マツダ デミオEV(電気自動車) 試乗レポート/渡辺陽一郎(3/3)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:オートックワン編集部
低重心化やバランスの良さ、剛性アップなどで気持ちの良い走りが味わえるデミオEV
個人的な感慨はともかく、デミオEVにはほかにもいくつか特徴がある。
運転する上で興味深いのは、4つの走行モードだ。セレクターレバーの操作でD(ドライブ)とE(エコノミー)レンジがあり、さらにレバーには「チャージスイッチ」が組み合わせられる。「チャージスイッチ」とは、減速時に回生充電を積極的に行うレンジだ。エンジン搭載車でいうところの「エンジンブレーキ」が強まり、モーターが発電機の役目を果たしてバッテリーにチャージ(充電)する量を増やす。
Dレンジは75kW(102馬力)の最高出力までフルに使えるが、Eレンジを選ぶと50kW(68馬力)に抑制され、回生充電の力も強まる。
以上の組み合わせを整理すると、Dレンジでチャージスイッチ/オフなら、回生は少なくパワーを発揮させやすい。Dレンジでチャージスイッチ/オンと、Eレンジでチャージスイッチ/オフは、回生充電は同等。ただしDレンジの方がアクセルを踏んだ時に発揮される出力は大きい。
そしてEレンジでチャージスイッチ/オンは、究極のエコノミー走行モードだ。アクセルペダルを戻すと即座に強力な回生充電が行われ、減速力も強い。0.12Gの制動に相当する。Eレンジでチャージスイッチ/オンにしている時の運転感覚は、従来のガソリンエンジン車などを2速固定で走らせている時の感覚に近い。
アクセルペダルを戻せば即座に速度が下がり、常にアクセルを開いている。なので不経済な運転をしている感覚に陥るが、実際は違う。「パワーメーター」を見ていると、アクセルを戻した時、全閉ではないのに針が「チャージ」に触れるのだ。
同様の現象はリーフでECOモードを選択した時にも生じるが、デミオEVのEレンジ&チャージスイッチ/オンは、かなり減速力が強い。慣れないと車両の動きが前後にギクシャクするが、アクセル操作のみで速度調節しながら走れば、エコドライブの度合いはかなり高まる。ほとんどフットブレーキを使わず、いい換えれば減速エネルギーを熱に変換して大気に放出する量を最小限度に抑えられるからだ。
ただし唐突な減速時には追突される心配が伴うので、減速の度合いが強まった時は、ブレーキランプを点灯させると良いだろう。
走りに固執しているだけに、デミオEVは総合的に見ても運転が楽しい。居住空間を損なわないためにリチウムイオン電池は床下に搭載。これが低重心化を達成し、電池を保護するための補強がボディ下まわりの剛性も高め、走行安定性や乗り心地に良い影響を与えている。
前後輪の重量配分は、デミオ13スカイアクティブでは65:35だが、EVでは60:40とバランスも良くなった。走りにこだわるEV造り。ちょっと古風で、パソコン時代に万年筆で原稿を書いている作家みたいな感じだが、クルマ好きとしては嬉しい。
動力がエンジンからモーターに変わっても、マツダは運転の楽しさを追求し続けるのだろう。それがマツダの存在価値で、生き残る術のようにも思える。
デミオEVの生産台数は100台限定としているが、もう少し頑張って造って、多くの人達に試乗してもらうと良いだろう。ガソリン&ディーゼルのマツダ車とデミオEVの両方を運転すれば、マツダの考え方、「クルマ大好きメーカー」であることが良く分かる。
マツダ デミオEV(DBA-DE3FS改) | |
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駆動方式 | FF |
乗車定員 | 5人 |
全長×全幅×全高 | 3,900x1,695x1,490mm |
ホイールベース | 2,490mm |
最低地上高 | 140mm |
車両重量 | 1,180kg |
交流電力量消費率(JC08モード) | 100Wh/km |
一充電走行距離(JC08モード) | 200km |
駆動用バッテリー 種類 | リチウムイオン電池(18650型) |
総電圧 | 346V |
総電力量 | 20kWh |
原動機 種類 | 永久磁石型三相交流同期モーター |
最高出力 | 75kW(102PS)/5,200-12,000rpm |
最大トルク | 150N・m(15.3kgf・m)/0-2,800rpm |
最高回転数 | 12,000rpm |
充電時間/普通充電(AC200V・15A) | 約8時間(満充電) |
充電時間/急速充電 | 約40分(80%充電) |
生産台数 | 限定100台(法人向けリース販売) |
価格 | 357万7千円 |
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