テスラモーターズ モデルS 量産型EVセダン試乗レポート/石井昌道(1/3)
- 筆者: 石井 昌道
現実的範囲内に収まらない存在
EVメーカーとして2002年にアメリカ・シリコンバレーで設立されたテスラ。
EVは、既存の自動車メーカー以外が参入できるチャンスとあって、他にも数多のベンチャー企業が立ち上がったが、たいていは軽自動車程度のシティコミューターで展開してきた。
EVの課題である航続距離の短さや、高コストなバッテリーのことを考えれば、それは至極真っ当な選択だろう。街中専用なら低速メインなので電費が良く、距離もそれほど求められない。車両価格もなんとか現実的な範囲に収められるからだ。
だがテスラが最初に市販したのは2008年に発売されたロードスターで、ロータス・エリーゼ用のプラットフォームを利用したEVスポーツカーだった。
ベンチャー企業からメジャーな自動車メーカーへと飛躍させる足がかり
先進的なEVとプリミティブなスポーツカーの融合というミスマッチ感覚が異彩を放ち、「じつはEVは速い」ということを証明してもくれたが、車両価格は一千万円級と高価。
あまり多くの販売台数は期待できそうにもなく、“その変化球狙いで会社経営を軌道にのせていくことができるのだろうか?”と懐疑的に見る向きも少なくはなかった。
ところが、シティコミューター系の新興EVメーカーが泡沫のようにバタバタと消えていくなかで、テスラはダイムラーやトヨタの出資を受けて共同プロジェクトを推し進めるなど次第に存在感を増していき、ついには野心的な第2弾商品の発売へこぎ着けた。
それが「モデルS」だ。
今度の「モデルS」は、BMW5シリーズやメルセデス・ベンツEクラスなどをライバルとするEVのプレミアム・セダンで、マニアックなロードスターに比べれば需要が見込めるカテゴリーだ。
サンフランシスコ郊外に新たな工場を立ち上げて年間2万台の量産体制も整えた。そして車両価格は5万ドル以下から(約430万円)からと、従来の半額程度に抑え、ライバルと比較しても同等レベル。
テスラをベンチャー企業からメジャーな自動車メーカーへと飛躍させる足がかりとして、十二分なポテンシャルを感じさせるものとなっている。
この記事にコメントする