ボルボ XC90 試乗レポート
- 筆者: 石川 芳雄
- カメラマン:小宮岩男
VOLVOも参戦
世の中のメーカーはどこもそうだけれど、ボルボにとってアメリカは特に大きなマーケット。何しろ、ステーションワゴンがファミリーカー需要を受け持っていた時ボルボは大人気だったのだ。で、夢よ再びとSUVブーム沸き立つアメリカに向けて企画したのが、同社にとっては初の本格SUVとなるXC900。ワゴンベースのXC70も好評で、ボルボはこのXCシリーズをひとつのモデルレンジとして育てて行く考えだ。
アメリカ向けというと日本でどうなの? という声も出そうだけど、ボディサイズは全長4800mm×全幅1900mm×全高1780mmと確かに大きい。しかしこのくらいは大型SUVとしてはもはや普通でしょう。それに、XC90はフロントに直6エンジンを横置き搭載するという非常にユニークなプラットフォームを使っていて(ちなみにこれはS80/600やV70と同じ)、その利を生かしてエンジンルームを短く、キャビンを長く取っている。そして、この前後長に余裕のあるキャビンに3列7人分のシートスペースを確保したのだ。シートアレンジも極めて多才で、荷物と人数の振り分けが自由に出来るから、これはミニバンブームに沸き立つ日本でも注目を集めそう。
北欧デザインのSUV
スタイリングはご覧の通り。張り出したベルトラインと縦長テールランプなどでボルボらしさをキチンと出しているし、軽快なライト周りのデザインや、やや傾斜を強めたリヤウインドーなどでSUVにありがちな威圧感を抑えている。「精悍だがマッチョではなく、力強いが攻撃的ではない」とはボルボのデザインディレクター、ピーター・ホルバリーの言葉だが、お世辞抜きにそのコンセプトが具現化されていると思った。
インパネは厚いダッシュボードの下に、グレーのセンターコンソールがつながるT字型。センターパネルがドライバー側に向いていない左右対称のまったく新しいデザインだ。インテリアは木目の使い方が控えめで、各部の素材で質感を表現している感じ。この辺がいかにも北欧調だ。
ボルボならではのSUV
さて、注目のシート機能だが、フロントシートはゆとりのサイズでソファ的に快適。セカンドシートは3分割になっており、左右はこれまたゆったりサイズで安楽だが、センターは小振りで大人が使うにはちょっとタイト。しかしこのセンターシートにはチャイルドシートとなる仕掛けが組み込まれている。しかも、フロントシートの間にあるフロアコンソールを取り外して最前位置までスライドさせると、子供席と運転席との距離感を近く出来る。シートベルトで固定されていれば前に背もたれなどの衝突物が無い中央席が最も安全だし、何よりこうした「専用席」の設定は子供が喜ぶ。この辺の考え方はいかにもボルボらしい。
サードシートは、セカンドを最後位置にするとさすがに足元空間が狭い。ただし2列目を2ノッチくらい前に出せば実用に耐える。そして、座ってしまえばシートサイズやクッションはタップリとしているし、着座位置が前からひな壇式に高くなっているので閉塞感も少ない。もちろん折畳みも可能。座面が後方にスライドして荷室の床下に収納され、次に背もたれを前倒しすると完璧にフラットなラゲッジスペースとなる。その際のアレンジのしやすさ、荷物収納力の大きさは、さすがワゴン造りに実績のあるボルボだ。
走りも本格派
走りもボルボらしく重厚で快適。コーナーでのロールなど姿勢変化を抑えるため、足回りはやや固いセットになっているが、路面の継ぎ目でコツコツと来る衝撃も角が取れたマイルドなものとなっていて不快さはまったく無い。それにカーブで頑張ってもグラリとした唐突なロールが起きないので、けっこうスポーティーにも走れてしまう。
エンジンは2500ccの直5ライトプレッシャーターボ(2.5T)と、2900ccの直6ハイプレッシャーターボ(T-6)の2種類。ミッションは前者が5速、後者が4速で、ともにマニュアルモードのギアトロニックを備える。高速道路をガンガン行くような使い方ならパワフルなT-6だが、望外に良かったのが2.5T。5速ミッションで1速を深く取り、十分軽快なスタートダッシュを得ている。
4駆システムはスウェーデンのハルデックス・カップリングを使ったオンデマンド式。つまりフロントタイヤが滑った時にのみ後輪にトルクを伝えるのだが、ハルデックスは反応速度が抜群に早いので、スリップ感はまるで無い。それに片側のタイヤが滑り出したような場合も、TRACSというトラクションコントロールシステムが滑ったタイヤにブレーキをかけて駆動力抜けを防ぐので、悪路走破性もけっこう高い。これは冬に厳寒のスウェーデンで確認済みだ。
もちろん安全性能に関して定評のあるボルボらしく、その方面も充実。背の高いクルマなので特にロールオーバー(転倒)を予防するスタビリティシステムを採用したのがポイントだ。ロール加速度を計るセンサーを持っていて、転倒しそうな領域に入る前に各輪に個別にブレーキを掛け、車体をアンダーステア方向に振るというもの。これもテストしたが、確かに有効だった。
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