メルセデスAMG GTに新グレード「C」!AMG50周年記念モデルは凄いヤツが待っていた!

  • 筆者: 五味 康隆
  • カメラマン:メルセデス・ベンツ日本
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  1. 557馬力!非日常的なモデルであるからこそ抱く魅力
  2. 日本の交通環境でも十分に満喫できる「C」
  3. 「C」が大トロだという理由はエンジンにあり
  4. 関連リンク

メルセデスの既存モデルをハイパフォーマンス化する。これがメルセデスAMGの基本ではあるが、メルセデスAMG GTだけは違う。ポルシェ 911をターゲットにしていると言われるそのモデルは、生まれながらにしてAMG。言うなれば既存モデルが存在せず、ハイパフォーマンスカーであるAMGのために全てが捧げられたサラブレッドモデルとして2015年に登場した。

今回ドイツで触れてきたのは、そのメルセデスAMG GTに追加された新グレード「C」のクーペモデル。結果から先に伝えてしまうが、これが大トロモデルだ!そう言いたいくらい質の高い乗り味に仕上がっていた。

そもそもAMG GTはすでに3つのグレードがある。まず4リッターV型8気筒を2つのターボで武装した最大出力462ps・最大トルク600Nmのベースグレードがある。そして、それを基軸に最大出力を48ps増強して510ps・最大トルク650Nmの「S」があり、この2つが登場当初より取り揃えられていた。そして2017年5月、公道を走れるレーシングモデルとしてエンジンやシャーシに専用の造りを施すことで、サーキット全開ドライブでも一切根を上げない運動性能と耐久性に加えて、Sに対して75psも出力を上げた最大出力585ps・最大トルク700Nmの専用エンジンを搭載する「R」が追加された。ちなみに同年7月にはロードスターも加わり、実はそこに今回の新グレード「C」がすでに設定されていた。

当初「C」はロードスターの特権グレードと捉えていたが、AMG50周年記念モデルとしてクーペに設定されたと聞き、日本に入る可能性もあることからドイツにまで行き触れてきたわけだ。

>>AMG50周年記念モデルはすごいやつが待っていた!写真でもっと見る

557馬力!非日常的なモデルであるからこそ抱く魅力

こんなに細かくグレード設定したらユーザーが何を買って良いか悩んでしまうのでは?そんな素朴な質問を考えるのは、我々が庶民だからかもしれない。

そもそもAMG GTを買われる方は、そこに非日常の瞬間を求める方が多い。その経験をより深くできるように要求には限りなく応えることが重要。だからこそ、この「C」は、Sでは満足ができず、しかしRほどの性能や刺激はいらないという限られた方に向けて作られた。

もちろん開発者の想いは解るが、そんなに明確な乗り味の造り分けができるのか?

そんな若干疑いの念を抱きつつ試乗を始めたが、根こそぎひっくり返されるほど乗り味が明確に違う。その感覚は、ポルシェ 911のベースやSさらにはターボなどを乗り比べた感覚に似ている。どれも幹となるAMG GTらしい操作に対して緩みなく全てがダイレクトに反応しながらも乗り心地が良いという基本となる乗り味の質は一緒なのだが、ドライバーとクルマとの距離感、エンジンの高回転での伸びなどが明確に違っていたのだ。

その違いを生み出した要素として伝えるべきは、AMGモデルではRにしか与えられていなかったリア操舵機構をCにも与えたこと。加えてR同様にベースやSに対して57mmも広げられたリアのオーバーフェンダーにギリギリ収まる極太タイヤと、クローズドボディのクーペだからこそ得られる高いボディ剛性と調和した時の意のまま感。さらにはRほどではないがSよりも47ps増強された最大出力557ps・最大トルク680Nmのエンジンが生み出す刺激的で強烈な加速。

まだCの正式な日本導入の情報は無く、当然価格も出ていないし、Sでさえ2000万円弱もする浮世離れモデルではあるが、いつか乗ってみたい、そんな気持ちを抱かせるほど魅力に溢れていた。

日本の交通環境でも十分に満喫できる「C」

時速100kmを境界線として、それ以下では前輪の操舵とは逆方向に最大1.5度切れて回頭性を向上。それ以上では前輪の操舵と同方向に最大0.5度切れることで安定性を向上させるもの。日本の交通環境では、ほとんどが逆方向への操舵だが、心配はない。

魅力のほとんどがその領域にあるので、日本の交通環境でも十分に満喫できる。

特に顕著に体感できるのは、カーブでの曲がり出し。「ベース」や「S」では、ロングノーズだからこそ生じる若干ノソッと曲がりだす感覚がある。これは決して緩みがあるような鈍感と言っているわけではない。ベースもSも操舵に対して緩みなくダイレクトに反応は示すのだが、そこから旋回姿勢が出来上がるまでの鋭さや素直さが、リア操舵付きのCとは違うということ。端的にいえば、シャーシレスポンスが良いとか、ホイルベースが短くなったかのような動きともいえる。

結果として、若干遅れて旋回姿勢が整うことを想定して早めにスムーズに操作することが要求される「ベース」や「S」とは違って、直感的に操作をして同様以上の旋回力や安定感が得られる。ワインディングにある連続するカーブでの切り返しでは、車両の安定性は当然として、意思に遅れずクルマが付いてくるので超気持ち良く走れる。ちなみにロードスターの「C」とも乗り比べたが、同じ傾向は得られるものの、やはり屋根がなくオープンエアーを楽しめる代わりに失うものもあるということだ。特に連続するカーブでの切り返し動作では、 クーペのようにダイレクトに意思に遅れずに切り返せない。さらには極太なタイヤを全幅広く履いたことで得られる低重心感と路面への張り付き感もまた、ベースやSよりはロードスターの「C」では得られるが、意思に遅れない旋回特性まで踏まえると、クーペの「C」と「R」はAMG GTのなかでも別格と捉えるべきだ。

「C」が大トロだという理由はエンジンにあり

リア操舵に並び、Cが大トロと思ってしまう要因のエンジンにも触れておこう。

AMGに限らずメルセデスの上手いところは、実はこのエンジンの差別化ではないかと普段から思っている。上のグレードになるほどに、確実に良くなる。逆を言えば、下のグレードで感じる不満が、上のグレードになるに従い自然と消えていく。AMG GTにおいては基本となる4リッターV型8気筒エンジンと、8速デュアルクラッチ仕様のトランスミッションは同じ。しかし、味付けと仕様に明確なる差があるのだ。

例えば速さの源となる加速力自体はベースグレードで十分。そこに不満を抱く方などいないはずだし、いたとすれば“あれ"以上の加速力で何を得たいのか?と聞きたくなる。しかし“あの"GTの攻撃的な低重心フォルムから考えると、若干刺激が足らないと思ってしまうのだ。スポーツプラスで走れば、排気音が若干刺激的になるが、それもかなり踏み込んだ高回転領域。通常領域ではそんなに踏み込める場面などない。

そこでSの味付けが成り立つ。燃焼系のソフトプログラム変更のみではあるが、だからこそ意図的に気持ち良さに差が付けられている。アクセルを深く踏んだ際には中回転付近から野太い刺激的な排気音が響いて気持ちが高揚するし、そのまま踏み込み高回転に差し掛かったときの伸び感はベースグレードよりも鋭くてさらに高揚できる。普通ならこれで十分なのだが、この手の刺激には人は慣れていくもの。

そこで慣れるレベルではない刺激、言うなればアクセルを踏むたびに、いつも高揚感や気持ち良さを得続けたいというハイパフォーマンスカー慣れした非普通人の方にはCをお勧めする。サーキットドライブも視野に入れていることもあり、ターボのタービン変更とフライホイルの軽量化、加えてトランスミッションの1速を少し“ロング"に速さと伸び感をさらに強調もしてきた。排気音もより一層刺激的にもなり、踏むたびに非日常の扉が開く感覚を得られる。

「R」はCをさらに同ベクトルで突き詰めた感じだが、高い横Gのなかでも油膜切れをしないような対策や、低重心にするべくエンジンをドライサンプ化したりしている。さらにCで感じるカーブからのフル加速で若干リアタイヤが抑え込めず空転する感覚が、Rではシャーシ剛性を高めているので抑え込めている。

57mmも横幅が拡張されて強調された低重心フォルムと、ゴルフバッグ2つを楽に詰める実用性だけでも“この手のハイパフォーマンスモデルにおいては十分な魅力だが、述べてきた刺激的かつ素直な運動特性とびっくりするほどの日常での乗り心地の良さという魅力をもつAMG GT「C」が、海を渡ってくるのもそう遠くないはずだ。

[Text:五味康隆 PHOTO:メルセデス・ベンツ日本]

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五味 康隆
筆者五味 康隆

自転車のトライアル競技で世界選手権に出場し、4輪レースへ転向。全日本F3選手権に4年間参戦した後、モータージャーナリストとしての執筆活動を開始。高い運転技術に裏付けされた評論と、表現の解り易さには定評がある。「持続可能な楽しく安全な交通社会への貢献」をモットーとし、積極的に各種安全運転スクールにおける講師を務めるなど、執筆活動を超えた分野にも関わる。また、環境分野への取り組みにも力を入れており、自身でハイブリッド車も所有。記事一覧を見る

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