次世代を担うハイパフォーマンスな5シリーズ「BMW 530e iPerformance」は、ただのPHVにあらず

  • 筆者: 五味 康隆
  • カメラマン:ビー・エム・ダブリュー株式会社
次世代を担うハイパフォーマンスな5シリーズ「BMW 530e iPerformance」は、ただのPHVにあらず
BMW 530e iPerformance海外試乗レポート/五味康隆 BMW 530e iPerformance海外試乗レポート/五味康隆 BMW 530e iPerformance海外試乗レポート/五味康隆 BMW 530e iPerformance海外試乗レポート/五味康隆 BMW 530e iPerformance海外試乗レポート/五味康隆 BMW 530e iPerformance海外試乗レポート/五味康隆 BMW 530e iPerformance海外試乗レポート/五味康隆 BMW 530e iPerformance海外試乗レポート/五味康隆 BMW 530e iPerformance海外試乗レポート/五味康隆 BMW 530e iPerformance海外試乗レポート/五味康隆 BMW 530e iPerformance海外試乗レポート/五味康隆 画像ギャラリーはこちら

BMWブランドとして日本に導入される5車種目のプラグインハイブリッド

2017年の2月より日本での発売が開始されたBMWの新型5シリーズ。好評とともに好調な販売をスタートしている流れに水を差すようなことにならないことを願いつつ、ひと言申そう。

いま5シリーズが気になっている方は、さらなる注目モデルがそう遠くない先に日本に入ってくると踏まえておくと良いだろう。BMWブランドとして日本に導入される5車種目のプラグインハイブリッド(PHV)「530e iPerformance」がそれだ。

BMWが次世代プレミアムの世界を見越して立ち上げたサブブランド「BMW i」が鍛え上げた様々な先進技術のなかでも、電気の力を使ったプラグインハイブリッド技術などの動力源に焦点を当ててBMWとして展開しているのがiPerformanceモデル。ハイパフォーマンスを求めたBMWのサブブランド「M」が鍛え上げた技術の一部をBMWで展開するM Performanceモデルと考え方は同じ。BMWとしてはこの「i」と「M」を性能の牽引役に、iPerformanceとM Performanceを橋渡しモデルとして、BMW全モデルの商品力を次世代に向けて性能を偏らせることなく底上げする戦略を掲げている。

その戦略を推進させるうえで大事なモデルとなる530e iPerformanceの完成度が悪いわけがない。ひと足早くドイツで試乗してきた限り、その乗り味はとても魅力的であり、冒頭での書き出しになったわけだ。

リアシート下にバッテリーを搭載し、乗り味の洗練をはかる

BMW 530e iPerformance海外試乗レポート/五味康隆

バッテリー容量9.2kwh。カタログ上でのEV航続可能距離は52.5km。満充電まで200V普通充電で約4時間かかる。実走行で正確に測ることはできなかったが、実質30~40kmくらいガソリンを使わずに走れるプラグインハイブリッドモデルと捉えると良いだろう。

組み合わされるエンジンは、排気量2リッターの直列4気筒の直噴ターボエンジン。動力機構としてはエンジン→クラッチ→モーター→8速AT→リアタイヤという形式をとっており、電気モータードライブが可能なのはもちろんのこと、その電気モータードライブに対しても変速効果やコースティング(エコプロモード使用時)機構を発揮させられるのが特徴。

またひと足早く登場した7シリーズのiPerformanceモデルの「740e」同様に、バッテリーはガソリンモデルでいう燃料タンクがあるリアシート下に搭載。居場所を奪われた燃料タンクはトランクルームの奥床下に相当するリアアクスル直上になるべく低くめり込ますようにして搭載。その背景には、バッテリーは使用状況に関わらず絶えず重いが、燃料タンクはガソリン燃料を使うほどに軽くなる。走りへの重量影響を踏まえて、低重心かつ前後重量バランス向上のバランスウェイトに使うため、絶えず重いバッテリーをリアシート下に搭載して乗り味の洗練もはかったという。

乗る前から相性の良さに期待できた

BMW 530e iPerformance海外試乗レポート/五味康隆

バッテリー搭載に圧迫されて一般的に狭くなりやすい荷室は、開口部からフラット形状で奥まで荷物を積みやすく容量も十分。しかもワンタッチで床面を一段下げられるカラクリ構造になっており、ヘルメットを楽に収納できるほど大きなリモワ製のキャリーバックなども、楽に収納できる実用性まで備えている。

すでに740eで導入されて洗練を重ねているユニットだけに、上質な乗り味を持つ5シリーズとの相性が乗る前から期待できた。

静かで滑らかに動き出す電動ドライブのその先の価値を見せてくれた

BMW 530e iPerformance海外試乗レポート/五味康隆

そもそも新型5シリーズの乗り味、特に電子制御ダンパーを装着した540iの乗り味は、しなやかさを基調に快適性と運動性能の高次元での両立を見事なまでに実現。その完成度には大拍手を送りたいもので、激オススメ車と伝えてきた。

そこに電動モータードライブの威力が組み合わされたその乗り味・・・もう解るだろう。格別だ。

静かに滑らかに動き出すのは電動ドライブであれば当然だが、さらにその先の価値を見せてくれた。それは路面の細かい凸凹の影響を最小にとどめて走行振動を抑える5シリーズのシャシー効果と相まって、体感として得る走行振動が限りなく少ない。

要は、電動ドライブは得てして静かと言われるが、それゆえ、路面が荒れているザラ目路面などでは、タイヤが転がるゴロゴロした振動やゴーという音がむしろ目立ち、不快に感じる時も多い。しかし530eで様々な場面を走ったが、そのような場面がとても少ないのだ。上質な乗り味の天敵を走行振動とするなら、それの2大発生源は動力源の稼働振動と路面入力振動。この2つが巧みに抑えられた世界観の上質さに舌鼓をうった。

BMW 530e iPerformance海外試乗レポート/五味康隆

また、上質な走りと聞くと、フワフワとする乗り味を連想されそうだが、それも無いのが見事。それはガソリンモデルの540iよりむしろ少ないとも言えるだろう。

電子制御サスが効果を発揮しているうえに、無駄な振動を発生させない強靭かつ適度な弾性を備えたボディの存在も大きいが、直感としてフロントはエンジンの重さで無駄な上下動を抑え、リアはバッテリーの重さで抑えている効果が見逃せない。改めて乗り心地や上質を求めた時、重さによる重厚な特性は有効であることを感じた。

ちなみに前後重量配分では若干リアヘビーになっているそうだが、その効果だろう。絶えずリアが安定して踏ん張ってくれる安心感や安定感、ハンドリングの良さがあり、個人的には好みの乗り味の質が備わっていた。

そのような基本の乗り味とともに、電動モータードライブを時速140kmまで堪能でき、その高速電動ドライブの世界も格別。ちなみに電気モーターにも8速AT変速が働いていることがインバーターの微かな音の変化から読み取れるが、あまりにも変速振動がなく変速している感覚は皆無。

「将来、BMW iがパフォーマンスにおいてBMW Mを凌駕することもある」

BMW 530e iPerformance海外試乗レポート/五味康隆

今回の試乗会で開発陣と様々な話をさせてもらったが、ある発言がこのモデルの乗り味を象徴しているので紹介しよう。

「将来、BMW iがパフォーマンスにおいてBMW Mを凌駕することもある」という表現がそれだ。

勘違いしやすいが、BMW iはエコカーではない。次世代のプレミアムカーを求めている未来のBMWと捉えても間違いではない。それはBMW iの「i3」や「i8」に触れたら、スポーツ性を求めていること、BMWらしい走る楽しさを求めていることも解るはず。その技術が導入されたiPerformanceも同様ということだ。

刺激的なBMWらしい鋭く滑らかな吹け上がり特性

BMW 530e iPerformance海外試乗レポート/五味康隆
BMW 530e iPerformance海外試乗レポート/五味康隆

前章で述べた快適な世界観は、エンジンがかかりだすと徐々に変化し出す。

突然スイッチを入れたかのように激変するのではなく、エンジンの1気筒ごとの爆発がビート感のように適度な刺激となり伝わる稼働振動によって、アクセルを踏みたい気持ちを自然と駆り立ててくる。

それに従い踏み込めば、刺激的なBMWらしい鋭く滑らかな吹け上がり特性があり、気持ち良く高速ドライブを行える。そこにはもうモーターの存在感はなく、既存のクルマの価値観で素直に良いと思える世界観が広がる。それでいてアクセルを深く踏んだ際には、エンジン+αの加速感であるモーターを使ったブースト加速が手に入る要望に限りなく答える懐の広さまである。

ワインディングに行くと、さすがに5シリーズのキャラクターに合わせた基本セッティングは、若干レスポンス不足を感じさせる。しかし、シフトレバーをスポーツにして、また乗り味を一括管理するパフォーマンスボタンをスポーツにして走り出すと、アクセルとハンドル操作に対する反応に鋭さがまし、次々に訪れるカーブもリズミカルに抜けられる。リア操舵が巧みに動いてその旋回力の下支えをしていることは予想できるが、その存在を感じないのも自然なフィーリングとして魅力だ。

こんな激褒めの原稿となり申し訳ないが、強いて気になる要素を挙げるとすれば、ブレーキのタッチくらいだ。やはり走りに強いこだわりを持つBMWでも、回生ブレーキを違和感が皆無のメカニカルブレーキに近い状況にまで協調させるのは難しいということだろう。何にせよ、早く日本に上陸させて欲しいモデルだ。

[レポート:五味康隆/Photo:ビー・エム・ダブリュー株式会社]

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五味 康隆
筆者五味 康隆

自転車のトライアル競技で世界選手権に出場し、4輪レースへ転向。全日本F3選手権に4年間参戦した後、モータージャーナリストとしての執筆活動を開始。高い運転技術に裏付けされた評論と、表現の解り易さには定評がある。「持続可能な楽しく安全な交通社会への貢献」をモットーとし、積極的に各種安全運転スクールにおける講師を務めるなど、執筆活動を超えた分野にも関わる。また、環境分野への取り組みにも力を入れており、自身でハイブリッド車も所有。記事一覧を見る

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