ボーイッシュ軽トールワゴン 徹底比較(4/4)

ボーイッシュ軽トールワゴン 徹底比較
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積極的に人に薦められるクルマに

走行走行

5年連続して日本でもっとも売れたクルマになったワゴンRだが、どちらかというと、これまでは標準モデルの低価格グレードが販売の主体だった。質感にこだわるとか、あるいはボーイッシュな雰囲気を好むユーザーは、ムーヴカスタムに目が向いていたように思う。

ワゴンR自体は、ほっておいてもそれなりに売れるクルマではあるが、スズキはそこにあぐらをかかず、質感や装備を充実させ、走行性能を大幅に向上させるなど、従来とは隔世の感があるほどまでに仕上げた。結果、現行ワゴンRは、ライバルに比べても、積極的に人に薦められるクルマになったと思う。

また、先代の途中でスティングレーが追加されるや、ワゴンRでもこうしたボーイッシュ系モデルに一定の人気が得られることが明らかになると、現行モデルではスティングレーが明確にワゴンRの上級モデルとして位置づけられた。内容的にも十分に期待に応えるものとなっている。

従来は、宿命のライバルであるムーヴカスタムに比べると、価格面での強みはあれど、内容的にほめられる点は見当たらなかった。ところが現行のスティングレーは、ほとんど互角か、あるいは上回った部分も多々ある。1~1.5Lクラスに比べても、質感、走行性能、静粛性や乗り心地の快適性においてあまり見劣りしない。それら完成度の高さを、現行ワゴンRの中で、とりわけ強く感じさせるのが、スティングレーのターボグレードである。

軽トールワゴンとして新たな領域へ

走行走行

今回のようなボーイッシュ軽トールワゴンというカテゴリーの人気を確立した立役者がムーヴカスタムである。その好イメージは、タントやミラなどダイハツ全体のカスタム人気につながり、ひいてはライフがディーバ、ワゴンRがスティングレーというモデルで追いかける形になった。

もともと上質さを追求するムーヴは、価格の安さを訴求していたワゴンRとは微妙に客層が異なり、それがムーヴカスタムの人気に直結した。いつしかムーヴカスタムは、標準のムーヴをしのぐほどの販売を見せるようになり。カスタムだけで、「S」「X」「Xリミテッド」「R」「RS」の5グレードをラインアップするようになった。こうした豊富なバリエーション展開もムーヴカスタムの特徴的な一面だ。

現行モデルでは、プラットフォームやパワートレイン、質感、ユーティリティやパッケージングについて、できる限りのことをやった上で、こうしたワンモーションデザインを採り入れ、装備をさらにグレードアップするなど、軽トールワゴンとして新たな領域に踏み込んだことは、大いに評価したい。実際、トータルバランスにもっとも優れるのは、後発モデルよりも、いまだムーヴカスタムに分があるように思える。

しかしながら、旧ムーヴやワゴンRのようなスクエアなフォルムを好むユーザーが少なくなく、ムーヴコンテが発売されることになったのは、皮肉な話ではあるが・・・。

基本は女性ユーザー向けのクルマ

走行走行

先代ライフは、コンセプトが先を行き過ぎていたとの判断からか、現行ライフではそれを引き戻した格好となった。しかしながら、デザインだけでなく走りについても、先代まで一定のレベルに達していたものが、現行モデルでは逆戻りしてしまった印象があるのが残念である。それは標準モデルのライフやパステルも、このディーバにも共通する現行ライフの弱点である。

しかしながら、徹底して視界の改善に取り組んだり、パーキングアシストやバックビューモニターなど、ライバルが未着手の領域まで踏み込んでいるところは注目に値する。

ライフという車種自体が、全体として女性ユーザーに主眼を置いているように思えるし、ディーバは異端的な位置づけという印象が拭えず、ゼストとの差別化やコンセプトの迷いが、見た目にも表れているところが惜しまれる。

現状、よい部分とそうでない部分が混在し、全体としての商品性が上手くパッケージングされていないのが正直なところ。ライバルはそのあたりがよくできているだけに痛い部分であり、それが販売の差にも現れているのは否めないだろう。

おそらく走りは、年次改良レベルでもグッとよくなるであろうポテンシャルを持っているはずなので、現行ライフを評価するのは、最初の改良を経てからが本番ということにしたい。

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岡本 幸一郎
筆者岡本 幸一郎

ビデオ「ベストモータリング」の制作、雑誌編集者を経てモータージャーナリストに転身。新車誌、チューニングカー誌や各種専門誌にて原稿執筆の他、映像制作や携帯コンテンツなどのプロデュースまで各方面にて活動中。記事一覧を見る

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