BMWの最新プラグインハイブリッド「740e iPerformance M Sport」に試乗
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:茂呂幸正
エコとパフォーマンスを両立させたPHEV(プラグインハイブリッド)
2015年10月にフルモデルチェンジしたBMWのフラッグシップモデル「7シリーズ」に2016年10月、プラグインハイブリッド(PHEV)モデル「740e iPerformance」(アイ・パフォーマンス)が追加された。同社の電気自動車「i」シリーズのエコなイメージと電動化技術を継承するいっぽう、システムトータル最高出力326ps(240kW)・最大トルク500Nmと、BMWらしい”パフォーマンス”にも優れる点が特長だ。欧州プレミアムモデルで近年急激に勢力を拡大しつつあるPHEV。その実力の程について、自動車評論家の渡辺陽一郎氏が検証する。
欧州各社が高価格モデルにPHEVを続々追加する理由
今の日本国内の売れ筋は、ボディが小さくて価格の割安な車種だ。安全装備の充実などで日本車の価格帯が全般的に高まったこともあり、従来以上に小さなクルマに代替えするユーザーが増えた。2016年度(2016年4月から2017年3月)までの販売統計を見ると、軽自動車の比率が少し下がったものの34%に達しており、販売ランキングの上位に入る3ナンバー車は、1位のトヨタプリウスだけだ。それ以下はホンダ N-BOX、トヨタ アクア、ダイハツ タント、トヨタ シエンタという具合で、堅調に売れる車種の大半はエンジンの排気量が1.5リッター以下になる。
その意味で2017年3月に発売されたレクサスのラグジュアリークーペ LCは、1300万円以上の車両本体価格が注目されそうだ。2017年の末から2018年にかけて、本命とされるLサイズセダンのレクサス LSも一新される見込みで、華やかな展開が期待される。先進装備は上級車種から普及が進むことも考えると、その開発と新型車の投入は、小さな車種の技術進歩にも影響を与える。
レクサス LCのLexus Safety System+(レクサス・セーフティ・システム・プラス)は、操舵を支援するレーンキーピングアシストが依然として未熟で残念だったが、LC500hのハイブリッドシステムは相当に進化していた。4速ATを組み込み、従来のハイブリッドとは異なる有段式によるメリハリのある加速感を味わえる。JC08モード燃費も15.8km/Lと良好だ。今のLサイズボディを備えた高価格車では、欧州の燃費規制も視野に入れて、ハイブリッドが重要な役割を担う。
そこで改めてBMW 740e iPerformance M Sportを試乗した。BMWの最上級セダンとされる7シリーズに、充電の可能なハイブリッドシステム(プラグインハイブリッド)を搭載する。
PHEV ”740e iPerformance”、システム最高出力326馬力の実力とは
BMW 740e iPerformance M Sportに搭載のエンジンは、直列4気筒の2リッターターボとボディサイズに対し随分と小さく感じるが、最高出力は258馬力を発揮する。これに最高出力が113馬力のモーターを組み込み、両方の駆動力を合計したシステム最高出力は326馬力とした。
駆動用リチウムイオン電池の総電力量は9.2kWh。プリウスPHVの8.8kWhよりも少し多く、アウトランダーPHEVの12kWhに比べると小さい。充電された電気を使って走る740e iPerformanceの最大距離は42kmとされる。計測方法は異なるが、車両重量が2トンを超えることもあり、プリウスPHVの68.2km、アウトランダーPHEVの60.8kmに比べると短くなる。
試乗してみると、まず発進はモーター駆動のみで行われた。駆動用電池が充電された状態であれば、アクセルペダルを深く踏み込まない限りエンジンが始動することはない。モーターによる走行だから、当然ながら運転感覚は静かで滑らかだ。8速ATの変速もスムーズに行われ、ショックをほとんど感じない。
ただしエンジン本体は直列4気筒の2リッターだから、遮音を入念に行ったものの、ハイブリッド走行をしている時はノイズが相応に響く。このあたりはユーザーによって受け止め方が異なるだろう。
充電された電気を使わないハイブリッド走行時のJC08モード燃費は15.6km/Lだから、日本のハイブリッド車に当てはめると、V型6気筒エンジンをベースにした前述のレクサス LC500hや、日産 シーマ、ホンダ レジェンドと同程度だ。車両重量が2トンを超えることを考えれば十分に納得できる数値だろう。
BMWらしい俊敏な走りとはひと味違う、最高峰7シリーズならではの価値観
BMW 7シリーズのボディはかなり大きい。740e iPerformance M Sportの全長は5110mm、全幅が1900mmで、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)も3070mmに達する。後輪駆動でも最小回転半径は5.8mと大回りだ。内外装のデザインに引き締まり感が伴うため、高速道路を巡航している時にはボディが過度に大柄な印象は受けないが、駐車場での取りまわしや乗降時には不都合を感じさせる。
車両重量は2トンを超えるが、走行安定性は十分に高い。ワイドなトレッド(左右のホイールの間隔)と、長いホイールベースにより、高速道路の巡航では常に安心感が伴う。
賛否が分かれるのは操舵に対する反応だろう。ハンドルを切り始めた時の反応はBMWらしく正確だが、前述のようにホイールベースが長いから機敏な印象は乏しい。スポーティではないが、良くいえばLサイズセダンらしい落ち着きがあり、3シリーズとは違う性格に仕上げた。
乗り心地はBMWの中でも特に快適で、長距離を移動するのに適する。後席の足元空間も広く、後席にオーナーが座る使い方にも対応できる。装備もフルに装着され、運転席と助手席にマッサージの機能が付いているのには驚いた。運転中にも使えるが、快適性が高まる半面、背中に刺激を受けることで集中力が削がれるような印象も受けた。
このあたりは、運転姿勢から操舵感まで、安全でスポーティな走りを神経質に追求するBMWとは、指向性が少し違うように感じる。ボディが大柄な上級車種は、車両重量が増して快適装備もいろいろと盛り込まれるから、ブランド本来の主張や性格が不明瞭になりやすい。BMWの良さが明確に分かるちょうど良いサイズは、やはり3シリーズだろう。
欧州勢が実力を高める中、日本の次期ハイブリッド高級セダンの動向にも注目
それにしても欧州の上級車種は、プラグインを含めてハイブリッド搭載モデルが豊富だ。メルセデス・ベンツのSクラスは、プラグインハイブリッドとしてS550eロングが1638万円で設定される。これはかなり高価だが、2.2リッターのクリーンディーゼルターボをベースにしたS300hは998万円に収まる。充電機能を備えない普通のハイブリッドだが、JC08モード燃費は20.7km/Lと優秀だ。軽油の安さも考慮すると、燃料代は日本車の1.5~1.8リッタークラスと同等になる。
初代プリウスの発売から20年を経過したとはいえ、ハイブリッドはまだ歴史が浅く、プラグイン方式を含めて進化の余地がある。トヨタはハイブリッドの老舗でもあるから、次期レクサス LS500hの進化が注目されるところだ。プリウスはすでに4代目で熟成が進んだが、プレミアムLサイズセダンのハイブリッドは、これからますます世界的な競争が激しくなり、著しい進化を遂げるのだろう。
[レポート:渡辺陽一郎/Photo:茂呂幸正]
BMW 740e iPerformance M Sport[FR] 主要諸元
全長x全幅x全高:5110x1900x1480mm/ホイールベース:3070mm/車両重量:2080kg/駆動方式:後輪駆動(FR)/乗車定員:5名/ステアリング位置:右/エンジン種類:直列4気筒 BMW ツインパワー ターボ DOHC ガソリン直噴エンジン(+プラグインハイブリッドシステム)/総排気量:1998cc/エンジン最高出力:258ps(190kW)/5000rpm/エンジン最大トルク:40.8kg-m(400Nm)/1500-4400rpm/電気モーター種類:交流同期発動機/電気モーター定格出力:55kW/電気モーター最高出力:113ps(83kW)/3170rpm/電気モーター最大トルク:25.5kg-m(250Nm)/3170rpm/システムトータル最高出力:326ps(240kW)/システムトータル最大トルク:51.0kg-m(500N・m)/駆動用バッテリー種類:リチウムイオン電池/駆動用バッテリー総電力量:9.2kWh/トランスミッション:8速オートマチックトランスミッション/ハイブリッド燃料消費率:15.6km/L[JC08モード燃費]/充電電力使用時走行距離:42.0km/L[プラグインレンジ・国土交通省審査値]/電力量消費率:4.99km/kWh[国道交通省審査値]/一充電消費電力量:8.41kWh/サスペンション形式:(前)ダブルウィッシュボーン式・エアスプリング(後)インテグラルアーム式・エアスプリング/タイヤサイズ:(前)245/45R19(後)275/40R19/メーカー希望小売価格:12,630,000円(消費税込)
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