【年末スペシャル編】2012年1月1日より導入、首都高速・阪神高速の距離別料金制はいいのか悪いのか!?(2/3)
- 筆者: 清水 草一
いつまでも借金が返せない!
もうひとつは、借金の返済だ。距離別料金導入で実質値上げを行えば、いずれは料金収入が1.5倍程度まで増えて、民営化の際、法律で決められた「45年以内の借金完済」が可能になるはずだった。逆に言うと、そうしなければ借金の完済はムリだ。
つまり、値上げにならない今回の料金では、法律通りの借金返済は不可能で、返済期間を延長するか、あるいは税金を投入するしかない。
また、今後年々増していくはずの維持補修費を増額する余裕も生まれず、建設から40年以上経過している古い部分から、廃墟化していく可能性もある。 まぁこれはかなり先の話だから、いま実感するのは難しいだろうが、いわゆる「ツケを子孫に回す」形にはなってしまう。
首都圏高速道路ネットワークの重要キーワードは「圏央道」と「外環道」
さらにもうひとつの問題点。それは、今回の料金制は、首都圏全体の高速道路網をまったく考えていないという点だ。具体的には、外環道と圏央道との料金バランスである。
今回の料金制度では、長距離が大幅に安くなる。さいたま見沼から幸浦まで85キロを利用しても900円(12月末までは1700円)。同じ距離をNEXCOの高速道路で利用すれば2100円なのだから、いかに安いかわかるだろう。
これでは、外環道や圏央道が完成しても、都心のど真ん中を首都高で突っ切った方が安くなってしまう。
みなさんは、外環道や圏央道の開通などまだ先、と思っているかもしれない。しかし意外にそうでもない。
圏央道は、2014年度中には大部分の区間が開通する予定だ。あとわずか3年である。
外環道も、千葉区間(三郷―市川間)は2015年度開通予定。東京区間(大泉―世田谷間)も、ついに政府の予算が付き、2020年中の開通が目標となった。
せっかくこれらの環状高速が開通しても、首都高を突っ切った方が安いのでは、コスト命の物流トラックの多くはそちらを通る。馬鹿な話じゃないか!
今回の距離別料金制には、そういった広い視野がまったく欠けているのである。
いや、広い視野どころか、目の前の現実すら見えていない。
今回の料金では、「混んでいる都心環状線(C1)を迂回して、すいている中央環状線(C2)を利用すれば100円割り引く」という制度が盛り込まれている。
これは、ふだん首都高を使っている人なら、「ちゃんちゃらおかしい」と思うだろう。なぜなら、現状すでに、C1よりもC2の方がかえって混んでいることが多いくらいなのだから!
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