「フィアット デュカト」正規輸入へ一歩前進/FCAジャパン、大型商用バンを国内初披露[JCCS2017]
- 筆者: 遠藤 イヅル
- カメラマン:オートックワン編集部・遠藤イヅル・FCAジャパン
現行型は3代目 全世界で販売される大型バン「デュカト」
幕張メッセを会場に2月2日(木)~2月5日(日)まで開催中のキャンピングカーの祭典「ジャパンキャンピングカーショー2017」(主催:日本RV協会)で、ひときわ注目を集めるクルマがあった。それが、FCAジャパンが国内で初披露を行った「FIAT DUCATO」(フィアット デュカト)である。
デュカトはフィアットが製造する大型の商用バンで、1981年に初代が登場してから全世界で500万台以上が生産されたベストセラーモデルで、現行型は2006年に発表された3代目にあたる。
ダッジ版やプジョー、シトロエン版も存在する世界戦略車
ライバルモデルとしては、メルセデスベンツ スプリンター、ルノー マスター、シトロエン ジャンパー、プジョー ボクサーなどが存在する。 ちなみにシトロエンとプジョーの各モデルは、細部が異なる以外は基本的にデュカトの兄弟車だ。そして北米でも「クライスラー(ダッジ) ラム プロマスター」と名を変えて販売が行われており、デュカトは世界戦略車としての任も担っていることがわかる。
商用車は決して無視出来ない市場規模を持つため、欧州メーカーの多くが本国の製品カタログに用意しているが、これまで正規輸入車としてディーラーや日本法人が取り扱って来た事例は非常に少なく、デュカトも全世代において正規で日本に上陸したことは無い。価格面での問題などから導入が進まなかったのだ。
日本への正式導入を視野に入れての参考出品
2015年に設立されたFCAジャパンは、2016年には過去最高の販売台数を記録した。同社は2019年までに年間販売台数を3万台に伸ばすことを目標としており、成長の柱のひとつとして新分野への参入を積極的に進めている。その一環として、欧州キャンピングカー市場ではベース車として70%以上のシェアを持つという魅力ある商品のフィアット デュカトを、成長が進む日本のRV市場に投入することを視野に入れている。その第一弾の取り組みとして「ジャパンキャンピングカーショー2017」をデュカトの初披露の場に選んだ。
デュカトをベースにしたキャンピングカーは会場内にもかなりの台数が展示されているが、日本法人が「ベース車」として素の状態で入れるだけあってさすがに注目度は高く、常にデュカトのまわりにはひとだかりが出来るほどだった。キャンピングカービルダー各社のスタッフもじっくりとデュカトを観察。中にはメジャーを持ち出して各部を採寸するスタッフも現れるなど、新しいキャンピングカーの素質を入念にチェックしていた。
3種類の車体に日本導入の本気を見る!?
デュカトの特徴は、欧州製商用バンとしては一般的だが、国産1ボックスバンでは珍しい「FF」(前輪駆動)を採用していることだ。
FF商用バンのメリットのひとつとして、後輪を動かすためのドライブシャフトが不要なことによる荷室床の低さがあげられるが、それを活かして車内で完全に大人が立つことが出来るほどの空間を有している。
今回もデュカトの展示にあたり、車内に寸法表示を行うことでデュカトの荷室の大きさをアピールしていた。展示車の車内に自由に入ることが可能なため、来場者もその広さにびっくりしていたようだ。
さらに今回の発表では、なんと寸法が異なるM、L、XLの3種類の諸元が用意されていた。もしこのまま発売が行われるとすれば、正規輸入商用車としては破格のバリエーションの多さとなり、FCAジャパンの本気度を伺わせる。
数値で見るとホイールベースと全長はMが3450mm/5413mm、LとXLが4035mm/5998mm(展示車はこのサイズ)で、LとXLの違いは全高がXLのほうが240mm高くなっており、これによりLとXLでは荷室寸法は長さ3705mm、幅最大1870mm、高さ1932mm(XLでは2172mm)に達する。最大積載量はいずれも3500kgだ。
なお、本国イタリアではサイドに窓がないバンを「フルゴーネ(Furgone)」と呼び、4種類の全長と3種類の高さ、5種類のディーゼルエンジン、1種類のCNGエンジンを選択出来る。日本仕様のエンジンはこの中から直4のターボディーゼル「130Multijet2 Euro6」がチョイスされ、2287ccの排気量から131kw(177ps)の最高出力と400Nm(40.8kgm)の最大トルクを発生。トランスミッションはATモード付き6速シーケンシャル(コンフォートマチック)を採用する。
ステアリング位置は右、スライドドアは左側で、日本の左側通行に対応している。・・・と聞くと当たり前のハナシのようだが、日本へ輸入されているデュカトベースのキャンパーの中には、製造国の関係で左ハンドル・右スライドドアのまま持ち込まれた車両も少なからず存在している。今回のジャパンキャンピングカーショー2017会場でも、右ハンドル仕様と左ハンドル仕様のキャンピング加装車が混在していた。
キャンピングカー以外への展開にも期待が高まる
今回の展示は現段階ではまだ参考出品ではあるものの、キャンピングカーショーでの反応を見て導入への検討を進めるという。また、キャンピングカービルダーが集うイベントでの発表をすることで、デュカトを架装したいというキャンピングカービルダーや販売ディストリビューターの募集も同時に行っていた。そこである程度まとめてキャンピングカー用ベースとして採用されて台数が見込まれれば、輸入が正式に決定されるかもしれない。
デュカトは大きなクルマのため、一般的なFCAのディーラー販売店では修理点検などの対応が難しい。そこでFCAジャパンでは部品の供給や技術的サポートやバックアップ、アフターサービスでフォローを行い、整備などに関しては大きなクルマの扱いに長けているビルダーにお願いする方向で計画が進んでいるようである。
なお、今回FCAジャパンが展示したデュカトをキャンピングカーにする場合、車体後部を“部屋”に載せ変えるキャブコン(キャブコンバージョン)ではなく、外観はほぼそのままで車内をキャンピングカー仕様にしたバンコン(バンコンバージョン)のみ対応が可能となる予定である。
RV市場に向けての参考出品となったデュカトへの来場者の反応は、キャンピングカーとしての素材としてはもちろんのことだが、中にはホテルなどの送迎用や、純粋に輸送用バンとして活用したい、という声もFCAジャパンにはすでに届いている様子。国産車には存在しないサイズと使い勝手を持つフィアット デュカトの国内導入を期待しよう。
[レポート:遠藤イヅル/Photo:オートックワン編集部/遠藤イヅル/FCAジャパン]
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