マツダが実用化に成功した圧縮着火エンジン搭載車を早くも試乗!次期型アクセラを示唆か(2/3)

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“内燃機関の究極形”圧縮着火エンジンとは

発明されてから長い歴史がある内燃機関だが、その進化を要約すれば“熱効率”を高めることだった。つまり、同じ量の燃料を燃焼させた時に大きな仕事を得ることができるかがポイントである。
では、熱効率を上げるにはどうしたらいいか?

それは「圧縮比を上げる」、「比熱比を上げる」だ。マツダはすでにスカイアクティブGで世界一の圧縮比14.0を実現しているが、比熱比を上げるためには?

燃料に対する空気の比率を大きくする(=リンバーン)が有効だが、火花点火だと火炎伝播ができず燃えなくなる。しかし、ガソリンを軽油みたいに圧縮着火できれば、理論空燃費を遥かに超える薄さ(スーパーリンバーン)でも燃焼可能になる。

これが圧縮着火エンジンは究極の内燃機関と呼ばれる所以だが、実用化に大きな壁がある。それは圧縮着火による燃焼可能な回転・負荷が限られていること。そのため圧縮着火と火花着火を併用する必要があるが、その切り替えが非常に難しいのも大きな課題である。

しかし、マツダは独自技術「SPCCI(スパーク・プラグ・コントロールド・コンプレッション・イグニッション=火花点火制御圧縮着火)」により、圧縮着火燃焼可能な回転・負荷を拡大しながら、燃焼の切り替えの完全な制御に成功したのだ。

これを実現させたキーワードは、何と圧縮着火では不要なはずの「スパークプラグ」だった。火花着火の領域で“仕方なく”使われていたスパークプラグを逆に圧縮着火タイミングのコントロールのために使用……と言う逆転の発想を用いたのである。

更にシリンダー内の混合気分布偏在制御や異常燃焼を制御するためのリアルタイム補正や、瞬時に異なる濃度の混合気をミキシングできる超高圧燃料噴射システム(直噴ガソリンエンジンの約2倍~2.5倍)などの様々なブレイクスルーの結果、冷間時や高回転域を除くほぼ全域で圧縮着火を可能にしたという。

実際にスカイアクティブXのエンジン単体を見せてもらったが、外から見て解る特徴は、「筒内圧センサ」、「高圧燃料系」、「高応答エア供給機(スーパーチャージャー??)」程度で、それ以外は正直“特別”なエンジンである雰囲気はほとんどない(笑)。ちなみに、このエンジンのボア×ストロークはスカイアクティブG-2.0Lと同じで、圧縮比は15だ。

SKYACTIV-X、まずは動かしてみよう!すべてはそれからだ

試乗は艶消しブラックに塗られたマツダ3(アクセラ)がベースのテストカーでトランスミッションは6速MT/6速ATの2タイプ。試乗はドイツ・フランクフルト市内から北へ30分ほど走った所にあるオーバーヴァゼルと言う閑静な街に位置する、マツダの欧州開発拠点「MRE(マツダR&Dヨーロッパ)」を拠点に、市街地からアウトバーンまで様々な走行環境が試せる約1時間のコースだ。

走り始めての第一印象は、「あれっ、意外と普通!!」だった。アクセルを踏んだ際の初期応答性の良さはディーゼル、低中速の自然なトルク感の盛り上がりはライトプレッシャーターボ、そして高回転まで綺麗に吹け上がる伸びの良さはガソリンNAと、まさにガソリンとディーゼルのいい所取りと呼ぶのがふさわしい性格である。

細かいことを言えばラフなアクセル操作時に「カリカリ」と言うノッキング音や失火しているような燃焼の谷間などを感じたが、それ以外は何も知らされなければほとんど気にならないレベル。常用域だけでなくアウトバーンでは全開加速や150km/hオーバーでの高速巡航も行なったが、加速時の力強さはもちろん、最近マツダが熱心に提唱する「躍度」に関しても、現状の状態でもスカイアクティブG-2.0Lよりも高いレベルにあるように感じた。
>>「躍度」とは|マツダ CX-3ガソリンモデル試乗レポート

ある開発スタッフは「やっと車両に搭載できた……と言う状態で、マッチングやチューニングなどはほとんどしていない」と語るが、それを差し引いても完成度は高い。

また、少しだけ低音を効かせた乾いたエンジンサウンドや、レッドゾーンまでストレスなく綺麗に滑らかに回る感じなど、官能性に関わる部分に関しても「いいね!!」である。いや、むしろチューニングを何もしていない素の状態でこのレベルであれば、商品化の時は……期待が更に高まった。

現時点でこの燃費ならば、あるいは・・・!

燃費は、アウトバーンをかなり元気に走らせたペースで6.5L/100km(15.3km/L・6速MT)、日本の高速道路並みのペースで走らせたペースで5.3L/100km(18.8km/L・6速AT)を記録。ちなみに同条件でスカイアクティブG-2.0Lを走らせた時と比較すると、前者が13.5%、後者が17.5%と燃費性能も優れる。実は燃費計測は試乗時に何も知らされておらず、結果的に「気持ちいい走り」でも「燃費」が犠牲にならない事を証明したのである。

マツダはこのスカイアクティブXをスカイアクティブG、スカイアクティブDと合わせた 「3本柱」として活用すると語るが、個人的には仕向け地やモデルによっては、スカイアクティブXのみの戦略もアリだと思う。

新世代プラットフォームに“マツダの個性”が見えた

実は、今回試乗したマツダ3(アクセラ)のテストカーはスカイアクティブX以外に、新世代プラットフォームが採用されている。

人間の本来持つ能力を最大限に活かした「究極の人馬一体」を目標に、人間のバランス保持能力を最大限発揮させるために車両全体をコーディネイト。キーワードはバネ上と一緒に動く「シート」、遅れをなくする力の伝達を行なう「ボディ」、そしてバネ下からの入力を滑らかにする「シャシー」の3点だ。

シートは取り付け部から骨盤までの入力エネルギーを遅れなく滑らかに使えるために、シート各所の構造が見直し。ボディは剛性バランスや力の流れ方まで考慮し、応答遅れを減らす「多方向の環状構造」。そしてサスペンションはバネ上へ伝える力を時間軸で遅れなくコントロールするために、サスペンション作動軸やタイヤの上下バネ低減、上下入力を早期に増加させるアーム角拡大などを実施。

また、NVH※の部分でも振動エネルギー減衰の発想が盛り込まれ、断面高歪部位には「減衰節」、パネル結合部や高歪み部位のフランジには「減衰ボンド」を採用している。

※NVH=Noise・Vivration・Harshunessの略。それぞれ原因の異なる騒音や振動のことを指し、総じて自動車の快適性を推し量る評価基準である。

その走りはディーゼルモデルの「重さを活かした落ちつきのある乗り味」とガソリン車の「軽快でキビキビした乗り味」の融合。さらに17インチの「しなやかさ」と19インチの「シッカリ感」の融合と、何ともキツネに摘まれたような不思議なフィーリングだった。

試乗後にビックリしたのは、リアサスペンションがトーションビームだったこと。恥ずかしながら、下回りを覗くまで気が付かなかった。これはコスト低減ではなく、電動化時代に向けバッテリー搭載のためのスペースを確保するため秘策なのだろうか?

フットワークは、ここの技術がどうこう……と言うのではなく、全体のバランスが整えられていたのが記憶に残った。つまり、プラットフォームの存在を忘れドライビングに集中できる環境に仕上がっている証拠だ。恐らく、操作に対するクルマの動きと人間の感覚にズレがないこと、そしてドライビングに違和感がないことが、マツダの目指す“理想の走り”なのだろう。現在発売中のスカイアクティブ商品群は「澄んだ水」のようなイメージだが、次世代プラットフォームには“マツダの味”が少し感じられたような気がする。

また、NVHも無音のような静けさとはちょっと違うが、常用域と高速域での会話明瞭度の差がほとんど変わらない上に、外観はほぼマツダ3なのだが、風切り音まで上手く抑えられている事に驚いた。

マツダ/アクセラスポーツ
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新車価格:
185.9万円337.2万円
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24.9万円202万円

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山本 シンヤ
筆者山本 シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車雑誌の世界に転職。2013年に独立し。「造り手」と「使い手」の両方の気持ちを“解りやすく上手”に伝えることをモットーに「自動車研究家」を名乗って活動をしている。西部警察は子供時代にリアルでTV放送を見て以来大ファンに。現在も暇があれば再放送を入念にチェックしており、当時の番組事情の分析も行なう。プラモデルやミニカー、資料の収集はもちろん、すでにコンプリートBOXも入手済み。現在は木暮課長が着るような派手な裏地のスーツとベストの購入を検討中。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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