2020年発売のホンダ 新型フィット(プロトタイプ)に速攻試乗!|注目の新型ハイブリッドでヤリスを超えるか(1/2)
- 筆者: 山田 弘樹
- カメラマン:Honda
ホンダ 新型フィットが2019年10月に発表され、東京モーターショー2019で世界初公開された。新開発の2モーターハイブリッド「e:HEV」の採用に加え、好みに合わせた5タイプのモデルが用意されるなど、装いも新たにフルモデルチェンジを果たした。
今回は、2020年2月の発売を目前にプロトタイプをテストコースで試乗。ガソリン車の走り、そして注目のハイブリッドモデルの仕上がりを、モータージャーナリストの山田 弘樹氏が徹底チェック!
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健気な柴犬をイメージして作られた、ホンダ 新型フィット
第4世代を迎える新型フィットのプロトタイプに、ホンダの開発拠点である北海道の鷹栖テストコースで試乗することができた。
東京モーターショー2019でその姿を目にした方も多いと思うが、新型フィットで最もドラスティックに変化したのは、そのアピアランス・デザインだと私は思う。
鋭さを捨て、日本らしい「人に寄り添う」キャラに
どこか人なつっこい印象のフロントマスクは、若手デザイナーが「柴犬」をイメージしてこれをデザインしたという。家族に寄り添いながらも、いざというときは「僕がみんなを守る!」という気丈な小型日本犬のイメージ。
CリングタイプのLEDヘッドライトで表情を作った新型フィットには、「ソリッドウイングフェイス」時代よりもどこか温かみがあるように感じられる。シャープの「ロボホン」や、ソニーの「アイボ」といった人に寄り添うロボットたちと同じ、未来の世界へと通じる顔つきに筆者は思えたのであった。
好みに合わせて選べる5つのグレード
新型フィットにはコンセプトの異なる5つのグレードがあり、それぞれにガソリンとハイブリッドの2つのパワートレインが設定される。
今回試乗したのは、1.3リッターのガソリンエンジンを搭載する「BASIC(ベーシック)」と、スポーティグレードとなる「NESS(ネス)」、そして1.5リッターハイブリッドを搭載する「HOME(ホーム)」と「LUXE(リュクス)」であった。
またこれ以外に、車高を高めフェンダーモールを装着した「CROSSTAR(クロスター)」を合わせてフルラインナップとなる。
個性豊かな5種類、それぞれの画像&解説はコチラ
視認性バツグン! 快適な室内空間
新ピラー構造でスッキリ見やすい
「ベーシック」の運転席に収まってまず感じたのは、室内空間の快適さだ。
その決め手となるのは、新規のピラー構造。フロントガラスを支えるピラーを従来のAピラーから分離することでグラスエリアをパノラマ化し、安全性を保ちながらも視野角を従来の69°から90°にまで拡大した。
太いAピラーが後退したことで三角窓までの視野が有効活用できるようになり、コーナーでの視認性が高くなったのだ。
ポイント高し! ワイパーが見えない
また水平基調のインパネや、サンシェイドいらずな横長の7インチ フルTFT液晶モニター配置が室内をすっきりと広く見せている。
それと細かいことだが、配置変更によって通常時にワイパーが見えなくなっているのも快適性に貢献していた。
気になる走りは、驚くほどマイルド!
エンジンは先代と同じだが、明らかな違いを感じた
走り出して感じたのは、エンジン特性がマイルドに感じられたことだ。
形式的には従来と同じ1.3リッターの直列4気筒アトキンソンサイクルDOHC i-VTECにCVTの組み合わせだが、その出力値が100PS/119Nmからどう変更されたのかは公表されなかった。
端的に述べると従来型は、カラッとしたホンダらしいサウンドと吹け上がり感が印象的だった。しかしそれと同時に、小排気量エンジン+CVT特有の、せわしなさがもっと強かったと記憶している。
対して新型は実用トルクの出し方がうまく、実際のサウンドやバイブレーションも、その角が丸められていると感じた。
気持ちの良い吹け上がり
さらにここからアクセルを踏み込んで行くと、マイルドなトーンを保ちながらも気持ち良くトップエンドまでエンジンが吹け上がって行く。
高回転時においてもエンジンはやや高めに回転を引っ張ったあと、CVTをステップ制御させて有段フィールを与えている。これがエンジン回転の高止まりを抑え、静粛性と同時に、走りにメリハリを与えている。
新型触媒によって抵抗が増えたことも少なからずエンジン特性のおとなしさに拍車を掛けたのではないかとは思うが、制御の高度化がその鈍さをも相殺し、全体としてはよりマイルドで気持ちが良い実用エンジンになったと感じた。
きちっと安定、ハンドリングは好印象
レスポンスはややおっとり?
ハンドリングは、ベーシックカーの基本である直進安定性がきちっと保たれているのが好印象だった。
上級仕様に対してフロアトーボード(足置き台)まわりの防音材などは簡素化されているとのことで、ロードノイズは確かに若干入ってくる。しかしサスペンションそのものはダンパーやブッシュのフリクションを減らした結果が出ているのか、荒れた路面でも乗り心地は保たれていた。
代わりに操舵応答性に関しては、若干の緩さを感じる。フィットはこのクラスでは珍しいVGR(可変ステアリングギアレシオ)機構をラインナップするとのことだったが、ベーシックには非装着だったのかもしれない。全体的にはおっとりとしたハンドリングが印象的で、ここは最大のライバルである、トヨタ・ヤリスの方がスイスイと走る。もちろんこれにはヤリスに対して55mm大きな3995mmの全長と、それに伴うホイルベースの長さも関係しているが、男女ともに幅広い年齢層が運転するベーシックモデルのキャラクターとしては、敢えての味付けでもあるはずだ。
スポーティなステアフィールは「ネス」におまかせ
とはいえホンダも、よりリニアな操縦性を実現するグレードとしてスポーティな「ネス」を用意しており、そこにぬかりはない。
スポーティグレードとは言ってもその足回りは乗り心地を損なうほどには固められておらず、操舵初期から16インチタイヤにじわっと面圧を掛けていく。ステアフィールも極めて自然であり、これを切り込んでいっても、グリップ感が途切れないのはいかにもホンダらしい。ホンダ的には明確に公言していなかったが、むしろこちらにVGRが装着されているように感じられた。
リズムに乗って走るほどに運転が楽しくなり、こうなるとエンジンにもっとパンチが欲しくなるのは事実だが、それはまだ見ぬ「RS」グレードの役目だろうか。
フィットのネスで“フィットネス”とはよく言ったもので、スポーティだがレーシングではない身のこなしと乗り心地の良さには、これぞベスト・フィットという印象を抱いた。
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