走行安定性や乗り心地を向上させた。タイヤサイズは、デイズも含めて14/15インチを用意するが、ショックアブソーバーの減衰力などは全車共通だ。eKワゴンとeKクロスの違いも、主に外観の見栄えになる。

三菱/eKワゴン
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新車価格:
138.9万円160.4万円
中古価格:
11.3万円168万円
三菱/eKクロス
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新車価格:
166.5万円202.8万円
中古価格:
69.8万円202.1万円
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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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