イグニス/アクア/フィットを徹底比較 ~ハイブリッドで低燃費なコンパクトカー~(3/4)

イグニス/アクア/フィットを徹底比較 ~ハイブリッドで低燃費なコンパクトカー~
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前席の座り心地が快適で装備ではカメラ方式の緊急自動ブレーキを採用

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前述のとおりイグニスは価格が安く、インパネなどの質感はあまり高くない。それでも見栄えに不満はなく、メーカーオプションのメモリーナビ(14万2560円)を加えれば、タッチパネルとあって流行に乗った印象になる。

インパネで注意したいのはエアコンなどのスイッチの取り付け位置が低い点。横並びの小さなスイッチは、デザイン性を優先させた印象だ。

前席は座面の奥行に余裕を持たせ、背もたれの高さも十分に確保した。座面のボリューム感も相応にあり、腰の近辺が硬めだから体の収まりは良い。コンパクトカーとしては満足できる。

後席は座面が短く、前席を40mm下まわる。前席に比べて体が座面に沈みにくく、着座位置が高めで座面の角度が水平に近いため、腰の収まりが良くない。座面を少なくとも20mmは伸ばし、座った時に体が適度に沈んだところで支えると、快適になって着座姿勢も安定するだろう。

その半面、座る位置が高めだから腰が落ち込むことはない。後席に座る乗員の足が前席の下に収まりやすいこともメリットだ。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシ1つ半だから、決して広くはないが、着座位置を最適化したので狭さは気にならない。頭上の空間も握りコブシ半分程度は確保した。

荷室は広くないが、ハイブリッドMXとMZには、左右独立式の前後スライド機能が備わる。これが座り心地を悪化させた原因でもあるが、乗員の体格や荷物の量に応じた調節がしやすい。

装備ではセーフティパッケージに含まれるデュアルカメラブレーキサポートに注目したい。2個のカメラを使う緊急自動ブレーキで、作動速度は時速5kmから100km。対象物を画像として認識するから歩行者にも反応する。

時速5kmから50km未満(歩行者は30km未満)であれば、緊急自動ブレーキの作動で完全停止できる場合もある。車線の逸脱警報なども設けた。車間距離を自動制御できるクルーズコントロールの機能はないが、安全装備の性能は赤外線レーザー方式に比べると格段に高い。

なおセーフティパッケージの価格は9万7200円。ソリオのデュアルカメラブレーキサポートに比べて5万9400円高く、この金額がサイド&カーテンエアバッグの価格に相当する。割安ではないが相場には沿っている。

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居住性は前席を優先させてスポーティーな雰囲気が濃厚

トヨタ アクアトヨタ アクア

アクアのインパネのデザインは立体的だが、形状が少し複雑で好みが分かれそうだ。速度などを表示するメーターは薄型だが、高く奥まった位置に装着されて視認性は悪くない。遠方から目を移す時の視線と目の焦点移動を抑えた。エアコンのスイッチも、比較的高い位置に備わるから扱いやすい。

質感は発売当初のインパネに施された幾何学模様が賛否両論で見栄えもいまひとつだったが、マイナーチェンジで改善された。上質とはいえないが違和感は抑えた。

前席は着座位置を少し高めに調節しても、コンパクトカーとしては床と座面の間隔が不足気味だ。天井が低いために座る位置も下がり、手足を少し伸ばす姿勢になる。ただし一概に欠点とはいえず、スポーティーな印象で好感を持つユーザーもいるだろう。

座り心地はコンパクトカーの平均水準だ。サポート性が良いとはいえないが、不満も感じない。背もたれの下側は適度に硬く、体の支え方は良い。

後席は窮屈に感じる。天井が低く、しかも後方に向けて下降させたから着座位置も下がった。座ると腰が落ち込んで大腿部のサポートが甘くなる。プラットフォームをヴィッツなどと共通化したから、前席の下にはクロスメンバー(ボディの底面に位置する横方向に通された骨格)があり、後席に座った乗員のツマ先が持ち上がる。

また後席の下には燃料タンクと駆動用ニッケル水素電池が収まり、座面のボリューム感も不足気味だ。

身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る同乗者の膝先空間は握りコブシ1つ半。ホイールベースは2550mmを確保したが、前席の着座位置が低く後方にスライドするため、後席の足元が狭まった。頭上の空間も握りコブシ半分に満たない。座面の前方を微妙に持ち上げるなど開発段階で居住性に苦慮した形跡は見られるが、後席の居住性は、外観からも想像されるように5ドアクーペの水準にとどまる。

荷室も天井が低めだから広くはない。後席にスライド機能はなく、背もたれを前に倒すと広げた荷室の床に段差が生じる。

なのでファミリーカーとして使うなど、後席や荷室に相応の実用性を求めるなら、販売店の試乗車や展示車で確認した方が良いだろう。

安全装備ではトヨタセーフティセンスCを5万4000円で用意した。センサーにはミリ波レーダーと単眼カメラを併用する。衝突の危険を検知した時の警報は時速15kmから140kmの範囲で作動し、緊急自動ブレーキは時速80km以下で働く。カメラが備わり、車線逸脱の警報、ハイ/ロービームの自動切り替えは可能だが、歩行者を検知する機能は採用されていない。

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後席と荷室の広さは抜群でファミリーユーザーにピッタリ

ホンダ フィットハイブリッドホンダ フィットハイブリッド

フィットハイブリッドのインパネの中央にはタッチパネルを採用した。タッチパネルは見栄えは良いが、エアコンの温度調節などは、アクアに比べて手探りの操作がしにくい。それでも操作パネルをドライバーに向けて少し傾けるなど、使い勝手に対する配慮が見られる。

前席の座り心地はコンパクトカーの平均水準で、座面の硬さは適度だ。肩まわりのサポート性はもう少し向上させたいが、不満に感じるほどではない。

後席はイグニスやアクアに比べて快適に仕上げた。差が付くのは足元空間で、身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る同乗者の膝先空間は握りコブシ2つ半に達する。頭上にも握りコブシ1つ弱の余裕があるからフィットが明らかに広い。

座り心地は、シートアレンジが多彩なこともあって座面の柔軟性がいまひとつ。奥行寸法も短いが、コンパクトカーとしては快適に座れる。

荷室の機能は多彩だ。フィットハイブリッドは前席の下に燃料タンクを設置したので、荷室の下に駆動用電池を収めながら積載空間が十分にある。後席を畳んだ時にはボックス状のスペースになり、コンパクトなハイブリッド車としては積載容量が大きい。座面を持ち上げれば、車内の中央に背の高い荷物も積める。

燃料タンクを前席の下に設置することで得られた空間効率は、後席の居住性と積載性を向上させ、ハイブリッドの実用性も高めた。

装備では「あんしんパッケージ」が注目されるが、緊急自動ブレーキは軽自動車などに多く採用される赤外線レーザー方式だ。作動速度の上限は時速30kmだから市街地向けになる。歩行者も見分けられない。その代わり価格が安く、サイド&カーテンエアバッグと組み合わせて6万1714円とした。緊急自動ブレーキが2万円少々で、サイド&カーテンエアバッグが4万円といった配分になる。

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内装・装備の総評

内装の質感はイグニスが少しシンプルな印象。価格相応という感じだが、さほど不満はない。

居住性で差が付くのは後席で、フィットハイブリッドが最も快適だ。座り心地は特に良くないが、頭上と足元が広い。燃料タンクを前席の下に搭載したので荷室にも余裕がある。特に後席を畳んだ時の広さでライバル2車を引き離した。

イグニスは座面の奥行寸法を増して、座り心地を柔軟にすると快適になる。またアクアやフィットハイブリッドと違って後席にスライド機能を備えることに注目したい。チャイルドシートを装着した時に前方に寄せると、運転席に座る親との間隔が近づき、後部の荷室も有効活用できる。このあたりには軽自動車で得たノウハウを反映させた。

安全装備はカメラ方式のイグニスが進歩的だ。作動速度の上限が高く、歩行者を見分けられるメリットが大きい。ただし価格は少し高い。

アクアは赤外線レーザーとカメラを使うが、歩行者を検知できないのが残念。改善の余地を残す。

フィットハイブリッドは、今となっては簡易型だ。コンパクトカーとはいえ、1.5リッターのハイブリッドを搭載して後席も広いのだから、ファミリーカーとして長距離を移動するユーザーも少なくないだろう。「あんしんパッケージ」と併せて、上級のホンダセンシングを用意すると親切だ。このタイプなら車間距離を自動制御するクルーズコントロールも装着できて、長距離移動時の快適性も高まる。

ちなみに2016年1月にトヨタのミニバン「ヴォクシー/ノア/エスクァイア」も緊急自動ブレーキを採用したが、アクアと同じトヨタセーフティセンスCにとどまった。プリウスのような高速対応のトヨタセーフティセンスPは付けられない。価格を抑えて普及を図ることも大切だが、安全装備は上級タイプを装着可能にして欲しい。トヨタセーフティセンスCは標準装着で、トヨタセーフティセンスPをオプションという組み合わせにしても良いだろう。

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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