「レクサス LX」はランクルと何が違うのか!?[詳細解説](2/2)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:トヨタ自動車株式会社
ランクルと最も異なるのは、過去最大の排気量を誇る「5.7リッターV8エンジン」
レクサス LXで最も注目されるのがエンジンだろう。
V型8気筒の5.7リッターを積む。量販された国産乗用車では(6.4リッターの日産プリンスロイヤルなどを除けば)、過去を振り返っても最大の排気量だろう。
エンジン型式は3UR-FE型。ランドクルーザーやレクサスLSの4.6L、レクサスRC・Fの5リッターなどと同じ系列で、シリンダーの内径寸法はすべて94mmで等しい。
排気量が拡大されるほど行程寸法が大きくなる。なので4.6リッターと5リッターは内径が行程を上まわるショートストローク型だが、LXの5.7Lでは行程が102mmに達して逆転し、ロングストローク型に転じる。
走行性能を高めるメカニズムは、ランドクルーザーをベースに充実させた。車高を自動制御する4輪AHCとショックアブソーバーの減衰力を変化させるAVSを採用。走行状態に応じてパワーステアリングのギヤ比を変化させるVGRSも備わる。そして足まわりから空調までドライバーが好みに応じて設定できるカスタマイズモードも用意した。
このほか滑りやすい急斜面などを走る時、車両が自動的にアクセルとブレーキを操作するクロールコントロールなども備わる。4輪のブレーキを独立して作動できるから、ドライバーの技量を超えた制御が可能だ。
安全装備では、「Lexus Safety System +」が装着された。基本的には「Toyota Safety Sense P」と同じで、センサーにはミリ波レーダーとカメラを併用する。そのために車両だけでなく、歩行者の検知も可能だ。斜め後方を並走する車両などもレーダーで認識して、注意を促す機能も設けた。
空調では「レクサス クライメイトコンシェルジュ」を採用。オートエアコン、ステアリングヒーター、シートのベンチレーションなどを一括して操作できる。カーナビも進化させ、12.3インチのディスプレイ、後席用のリアシートエンターテインメントシステムなども設定した。
1グレード構成で価格は「1,100万円」
グレードはLX570のみで価格は1,100万円。レクサス車の中でも高価な部類に入る。ベースとなるランドクルーザーの最上級グレード、ZX(682万5,600円)にレクサスLX570と同等の装備を加えたと仮定すれば、総額では約820万円に達する。
さらに内装の質感向上などの対価が50万円として、合計870万円くらいだろう。
それでもレクサスLX570との差額が230万円は残る。エンジンの排気量を4.6リッターから5.7リッターに拡大して230万円というのは、価格上昇が過大といえそうだ。価格が高いこともあって1ヶ月の販売目標を50台に抑えたが、国内市場の反響はどうなるのだろうか。
日本に根付いている「トヨタブランド」をうまく活用して欲しい
ちなみにトヨタブランドとボディの基本部分を共通化したレクサスは、SAIと姉妹車的な関係にあるHS250h程度だ。これに今回のLXも加わったのだが、似たような位置付けのレクサス車をさらに増やすと、ユーザーのニーズに合うように思う。
5ナンバーサイズのアクア、カローラアクシオ&フィールダーをレクサスの基準で造り込んだら、日本の道路環境に合った「小さな高級車」ができるのではなかろうか。ヴェルファイア&アルファードなどは、さらに豪華になりそうだ。それこそ1,000万円でも購入する人は少なくないだろう。
そして見てみたいのが、プロボックスとかハイエースなど、商用車のレクサス版。乗員も荷物も、安全に優しく運ぶ。ビジネスのイメージが変わり、職場環境も良くなりそうだ。販売網の充実も不可欠だろう。今でも1県に1店舗の地域が少なくない。新たに店舗を造るのは大変だが、敷地の広いトヨタ店に「レクサスコーナー」を設けるなど、柔軟な対応をすべきだ。近所にレクサスのディーラーがなく、購入しにくいのでは不親切だろう。
少なくとも日本では、今でもトヨタブランドが強力。レクサスを根付かせるなら、店舗数まで含めたすべてのサービスにおいてトヨタを上まわる必要がある。
10年目のレクサスには、新しい展開を期待したい。
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