パッソ/キャスト/デミオを徹底比較 ~コンパクトカーと軽自動車の新しい関係性~(1/4)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:茂呂幸正・和田清志
コンパクトカーと軽自動車の新しい関係性
1990年代の初頭までは、小型車に属するコンパクトカーと軽自動車の間には、明確な違いがあった。軽自動車は価格と税金の安さがメリットで、主に2名以内の乗車で短距離を移動するクルマとされていた。
ところが1993年に背の高い初代スズキ ワゴンRが登場。広い室内と使いやすい荷室が受けてヒット作になった。ダイハツ ムーヴなどの類似車種も続々と登場している。
さらに1998年10月には軽自動車が規格を改訂。衝突安全性の向上を目的に全長が100mm、全幅は80mm拡大され、今の軽自動車と同じボディサイズになった。
この規格変更を視野に入れて各メーカーは車両開発を進めたから、1998年の10月~11月には、16車種の新型軽自動車がほぼ同時期に登場する未曾有のニューモデルラッシュになった。
そして2006年には軽自動車の国内販売台数が200万台を突破。この後も売れ行きを伸ばし、2014年には227万台に至った。
2015年は前年の乱売と増税の影響で190万台に下がったが、それでも新車として売られるクルマの約38%が軽自動車だ。前述の規格変更では衝突安全性の向上と併せて室内も広くなり、激しい販売合戦の中で質感や安全装備も向上したから、売れ行きが順調に伸びた。
軽自動車が商品力を高めて小型車からの代替えが増える一方、相対的に存在感を弱めたのがコンパクトカーだ。
特に先代型のトヨタ パッソ/ダイハツ ブーンは、ユーザーから車内の狭さ、質感の低さ、乗り心地の粗さなどが指摘されて販売台数も伸び悩んだ。
そこで新型パッソ/ブーンは、軽自動車の優れた空間効率や内装デザインを参考に開発されている。従来の考え方では、コンパクトカーの先進技術や上質感を軽自動車に反映させたが、新型パッソ/ブーンでは立場が逆転。軽自動車を見習ってコンパクトカーを造った。
このクルマ造りの変化を改めて探るために、今回はトヨタ パッソ/ダイハツ キャスト/マツダ デミオの3車種を比べる。キャストはジャンルの異なる軽自動車だが、内外装などにはパッソと似たところが多い。
パッソはエンジンを直列3気筒の1リッターのみにすることで、価格を安く抑えた。なので価格はキャストと横並びになり、質感などを高めながらも実用重視のコンパクトカーに位置付けられる。
一方、デミオは運転の楽しさを重視して開発され、パッソの対極に位置する存在だろう。今回はフィットやヴィッツといった定番車種は敢えてはずし、新しいコンパクトカーの流れを探ることにした。
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