アウディ 新型S1・S1スポーツバック 試乗レポート/今井優杏(2/3)
- 筆者: 今井 優杏
- カメラマン:島村栄二
どんだけ小さいかといえば、3ドアで全長3990mm×全幅1740mm×全高1425mmというサイズ。
ちなみにメルセデス・ベンツ A45AMGで4355×1780×1420、アバルト500で3655×1625×1515となっているから、スポーツカーライクに屋根をぐっとローにしたシルエットを持つS1のコンパクト感は見た目だけじゃない。もちろんボディはA1と共通なので、言い換えれば「A1ってこんなにちいさかったっけ」となるのだけど、このサイズ感を目の前にすると、どうしたって走りに多大な期待をせずには居られない。
だって可愛らしい見た目のその中に納められたのは、繰り返すが2.0リッターターボエンジンなのだ。最高出力231ps、最高トルクは370Nmをひねり出し、0-100km/h加速はなんと5,8秒(スポーツバックは5.9秒)。そりゃ冷静になり始めた心拍数だって、再び上がっちゃいますって。マフラーも4本出しで、後ろから見たときの踏ん張り感も目を引く。
果たして、そのハンドリング・走行性能は?
そうなると心配なのはハンドリングだが、その辺はさすがぬかりなく仕上げてくれている。ともすればこの車体にこのパワフルすぎるエンジンであれば、かなりのじゃじゃ馬になってしまうことは想像に易い。そういう荒削りな感じをウリにするのかと思いきや、ハンドリングの俊敏な印象はそのままであるものの、挙動は意外なほど落ち着いていた。
クラッチをミートさせ、スッと滑り出す最初の一歩から、山道を勇ましく駆け抜けるコーナリングまでその印象は変わらない。特に回転半径の小さいタイトなコーナーではターンインから出口までフラット感をずっと感じ続けられるから、コーナーが連続していても身のこなしがとてもエレガントだ。ジタバタせずに次のカーブにピタっと舵を合わせることが出来る。そしてコーナリング後半はきゅっとラインをなでるように美しく脱出する。入力はきっちり拾うが過敏ではない。ガツガツと突き上げる感じはきれいにいなされ、ただスポーツカーらしいカタいインフォメーションだけが手のひらに伝わってくる。
もちろんこれには、ホイール別にトルクをコントロールするトルクベクタリング機能と電子スタビリティコントロールESCを持つ四輪駆動の賜物であるのだが、徹底したボディ側の補強や、サスペンション側の設計の強化にも由来するところが大きい。
フロントサスペンションはピボットベアリングの配置を見直し、機敏なハンドリングレスポンスに貢献させているし、リアサスペンションはスポーツカーらしく4リンクに変更すると同時にトレーリングリンクの強化で縦貫メンバーに一体化され、スプリングとダンパーのマウントを一新。さらにウイッシュボーンをサブフレームに強固に接合するなど、とにかくアシ方面で徹底的に乗り心地を追及しているのはアウディらしい。
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