アウディ 新型A7 Sportback&新型A8 試乗| アウディらしい軽快な走りに、EV時代への序章を感じさせる麗しのスポーツバックとフラグシップセダン(2/2)

画像ギャラリーはこちら

新型A7 Sportbackに足りなかった質感の高さを備えた新型A8

新型A7 Sportbackの後に乗ったせいもあるけれど、新型A8はアウディのフラグシップセダンを名乗るに相応しいでき映えだった。アーキテクチャー的には新型A7 Sportbackとまったく同じ。ダイナミックオールホイールステアリングを駆使して5170mmの巨体をスムーズに走らせ、4リッターV8(460ps/660Nm)、3リッターV6(340ps/500Nm)ともにマイルドハイブリッドシステム(MHEV)を搭載している。

インテリアの設えも、新型A7 Sportbackと共通である。いやむしろこれは、新型A8のシステムが新型A7 Sportbackに投下されたというべきか。

では新型A8がどこでヒエラルキー差を見せつけているのかといえば、それは新型A7 Sportbackで僅かに不足と感じた質感においてだ。

アルミニウムを基軸にスチール、マグネシウム、そしてカーボンで作り上げられたセダンボディは剛性感が高く、その乗り味には落ち着きがある。その重量は2040kgまで抑えられており、ねじり剛性に関しては先代比で24%も向上しているのだという。

ドイツ三強らしいハンドリング性能

エアサスの制御も見事だ。フワフワとしたバウンスを残すことでエアサス付きのプレミアム性をアピールするのではなく、あくまで最適な乗り心地とスタビリティを両立するための最適な手段としてこれを選んでいる。「あ、エアサスなのか。どうりで乗り心地がよいわけだ」という具合である。

基本的に精緻なハンドリングはメルセデス・ベンツよりも若々しい反応の速さがあり、クワトロ4WDの接地感はBMWよりも腰の据わった直進安定性を言葉少なに保証している。

ドイツ三強は、お互いにライバルを横目で見ながらも他を真似ない姿勢が共感できる。つまりオーソドックス派ならメルセデス・ベンツ Sクラス、軽快さを大事にするならBMW 7シリーズ。そしてその中間を行くのがアウディだと思う。

新型A8は若さがあるのに攻めが足りない!?保守的な印象を与えたポイントは?

ただし新型A8には(新型A7 Sportbackもだが)、かつてアウディが持っていた冷酷なまでの機械っぷりがなくなった。矢のような直進性や、大地に張り付くような駆動感だ。あの融通の利かない冷徹さが薄らいだのは少し寂しくもあり、同時に彼らが次のフェイズへ移行しようとしているのではないかと思えた。

また若さがあるのに、ルックスも少し保守的に過ぎると感じた。せっかく若さがあるのだから、新型A7 Sportbackのトランク版(ややこしい!)でよいのではないか。

特に上級パワーユニットである4リッターV8 TFSIの穏やかな出力特性は、こうした印象に拍車を掛けた。どこからでも豊潤なトルクと4WDのダッシュ力が快適な出足を実現し、そのままアクセルを踏み倒せばハイパーセダンの超高速巡航を可能にする。

しかしこれまで感じていたTFSIユニットの、そしてアウディ製V8ユニットのキレと凶暴性のあるブースト感やメリハリが薄い。これだと、もうジェイソン・ステイサムは乗ってくれないのではないだろうか?

冗談はともかく、このまったりとしたフィーリングがMHEVによって初速を補われたことによるものなのか、トルコンATである8速ティプトロニックのテイストによるものなのか、年々厳しさを増すエミッションコントロールによるものなのかはわからない。たぶん、全ての要素が入り交じっての結果だろう。もちろん3リッターV6との出力差は大きいのだが、これなら速度域が低い日本では、無理してV8ユニットを手に入れる必要はないのではないか?

新型A7 Sportbackと同じく、ダイナミックオールホイールステアリングを備えた新型A8の身のこなしは驚くほどに華麗だ。後部座席に乗っていても後輪操舵がアタマを揺さぶることなど皆無であり、シートをリクライニングさせてくつろげば、やや足下に狭さを感じつつもショーファードリブン度は抜群に高い。

新型A7 Sportbackと同じく、新型A8もかつてのアウディ味を脱却

量産車世界初と言われるレーザースキャナーをフロントに一基備え、合計23個に及ぶレーダーやカメラが導入されたACCのハンドルアシスト操作も、以前に増してその作動が滑らかになった。ちなみに2019年からは、このレーザースキャナーが路面状況をスキャンしてロールやピッチをコントロールする「AIアクティブサスペンション」が導入される。これは側面衝突が避けられない状況では車体を持ち上げ、一番強固なサイドシルを盾にして乗員を保護するのだという。

つまりADAS(自動運転)の時代が来れば新型A8は、ドライバーを雇わずしてパーソナルショーファーを可能とするわけだ。そしてアウディはこれを見越しているのではないかと思う。もし近未来にボクが新型A8を手に入れるだけの余裕があったなら、迷わずロングホイルベースを選ぶだろう。

テイストの統一という点では、新型A8も新型A7 Sportbackと同じくかつてのアウディ味を脱却している。そして思うのは、これが来るEV時代への序章であり過渡的状況なのだろう、ということである。

[Text:山田 弘樹/Photo:小林 岳夫]

主要スペック

主要スペック

車種

A7 Sportback

A8

全長×全幅×全高

4970×1910×1415mm

5170×1945×1470mm

ホイールベース

2925mm

3000mm

車両重量

1900kg

2040kg

乗車定員

5人

エンジン種類

V型6気筒 DOHC インタークーラー付ターボ

排気量

2994cc

エンジン最高出力

250kW(340ps)/5200-6400rpm

250kW(340ps)/5000-6400rpm

エンジン最大トルク

500N・m(51.0kgm)/1370-4500rpm

駆動方式

quattro(4WD)

トランスミッション

電子制御7速Sトロニックトランスミッション

電子制御8速ATトランスミッション

JC08モード燃費

12.3km/L

10.5km/L

価格(消費税込)

1161万円

1140万円

アウディ/A7スポーツバック
アウディ A7スポーツバックカタログを見る
新車価格:
880万円1,213万円
中古価格:
99.5万円937.9万円
アウディ/A8
アウディ A8カタログを見る
新車価格:
1,214万円1,958万円
中古価格:
71.6万円1,427.2万円
前へ 1 2

この記事の画像ギャラリーはこちら

  すべての画像を見る >

【PR】MOTAおすすめコンテンツ

山田 弘樹
筆者山田 弘樹

自動車雑誌編集者としてキャリアをスタート。輸入車雑誌 副編集長、アルファ・ロメオ専門誌編集長等を経て、フリーランスのモータージャーナリストに。レース参戦なども積極的に行い、走りに対する評価に定評がある。AJAJ会員。カーオブザイヤー選考委員。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

MOTA編集方針

「車好きのみんなが見ているメルマガ」やSNSもやってます!
カー用品・カスタムパーツ

愛車の売却を、もっと楽に!もっと高く!

  • 一括査定はたくさんの買取店からの電話が面倒?

    これまでの一括査定は、たくさんの買取店からの電話が面倒でした。MOTA車買取なら、最大20社の査定額をwebで簡単比較。やり取りするのは査定額上位の3社だけ。車の査定が楽に完結する仕組みです。

  • 一括査定は本当に高く売れるの?

    これまでは、買取店に会わないと査定額がわからず、比較がしづらい仕組みでした。MOTA車買取は、申込翌日18時に最大20社を簡単比較。加えて、買取店は査定額上位3社に選ばれるために競い合うから、どうしても高く売れてしまいます。

新車・中古車を検討の方へ

人気記事ランキング
最新 週間 月間

新着記事

新着 ニュース 新型車 比較 How To
話題の業界トピックス・注目コンテンツ

おすすめの関連記事

アウディ A7スポーツバックの最新自動車ニュース/記事

アウディのカタログ情報 アウディ A7スポーツバックのカタログ情報 アウディの中古車検索 アウディ A7スポーツバックの中古車検索 アウディの記事一覧 アウディ A7スポーツバックの記事一覧 アウディのニュース一覧 アウディ A7スポーツバックのニュース一覧

この記事にコメントする

コメントを受け付けました

コメントしたことをツイートする

しばらくしたのちに掲載されます。内容によっては掲載されない場合もあります。
もし、投稿したコメントを削除したい場合は、
該当するコメントの右上に通報ボタンがありますので、
通報よりその旨をお伝えください。

閉じる