ボルボ XC90 海外試乗レポート(2/3)

  • 筆者: 河村 康彦
  • カメラマン:ボルボ カーズ ジャパン
ボルボ XC90 海外試乗レポート
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ボルボ初の本格SUVモデル『XC90』にV型8気筒エンジンを搭載

ほんの数年の以前まで、ボルボというのは「我々には、3L以上の排気量も6気筒を超えるシリンダー数も必要ない」と明言をするメーカーだった。「そんな事はどんな書面にも残していない」と言ってもぼくには通用しない。だって、これはかつてボルボの要職に就くとあるエンジニアから、直接個人的に聞いたコメントなのだから!

「そうは言っても、時代は変わるものなのダ」というのがボルボの言い分だろう。確かに、3L級の6気筒エンジンまででは、いかに「ツインターボを付けました」と言ったところで世界最大の自動車需要地=アメリカでは、この御時世プレミアム・メーカーとして劣勢が否めない事は間違いない。

というわけで、今回彼らが持ち込んだXC90に積まれたのは「ライバルたちの狭間を狙って決定した」(担当エンジニア氏)という4.4Lなる排気量を備えたV型8気筒エンジン。しかも、ぼくら日本人にとって妙に親近感(?)が湧くのは、そんなエンジンを生産しているのがヤマハ発動機であるという事実。「世界で好評のXC90シリーズのうち、アメリカメインで販売されるV8エンジン車の生産規模は年間1,500台。この程度の台数では自社生産を行うよりも、アウトソーシングで行った方が効率的」というのがボルボの判断というわけだ。

ちなみに、そこに組み合わされるトランスミッションもやはり日本のアイシンAW製6速AT。エンジンもトランスミッションも単体の姿でスウェーデンに送られた後、そこで組み立てが行われる事になると言う。

「日本には今年の秋以降に導入の予定」というそんなボルボ初の8気筒モデルに、早速北極圏の雪と氷の上で乗ってみた。 ロワーグリルの周囲にクロームが配された程度と、遠目にはこれまでのモデルと殆ど見分けの付かない『V8』モデル。が、ひとたびエンジンを始動させるとその瞬間にこれまでのボルボ車では決して聞くことの無かった魅惑的な8気筒サウンドが奏でられ、誰もがその素性を知る事になる。

従来と全く同一というボディの中に十分なクラッシャブルゾーンを確保しながら横置き搭載するというボルボらしい要求が課されたため、バンク角は通常のV8エンジンが用いる90度ではなく60度という"特殊設計"を採用。が、実際に走り出してみればいかにも8気筒エンジンらしい緻密で滑らかな回転フィールに、違和感は全く覚えない。車両重量は2トン弱とそれ相応の重量級だが、315psと440Nmという出力はもちろんそんな重さをものともせず、実に軽々とスピードを増して行く。実際、0→100km/h加速は7.3秒でクリアし最高速は210km/hに達するというのだから、それはもはや「かなりの駿足」と言っても良いクルマであるわけだ。

ところで、XC90と言えば「ボルボ初の本格SUV」としても認知をされているモデル。それゆえに、このシリーズのフラッグシップ・モデルではその4WDシステムにも最新のメカが採用されている点も見逃せない。

ボルボが"インスタント・トラクション付きAWD"と呼ぶこのシステムは、従来のハルデックス・カップリングにさらに本格SUVに相応しいポテンシャルを加味したもの。あらかじめシステムの作動油圧を蓄えて置く事で、「通常のハルデックス式に対して後輪トルクの伝達レスポンスを50%改善した」というのがこの最新システムの売り物だ。

実際、このクルマのハンドリング感覚にはこれまでのXC90以上に自在な印象を受ける事が出来た。アクセルONと共に自在なコーナリング・フォームを描いて行けるというそのフットワークのポテンシャルは、期待と想像以上のものであったのだ。

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河村 康彦
筆者河村 康彦

1960年東京生まれ。工学院大学機械工学科卒。モーターファン(三栄書房)の編集者を経て、1985年よりフリーランスのモータージャーナリストとして活動を開始し、現在に至る。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー選考委員 などを歴任。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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