メルセデス・ベンツ SL350/550 試乗レポート/桂伸一(2/2)

  • 筆者: 桂 伸一
  • カメラマン:オートックワン編集部
メルセデス・ベンツ SL350/550 試乗レポート/桂伸一
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メルセデス・ベンツ SL350
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まずはV6の特性がスポーツカーのユニットに相応しいのかが気になるSL350から。

アクセルを踏み込み、加速した瞬間からわかる「SL」が意味するとおりの軽量、軽快な動き。従来のスチールボディ比マイナス140kgの軽量化はSL350では、走行中明らかにボディのマスを感じさせない上屋の軽さが実感でき、ステア操作に合わせて左右にフットワーク良く軽快に向きを変えることができる。

V6がいかにもカムにのった心地いいサウンドを展開するのは3000rpm以上リミットの6800rpmまで。乾いた音色とともに速度のノリの良さは0-100km/h加速は5.9秒と十分に俊速。高速の合流では特にアクセルを深く踏み込むまでもなく流れにのる。100Km/h巡航は1800rpmと、静粛性の高さに加えて、燃費とCO2の低減と環境性能も高い。

ハンドリングは軽快であるとともにブレークしないリアの安定性はウエット路面の芦ノ湖スカイラインで確認済みである。軽量なV6はノーズが軽く、前後の重量バランスは860kg対850kgとほぼイーブンでBMWのお株を奪う。

標準のマルチリンク・サスペンションは、わずかなボディの傾きを許しながらノーズからスッと曲がり、安定した姿勢で立ち上がる。エンジンは強力だが、駆動力はダイレクトに伝わりコントロールを乱す程ではないサスペンションとタイヤの組み合わせが丁度いい。

手に余るSL550より、SL350が日本向き

メルセデス・ベンツ SL550
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一方、SL550の4.7L V8ツインターボは、最強のSL63AMGに匹敵するほど豪快な特性を打ち出してくる。

V8がドドドッと重低音を響かせる鼓動を示すと、ウエット路面ではたとえワンサイズ上の19インチタイヤを履き、車輌安定装置のESPが働いたとしても、爆発的なターボトルクの盛り上がりにリアタイヤはグリップ力を一瞬失い挙動を乱そうとする。もちろんESPが助けるのだがターボトルクが炸裂すると“手に余る”事を実感した。

サスペンションはABC(アクティブ・ボディ・コントロール)が前後左右のロールやピッチングの動きを抑え込むため、コーナ−進入速度を高め、旋回中も終始安定した姿勢を取ることがメリット。姿勢が安定しているが故に、アクセルを深く踏み込むと、驚くほど高い脱出速度を可能にする。

Dレンジ100km/hはファイナルレシオの違いから1500rpmと回転を抑えられる。SLスポーツカーではあるが、優雅に、流れるように乗りこなす事こそ似合うキャラクターだ。

終日雨が降り続いたため、わずか20秒で変身するロードスターでの走行は叶わない。しかしSL63AMGの海外試乗会では、バリオルーフを開け放った状態で200km/h走行を行っても髪の乱れは気にならない事は実証済み。オープン状態での剛性感の高さは世界最高峰である。

アルミボディによる軽量化が上下の重量バランスを有利にして、フットワークの俊敏さと乗り味の滑らかさを両立させたSL。SL63AMGに試乗して絶賛した者が言うのも何だが・・。

日本の道路事情にはSL350の軽快さと程よいパワフルさ、曲がる止まるのバランスの良さと、そこにAMGスポーツパッケージに含まれるABCを装着してさらに次元の高い旋回性能と安定性をプラスした仕様。これがベストだと思う。

2シーターのロードスター&クーペとして、SLが現状、世界最高峰の操縦安定性と乗り味を含む快適性と高い剛性感を持ち合わせていることは間違いない、と断言できる。

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桂 伸一
筆者桂 伸一

1982年より雑誌「OPTION」誌編集部員からレーシングドライバーに転身!!92~93年はR32 GT-RでN1(現スーパー)耐久シリーズチャンピオン。近年はドイツ・ニュルブルクリンクで開催される24時間レースに、アストンマーティン・ワークスカーのドライバーとして参戦。2度の優勝を飾る。日本ジャーナリスト協会(AJAJ)会員、日本カーオブザイヤー(COTY)選考委員、ワールドカーアワード(W-COTY)選考委員。記事一覧を見る

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