アウディ A8 試乗レポート/岡本幸一郎(2/2)
- 筆者: 岡本 幸一郎
- カメラマン:オートックワン編集部
ロングだってスタンダードに負けない軽快な走り
日本に導入されるパワーソースは、いずれも直噴の、3リッターV6ターボ(TFSI)と、4.2リッターV8自然吸気(FSI)の2タイプ。
3リッターTFSIエンジンは、アウディがいちはやく低唱しはじめたダウンサイジング戦略の典型的な例で、290ps(213kW)の最高出力を発し、420Nmの最大トルクを、2500~4850rpmという幅広い回転域で発生させる。過給機付きエンジンらしい厚いトルクを堪能させてくれるわけだ。 むしろ後述のV8よりも、トルクフルな感覚では上回るように感じられた。
一方のV8エンジンは、372ps(273kW)、445Nmのスペックを誇り、自然吸気らしい好レスポンスと、V8が奏でるサウンドの美しさも印象的。 3リッターTFSIでも文句なくよいエンジンなのだが、4.2リッターFSIに乗るとやはり、どうせ買うならこちらかと思ってしまうところで悩ましい。
箱根路を走ると、これほどの巨体とは思えないほど、軽快で一体感のある走りを披露してくれる。走行性能面ではハンデの大きいロングのほうでも、標準ボディ車に負けないレベルで、その走りのよさを感じた。
また、従来型のA8も、新しいA8に通じるよさはあったことには違いないが、クルマのキャラクターからすると、ややステアリングが軽くクイックすぎるように感じられた。
しかし、今度のA8はそのあたりがちょうどよく味付けされている。1台で3台の走りを楽しめるドライブセレクトを調整すると、「コンフォート」ではショーファードリブンにも適するフラットで快適な乗り心地となり、「ダイナミック」を選ぶと、車高が下がり、より姿勢変化を抑え、俊敏性の高まる乗り心地となる。
「オート」にしておけば、シチュエーションと走り方に合わせて、最適にバランスさせてくれるので、基本的にはどこでもオートで大丈夫だ。
フラッグシップセダンで最もお買得なのはA8
ライバル視するSクラス、7シリーズも、もちろんどちらも素晴らしいクルマだが、A8も高級車としての実力においては互角かそれ以上といえるだろう。
とくに、今回はドライでの一般道での試乗だったが、雨の高速道路を巡航するようなシーンともなれば、いくら横滑り防止装置があるといっても、もともとAWDであるという強みがある。
それでいて、内容的には彼らよりも充実していながら、価格面でのアドバンテージもある。実はこのクラスでもっともお買い得な高級車ではないかと思う。あとは、これらの得意とする部分を、ターゲットカスタマーにどう伝えていくか。さらには、ブランド力の確立についても、日本ではもう一押し欲しいところではある。
とはいえ、これまで日本の道でA8をあまり見かけることのなかったが、やがて状況が変わっていくかもしれないことを予感させる、素晴らしい高級車であった。
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