フィアット パンダ4×4 試乗レポート/嶋田智之(2/3)

フィアット パンダ4×4 試乗レポート/嶋田智之
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6速MTのみだが、マニアにはストライクなはず

フィアット パンダ4×4

3代目パンダ4×4の最大の特徴は、フルタイム4WDのシステムが最新のトルクオンデマンド式とされたことだ。前後ひとつずつのディファレンシャルとリアにマウントされた電子式カップリングが組み合わせられていて、通常はFFでの走行となるが、電子制御により路面の状況に応じて必要なところへ必要な分だけ駆動力が分配されるという仕組みだ。速度が50km/h以下の場合であれば、スイッチひとつでデフロック機構を使うこともできる。

フィアット パンダ4×4フィアット パンダ4×4

見た目でハッキリと判る特徴は、まず背が高いこと。車高は通常のパンダに較べて65mm高くなっていて、そのほとんどが床下にあてられている。それに加えて前後バンパーの形状も変更されていて、アプローチアングルもデパーチャーアングルも拡大。また前後のバンパーの下側にはアンダーガードが備わっているのも目立つところだ。

日本仕様のパワーユニットは、スタンダード・パンダと同じツインエア。たった2気筒の875ccターボエンジンは、低速域では粘り強いトルクを発揮してくれるが、スロットルを踏み込むと意外や高回転まで元気よく回り、その気筒数や排気量からすれば驚くほどの加速力と高速巡航性を提供してくれることで好評だ。通常のパンダではそれにデュアロジックが組み合わせられるが、4×4は6速マニュアルトランスミッションのみの設定。けれど、それはこのクルマの日本上陸を待ち焦がれていたようなマニア達にとっては、見事に“ストライク!”といったところだろう。

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走破性の高さはジープ グランドチェロキーにすら引けを取らない

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現行のパンダは、ただでさえ乗り心地が結構いい。プラットフォームを共用するフィアット500と較べても、ホイールのストローク量が伸びてるのかと思うくらい、しなやかに豊かにサスペンションが伸び縮みする。500ほど愛嬌を振りまくのが上手ではないが、なかなかできたヤツなのだ。

そのうえ車高が高くなって明らかにホイールストロークが大きくなっているのだから、オンロードでの4×4の乗り心地は極めて快適。さらに余裕を持って路面の凹凸を巧みに吸収してくれる印象だ。その分だけコーナーでの車体のロールは大きくなっているのだけど、元々の素直なハンドリングとしっかり安定感のある結構な粘り腰という基本的な性格には変わりはなく、危なっかしい感じは全く感じられない。あくまでもちょっと背が高くて乗り心地に深みを増した快適なパンダ、である。

ツインエアエンジンは例によってトコトコとのんびり走るときも勢いよく飛ばしていきたいときも、相変わらず思わずニヤニヤ笑いがこみ上げてきてしまうほどの逞しさを発揮してくれる。それを望外にスムーズな動きを見せる6速のマニュアルミッションで走らせるわけだから、好きな人にとっては日常領域での楽しさが増したように思えることだろう。

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トルクオンデマンド式の4WDシステムを試すためにぬかるんだ農道や広い砂地に入ってみたのだが、その恩恵は即座に体感することができた。4つのタイヤそれぞれが駆動の強弱をシームレスに変化させながら、タイヤを空転させることなく確実に土や砂を噛んで前に進んでいくのが判るのだ。ツインエアエンジンの低速域での粘っこいトルクと過敏すぎないレスポンスは、そうしたシチュエーションにも実にピッタリだった。本当なら雪道やオフロードコースのようなところでその実力をもっと味わってみたいところだったが、適切な場所が見当たらず、断念。本国でのデビュー直後にラフロードのコースで様々なテストを敢行した外誌のレポートによれば、その走破性の高さはジープのグランドチェロキーにすら引けを取らないと書かれていたことを、参考までに付け加えておこう。

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嶋田 智之
筆者嶋田 智之

本人いわく「ヤミ鍋系」のエンスー自動車雑誌、『Tipo』の編集長を長く務め、スーパーカー専門誌『ROSSO』の総編集長を担当した後、フリーランスとして独立。2011年からクルマとヒトに照準を絞った「モノ書き兼エディター」として活動中。自動車イベントではトークのゲストとして声が掛かることも多い。世界各国のスポーツカーやヒストリックカー、新旧スーパーカー、世界に数台の歴史的な名車や1000PSオーバーのチューニングカーなどを筆頭に、ステアリングを握ったクルマの種類は業界でもトップクラス。過去の経歴から速いクルマばかりを好むと見られがちだが、その実はステアリングと4つのタイヤさえあるならどんなクルマでも楽しめてしまう自動車博愛主義者でもある。1964年生まれ。記事一覧を見る

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