ランクル300が買えない今、「Gクラス」という選択肢はアリかナシか? 納期と価格のリアル

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「納期4年以上」と言われ受注停止が続くトヨタ ランドクルーザー300。代替候補のGクラスも納期は数年待ちです。

それでも今、Gクラスを検討する価値はあるのか?

注文可否という決定的な違いから、価格、性能まで、後悔しないための比較ポイントをカーライフ・ジャーナリストの渡辺 陽一郎さんが徹底解説します。

目次[開く][閉じる]
  1. ランドクルーザー300はなぜ買えないのか? 長期化する納期と受注停止の現状
  2. ランクル300の有力な対抗馬「メルセデス・ベンツ Gクラス」とは
  3. Gクラスの走りを徹底解説
  4. 購入前に知っておきたいGクラスの注意点
  5. Gクラスの納期と中古車市場の動向
  6. まとめ:Gクラスはランドクルーザー300の代わりになり得るか

ランドクルーザー300はなぜ買えないのか? 長期化する納期と受注停止の現状

最近は生産が需要に追い付かず、受注を停止する車種が増えました。特にLサイズの悪路向けSUVとして人気の高いトヨタ ランドクルーザー300は、納期が深刻に長期化しています。

発売から現在に至る受注停止の経緯

ランドクルーザー300は、2021年8月に発売されましたが、その後すぐに納期が延び始め、販売店からは「納期は4~5年で正確な時期は不明」という声が聞かれるようになりました。そして2022年の中盤には、ついに受注が停止される事態に至りました。

受注停止はその後も続き、2025年3月には法規対応のための一部改良が実施されています。現在、トヨタの公式ホームページでは「ランドクルーザー300(ガソリン車)」が受注停止車種として掲載されています。

ディーラーへの取材で分かった供給の実態

では、ディーゼル車は受注を再開したのでしょうか。2025年8月上旬にトヨタの販売店に尋ねたところ、以下のような返答がありました。

「ランドクルーザー300の受注は、数年間にわたり止まっています。ディーゼルは一時的に再開しましたが、メーカーから割り当てられた台数が極めて少なく、以前からお待ちいただいていたお客様の注文ですぐに枠が埋まってしまいました」

このように、ランドクルーザー300は受注を再開しても、その裏では再開を待つ顧客の長い行列ができており、誰もが簡単に購入できる状況にはありません。

ランドクルーザー300の開発者は以前、「生産台数の約半分を中東諸国で販売しており、オーストラリアなどの割り当ても多い。日本で販売できる台数は生産総数の10%以下です」と述べていました。

こうした海外市場での旺盛な需要も、国内供給の少なさに拍車をかけている一因です。

中古車市場への影響と価格高騰

実際、2025年上半期(1~6月)におけるランドクルーザー300の国内登録台数は月平均約500台と、2024年の約980台から半減しており、本格的な受注再開はまだ先になる可能性が高いでしょう。

このような状況が転売を助長し、中古車価格の高騰を招いています。例えば、V型6気筒3.5Lガソリンターボを搭載する「ZX」の新車価格は743万6000円ですが、中古車市場では1.5倍の1100万円前後で取引されており、中には1300万円を超える車両も存在します。

ランクル300の有力な対抗馬「メルセデス・ベンツ Gクラス」とは

入手困難なランドクルーザー300の代替候補として、今注目すべき一台が「メルセデス・ベンツ Gクラス」です。

Gクラスは、軍用車両をルーツに持つ本格的なオフロード性能と、メルセデス・ベンツならではの高級感を両立した唯一無二のSUVです。

専門家視点でのGクラスの長所と短所

まず、専門家としてGクラスを評価した採点と、購入前に知っておきたい長所と短所をまとめます。

外観

4.0

★★★★☆

内装・居住性

3.0

★★★☆☆

走行性能

4.0

★★★★☆

運転のしやすさ

3.0

★★★☆☆

乗り心地

4.0

★★★★☆

燃費

2.0

★★☆☆☆

価格の割安度

2.0

★★☆☆☆

Gクラスの良い点

・どのグレードを選んでも極めて高い悪路走破性能を誇る

・スクエアなボディは見切りが良く、街中でも意外に運転しやすい

・流行に左右されない普遍的なデザインで、資産価値が落ちにくい

×Gクラスの気になる点

・堂々とした外観の割に、後席や荷室はあまり広くない

・高重心かつ重いボディのため、カーブでは特有の揺れを感じやすい

・価格設定が非常に高く、オプションを含めると乗り出しは2000万円を超える

Gクラスのボディサイズと基本スペック

現行Gクラスは2018年に登場しました。駆動方式は悪路走破性に優れる四輪駆動のみです 。スクエアな外観は車両感覚を掴みやすく、本格的なオフロード走行に適しています。最低地上高は230mmから240mmが確保されており、路面の凹凸に対する走破性も万全です。

ボディサイズは全長4670mm~4690mm、全幅1930mm~1985mm、全高1980mm~1985mmで 、全長は日産 エクストレイルといったミドルサイズSUVと同程度ながら、全幅はランドクルーザー300に匹敵するワイドな設計です。

Gクラスのグレードとパワーユニット

現在のGクラスには、大きく分けて3つのグレードが設定されています。

G 450 d

直列6気筒3.0Lクリーンディーゼルターボエンジンを搭載

メルセデスAMG G 63

V型8気筒4.0Lガソリンツインターボエンジンを搭載

G 580 with EQ Technology

エンジンを搭載しない電気自動車(BEV)

ディーゼルとガソリンのモデルには「ISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)」というモーターが組み合わされており、エンジン始動を滑らかにしたり、加速時に駆動力を補助したりするマイルドハイブリッドシステムが採用されています。

Gクラスの走りを徹底解説

V8エンジンの圧倒的な動力性能「メルセデスAMG G 63」

「メルセデスAMG G 63」を試乗すると、その動力性能はランドクルーザー300のV型6気筒3.5Lガソリンターボを凌駕します。

最高出力585馬力(430kW)、最大トルク850N・mを発生するV8エンジンの実力は圧倒的で、発進直後の1200回転という低回転域から余裕のある駆動力を発揮し、4000回転付近からはさらに活発な加速を見せます。

その一方で、カーブでは2570kgという車両重量を意識させられます。曲がりくねった峠道を走ると、ボディの上側が大きめに揺すられる感覚があります。

乗り心地は、時速40km以下ではホイールとタイヤの重さを感じさせ、やや粗い印象を受けますが、不快な突き上げ感はありません。サスペンションの伸縮性が優れており、角の丸い乗り心地とSUVらしい重厚感を両立しています。

4輪独立モーターがもたらす革新的な走行安定性「G 580」

新鮮な驚きを与えてくれるのが、電気自動車の「G 580」です。このモデルが注目すべき点は、4輪それぞれに1つずつ、合計4つのモーターを配置して駆動する独自の方式にあります。

これにより、各ホイールの駆動力とブレーキを個別に、かつ緻密に制御することが可能です。

高重心を感じさせない卓越した走行安定性

「メルセデスAMG G 63」で感じられた峠道でのボディの揺れも、「G 580」では4輪のモーターが最適に制御されることで巧みに抑制されます。例えば、右カーブの直後に左カーブへ進入するような場面でも、揺り返しがほとんど発生せず、安定して駆け抜けることができます。

「G 580」は、重い駆動用リチウムイオン電池を搭載するため車両重量は3120kgに達し、全高も約2mと高重心です。にもかかわらず、峠道での挙動は安定しており、ステーションワゴンであるEクラスに近い感覚で運転できました。

これは、電気自動車の技術が単なる環境性能の向上だけでなく、走行性能そのものを高める付加価値を備えていることを証明しています。

モーター駆動ならではの力強く滑らかな加速

システム最高出力は587馬力、最大トルクは1164N・mと極めて強力ですが、発進時の駆動力制御が巧みで、唐突な加速感はありません。むしろ、巡航中にアクセルペダルを踏み増した際の反応がモーター駆動らしく機敏で、瞬時に力強い加速が得られます。

ユニークな「Gターン」と実用的な航続距離

また、「G 580」には4輪独立モーターならではの特別な機能も備わっています。その一つが「Gターン」です。

これは、左右のホイールを逆方向に回転させることで、その場で車両を180度回転させる機能で、ブルドーザーが履帯(キャタピラーは登録商標)を逆回転させて向きを変えるのと同じ原理です。

ただし、タイヤを空転させながら回転するため、傾斜のある場所で行うと車両が坂を下ってしまう可能性があり、どこでも安全に使えるわけではありません。「電気自動車ならこんなこともできる」という、技術的な可能性を示す機能と言えるでしょう。

なお、「G 580」は116kWhの駆動用リチウムイオン電池を搭載し、満充電の状態で530km(WLTCモード)の航続距離を実現しています。

購入前に知っておきたいGクラスの注意点

多くの魅力を持つGクラスですが、購入後に「こんなはずではなかった」と後悔しないために、知っておくべき注意点も存在します。

ここでは特に「室内の広さ」と「価格」について詳しく解説します。

見た目から想像するほど広くない室内空間

Gクラスを検討する上で注意したいのが、その堂々とした外観から想像されるほど、車内は広くないという点です。特に前席は座面の幅がややタイトに感じられるかもしれません。

身長170cmの大人4名が乗車した場合、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシ1つ半ほどです。

ランドクルーザー300も握りコブシ2つ分と決して広いわけではありませんが(コンパクトSUVのホンダ ヴェゼルは2つ半を確保)、Gクラスを選ぶ際は、荷室の広さも含めて実車で念入りに確認することをおすすめします。

1844万円~2849万円の高価格帯

価格も重要なポイントです。Gクラスの価格帯は1844~2849万円です。

各グレードのメーカー希望小売価格(税込)は以下の通りです。

G 450 d

1844万円

メルセデスAMG G 63

2849万円

G 580 with EQ Technology Edition 1

2635万円(国の補助金が別途適用される場合があります)

価格は2025年8月時点。

かつて、同じ直列6気筒3.0Lクリーンディーゼルターボを搭載していた「G 350 d」の価格が1170万円だったことを考えると、現在の価格帯は大幅に上昇しており、プレミアム価格が付いた中古のランドクルーザー300をも上回ります。

Gクラスの納期と中古車市場の動向

Gクラスの販売状況について、メルセデス・ベンツの販売店に尋ねると、次のような話が聞けました。

「現在のGクラスは価格が上がり、『G 450 d』でもオプションを加えると実際の購入価格は2300万円前後になります。そのため、以前の『G 350 d』の時代に比べると、希望されるお客様は少し落ち着きました。納期も短縮傾向にありますが、正確な時期はお伝えできません。価格の10%程度の申込金をいただき、数年間お待ちいただくことになります。」

ランドクルーザー300と異なり受注は継続していますが、最も安価な「G 450 d」でも1844万円という価格であり、すぐに納車されるわけではないのが現状です。

一方で、中古車市場ではランドクルーザー300ほど極端な価格高騰は見られません。先代ディーゼルモデルの「G 400 d」が1500万円前後で見つかることもあり、現行の「G 450 d」よりは安価です。決して買い得とは言えませんが、すぐに乗りたい場合には検討の余地があるでしょう。

まとめ:Gクラスはランドクルーザー300の代わりになり得るか

結論として、Gクラスも簡単には購入できないものの、ランドクルーザー300のように受注が完全に停止しているわけではなく、中古車という選択肢も残されています。

室内空間の広さや多人数乗車での快適性ではランドクルーザー300に軍配が上がりますが、Gクラスには柔軟に伸縮するサスペンションや、悪路を突き進むという明確なキャラクターがあります。

リラックスして長距離を移動するならランドクルーザー300、唯一無二の存在感と本格的なオフロード性能に価値を見出すならGクラスという選択になるでしょう。

ランドクルーザーシリーズのような悪路向けSUVが好みであれば、一度Gクラスを試乗し、その世界観に触れてみることを強くおすすめします。

【筆者:渡辺 陽一郎 カメラマン:茂呂 幸正】

メルセデス・ベンツ/Gクラス
メルセデス・ベンツ Gクラスカタログを見る
新車価格:
1,844万円2,635万円
中古価格:
310万円3,228万円

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

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監修者MOTA編集部

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