XC40のデザインモチーフは”ブルドッグ”!?|デザイン部門統括が語る”ボルボ デザイン”の今
- 筆者: 遠藤 イヅル
- カメラマン:オートックワン 編集部/ボルボ・カー・ジャパン
日本デビューを果たした“ボルボ XCシリーズの末弟”XC40
現在、世界のクルマ販売の主流は”SUV”にあると言っても過言ではないと思います。5ドアハッチバックの背を高くしたようなSUVは、ハイトを生かしたユーティリティの高さと、本格的なクロカン四駆ほどのハードなイメージもなく都会でもスマートに乗れる洗練された内外装を持ち、ハンドリングもスポーティで背の高さを感じさせません。平日の通勤から週末のドライブやキャンプなど、あらゆるシーンをアクティブに過ごせます。SUVを買ったら“何かが始まりそう!というワクワク感もいいですよね。
そのため世界の各メーカーは次々と様々なサイズのSUVモデルを発売しており、SUVのフルライン化が進められています。スウェーデンのボルボは、高い品質と北欧モダンデザインを備えたSUV、ラージサイズのXC90とミドルサイズのXC60で世界のプレミアムSUVを牽引してきました。
そして2017年、ボルボはコンパクトSUVの市場に満を持してプレミアムモデル「XC40」を投入しました。コンパクトSUV市場は、日本では日産 ジュークやトヨタ C-HR、ホンダ ヴェゼル、マツダ CX-3などが、世界のメーカーではBMW X1/X2、メルセデス・ベンツ GLA、ミニ クロスオーバーなどがしのぎを削る新たな激戦区なのはご存知の通りです。
そのXC40が2018年3月28日にいよいよ日本で正式発表されました。
■参考:ノリにノッてるボルボから、売れ筋ド真ん中のコンパクトSUVが登場!|ボルボ XC40 発表会レポート
発表に合わせてボルボのエクステリア統括デザイナーであるマクシミリアン・ミッソーニ氏も来日。発表会の翌日にはミッソーニ氏による「ボルボ・デザインセミナー」がボルボ・カー 虎ノ門(東京都港区)で開催され、ボルボのデザイン戦略、XC40のデザインのヒミツなどがカジュアルで和気あいあいとした雰囲気の中で語られました。
ミッソーニ氏はボルボのエクステリアデザイン統括デザイナー
オーストリア人のマクシミリアン・ミッソーニ氏は、2014年よりボルボ・カー・グループのエクステリアデザイン部門バイスプレジデントを務め、現在は新型車のコンセプト開発、ボルボおよびポールスターのエクステリアのデザイン統括業務を幅広く担当しています。バイスプレジデントとは日本では本部長クラス。そう、かなり偉い方なのです。年齢はなんと30代。若いのに素晴らしい!
かつてはフォルクスワーゲンのデザイナーで、その時代の代表作はディーゼル・プラグインハイブリッドで500台のみ量産された「XL1」。そう、流麗なボディをまとったあの「1Lカー(1リッターで100km走れるクルマ)」です。
ちなみにミッソーニ氏が好きなクルマは「シトロエン SM」。なるほど!
リアが絞られてリアタイヤにスパッツがあり、流れるようなクーペスタイルはXL1とSMで共通していますね!
まずミッソーニ氏はボルボXC90とXC60がアメリカで「トラック&SUV・オブ・ザ・イヤー」を、日本でもXC60が「2017-2018日本カー・オブ・ザ・イヤー」を、XC40が「欧州カー・オブ・ザ・イヤー」に輝くなど各エリアで様々な賞を受賞していることに触れ、また上海、カリフォルニア、イエテボリにあるボルボのデザインセンターについて紹介。イエテボリのデザインスタジオには270名のデザイナーがいると教えてくれました。
そして近年ボルボは1960年代の名車「P1800」にインスピレーションを受け、とてもモダンな3つのコンセプトカー(Concept Coupe/2013年、ConceptXC、Concept Estate/2014年)を製作。これらをデザインのベースとしたXCシリーズの各モデル、XC90、XC60、XC40のデザインについて語られました。
スカンジナビアの海岸に流れ着く「流木」のイメージをインテリアに採用
まずXC60のエクステリアでは、“クリア、クリーン&ピュア”をデザインランゲージとして重要視し、不要なデザイン要素を「そぎ落として付け加えない」ことと、前輪とフロントウインドウ(ダッシュボード)の間隔が見せる素晴らしいプロポーション、リアセクションで見られるリアランプ・リアガラスに囲まれた「インナーロッキング」されたようなパネルの造形がキーファクターとのこと。インナーロッキングデザインは安定感や安全性の高さも意味しています。ヘッドライトには最近のボルボでおなじみの北欧神話にヒントを得ている「トールハンマー」が採用されています。
インテリアではテーマを“シンプル&クリア”とし、こちらも最小限のアプローチ=ミニマリズムをテーマに、彫刻的でシンプルな内装が目指されています。センターコンソールにボタンが8つしかないのは、その表れと言えるでしょう。また、北欧を象徴する素材として、海岸に流れ着いて打ち上げられるという「ドリフトウッド=流木」のイメージを取り入れています。
続いてはXC40のデザインについて。
一般的には自動車メーカーでは印象を共有することが多い中、ボルボはXC40に関して「XC90、XC60のデザインの流れを組んだスケールダウンバージョンにしなかった」とミッソーニ氏は語りました。
各モデルの性格を象徴する、サイドに走るキャラクターラインはXC90はストレートなラインでエレガント、XC60では風の流れを感じさせ、XC40は “プロダクトデザイン”やSF的なイメージを表現。タフで力強いロボットからインスピレーションを得ているとのこと。XC90、60、40ではサイドウインドウ下端のナナメ線の始点や角度が大きく違うこともポイントです。
XC40は「美しくないけどみんな大好き」なブルドッグがデザインモチーフ!
「XC40では感情移入がしやすいフェイスを採用しました。」とミッソーニ氏は話しました。例えばXC90は威風堂々としたライオンがイメージされました。一方、XC40での親しみやすさをもたらすためのデザインモチーフは、なんとブルドッグだったそうです。
「ブルドッグは、“ビューティフル”で“プリティ”ではありません。しかし、キャラクターがあり、ストロングインプレッションをもたせます。強い自信を感じさせます。」
確かに言われてみると、短いフロントオーバーハングや逆反りのグリルはブルドッグぽい!しかもブルドッグはブルドッグでも「ブリティッシュブルドッグ」というこだわり!
XC40のインテリアは、XC60と同様にセンターコンソールと左右のエアベントがなす「3つの島」というクリーンでモダンなデザインコンセプトを持っており、XC40がボルボのSUVであることとXCシリーズであることを強く意識させるほか、ドア下部のスピーカーを無くしてドアポケットの容量を増やす工夫などで収納を多めに、またスマホなどすべてのものに置場を設け、しかもそれらはすべて手に届く範囲になるべく隠してスッキリ収納する「スマートストレージ」が徹底していることも大きな特長です。
この「置き場を多くする」というデザインはXC40を使用するアーバンなコンパクトSUVユーザー層へのリサーチによって得られたアイデアなのだとか。
インテリアの注目は「フエルト素材」
XC40のインテリアで注目される部位は多いのですが、個人的に「これはいい!」と思ったのが、一部グレードに採用されたドアの内張りやセンターコンソール下部に貼られる「濃いオレンジ色のフエルト素材」でした。レトロな印象ももたせつつ、モダンな家具のような印象も与えます。なんて大胆な素材の選び方!
ミッソーニ氏も、コンセプトカーからヒントを得たこのフエルト素材採用はインテリアの肝という認識で、このデザインセミナーでも紹介をしてくれました。「最近で他の車にフエルト素材が使われたことはありますか?」と聞いたところ、「思い出せる範囲では、無いと思う」とのお答え。メーカーが新車時点で内装に貼って生産しているクルマは、僕も確かに記憶がありません。
またXC40のベーシックグレード(本国では“キネティック”、日本ではグレード名がつかない“XC40”)では、ダッシュボードの助手席前にあるプラスチックパネルにも遊び心が取り入れられています。それはなんと「イエテボリの地図を簡易的な3Dグラフィックにした」“City Map”のパネルデザイン。
中間グレードの”モメンタム”は「アーバングリッド・アルミニウムパネル」、上級グレード”インスクリプション”は「ドリフトウッド」、スポーティグレード”R−Design”では「カッティング・エッジ・アルミニウムパネル」が採用されるこの部位は、ベーシックグレードでは単なる樹脂パネルになるのですが、これにちょっとしたクリエイティブなアイデアを加えることで、“興味深いデザイン”に変化させ、味気ない雰囲気にしないことに成功しています。
XC40は若々しくフレッシュなイメージを持つだけに、インテリアもポップで色々なアイデアに溢れていますが、それが決してチープに見えたりせず、ボルボらしく高品質で密度の濃いデザインになっているのが特長と言えます。
シンプルなのに高い質感、適度なサイズ・・・XC40は間違いなく売れる!
シンプルで洗練された飽きのこない北欧デザインに、デザイン統括をするミッソーニ氏が語るように「SF的」「ロボット的」「ブルドッグ的」な愛嬌をさらにプラス、ボルボらしい安全性に遊び心まで備えたXC40。P1800やかつての「四角いボルボ」の印象も含めたというボルボらしい外観も魅力的です。
インテリアも「ああ僕(私)はいいクルマを買った!」と思わず唸る高い質感を持ちます。街中でも乗りやすい適度なサイズで、室内も広く使い勝手にも優れているという全方位で点数の高い万能選手です。
国内ではたくさんのコンパクトSUVが販売されていますが、日本車、輸入車という枠が薄れてきた今、XC40はこの市場の台風の目になるヨカンがします。これは売れる…!そう感じさせるに十分なモデルでした。
上位モデルも魅力的ですが、XC40らしさがより詰まったベーシックモデルに乗るのもツウなクルマ選びだと思います!
[Text:遠藤 イヅル/Photo:オートックワン 編集部/ボルボ・カー・ジャパン]
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