なぜ日本車だけウィンカーレバーが右側なのか?【週刊 クルマ事件簿】

全世界的に左側通行が主流

日本は左側通行の国。歩行者は右側通行だが、クルマや鉄道は左側通行だ。

実は日本では、江戸時代までは歩行者が左側通行だった(当時は車輪付きの乗り物はほぼ存在せず、駕籠のみ)。それは、武士が刀を左側に差しているから。右側通行だと、すれ違う際に鞘同士が当たりやすい。刀の鞘が当たってしまうと斬り合いにもなる。

そうでなくても、人間の多くは右利きなので、相手を右側に迎えた方が咄嗟の対応がしやすい。よって、全世界的に左側通行が主流になった。

ナポレオンが右側通行を欧州の大陸側全体に広めた

クルマ(当時は馬車)も左側通行だった。理由は、御者が馬を打つ鞭を右手に持つからで、鞭が後ろの乗客に当たりづらくするために右側に座る。となると、対向車とすれ違う際、左側通行の方が便利。鉄道も、それに倣って左側通行に。

ところがフランスでは、ナポレオンが軍事的な理由で右側通行に変更し、それを欧州の大陸側全体に広めていった。ただし、鉄道だけはフランスも左側通行のまま(メトロは道路と同じ右側通行)。ドイツは鉄道も右側通行。イギリスはどちらも左側通行。このあたりから、右側通行対左側通行の世界的軋轢(?)が始まった。

明治になり、日本にも鉄道が導入されたが、イギリスの技術だったため左側通行になった。

日本では、鉄道だけでなく、馬車も左側通行に。理由は定かではないが、もともとあった武士の風習に加えて、明治政府の中心を担ったのが、幕末期からイギリスと近かった薩摩だったことがあるかもしれない。一方フランスは、幕府側に肩入れしていた。

日本車も輸出するクルマはISOに従って左側

ここでようやく、ウィンカーレバーの位置の話になる。

クルマが左側通行なら、ハンドル(ドライバー)は右側が望ましいのは、馬車のすれ違い当時から変わらない。

ハンドルが右だと、シフトレバーは左側。自然、ウィンカーレバーは空いている右側が便利になる。

そういう理由で、JIS(日本工業規格)では、「ウィンカーレバーは右側」と定められている。

ところが、ISO(国際標準化機構)は、ハンドル位置の左右にかかわらず、ウィンカーレバーは左側、ワイパーレバーは右側を強く推奨している。JIS規格とISO規格が完全にケンカしてしまっているのだ。

どちらも強制をしているわけではないが、日本では、国産車はJISに従ってウィンカーレバーを右側に付けている。しかし輸入車はISOに従いほぼすべて左側のまま。JIS規格には反するが、強制ではないのでそのまま売られており、結果として国内ではウィンカーレバーの位置が左右バラバラになった。ちなみに日本車も、輸出するクルマはISOに従って左側にウィンカーレバーを付けている。

面白いのは、左側通行のイギリスでも、ウィンカーレバーは左側というISOの基準が守られていることだ。なにせイギリスでは、実質的に右ハンドル車しか走れない。左ハンドル車は危険ということで保険料がハネ上がるからだ。ハンドル位置は重要だが、ウィンカーレバーの位置はそれほどでもないということか。

左側通行でありながら、左ハンドルも左右のウィンカーレバーもOKな日本は、意外と懐が深いとも言える。

“皇帝”でお馴染み、あのF1チャンピオンがボタン方式を提案

ところでクルマのウィンカーレバーは、「レバー方式でなくてはならない」と決められているわけでもないので、ボタン方式のクルマも存在する。現在、フェラーリのウィンカーは、ステアリング左右にあるボタンで操作する方式だ。

ボタン方式が採用されたのは458イタリアから。提案者はミハエル・シューマッハーだったと言われている。ボタン方式の方が、ステアリングから手を離さずに操作できるから、という理由だ。

私は昨年まで、その458イタリアに乗っていた。458イタリアは大変運転しやすいクルマだが、慣れるのに最も苦労したのは、このボタン式ウィンカーだった。

なにせ、生まれてこのかたウィンカーの操作と言えばレバー式。たまに左右間違えることもあるが、クルマではレバー式以外のウィンカーは使ったことがなかった。

確かにサーキットなら、ハンドルを持ち替えることはまずないが、一般道では、ハンドルを持ち替えて回すこともある。そんな時ボタン式だと、位置も左右も咄嗟にわからない。

あれを体験すると、「左右どっちでもいいから、ウィンカーは絶対レバー方式にしといてくれ!」と言いたくなる。

[レポート:清水草一]

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清水 草一
筆者清水 草一

1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。代表作『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高はなぜ渋滞するのか!?』などの著作で交通ジャーナリストとしても活動中。雑誌連載多数。日本文芸家協会会員。記事一覧を見る

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