VW 新型ゴルフGTI[GOLF7] 試乗レポート/今井優杏(3/3)
- 筆者: 今井 優杏
- カメラマン:和田清志・島村栄二
あまりに優秀“すぎる”DCC
さて、これほどまでに革新的な新型ゴルフGTIだが、試乗してみると驚くほどコンフォート方向へ振られている事に驚いた。走り心地さえもしっかりと、日常ユースまでをもカバーしているのだ。
エンジンは2.0リッターのターボチャージャー付き直噴エンジンで、最大出力220ps、最大トルク350Nm。数字で見ると勇ましいが、そのパワーをきっちりと制御下に置いている。
ドライビング・プロファイル機能、いわゆるドライブモードは通常4つで、新型ゴルフGTIには第二世代となるアダプティブシャシーコントロール“DCC”が備えられているが、このDCC仕様になるとさらにエコ・スポーツ・ノーマル・インディビデュアル・コンフォートという5つの走行モードが選べる。
これはナビ画面にて選択可能なのだが(だから走行中にチョチョっと変更するのはけっこう難しい)、DCCによるサスペンションの減衰はもちろん、電動パワステ特性、エンジン応答性、DSGのシフトチェンジポイントなど、その制御ポイントは多岐にわたり、それぞれに応じた走行モードが瞬時に与えられるというもの。
このDCC、あまりに優秀すぎるがゆえにスポーツモードを選んでもしっかり安定志向のチューニングとなっていた。つまり、積極的に責めてもクルマ側が運転をサポートしてくれるということだ。
獰猛さは無いものの、日常使いで頼りになる相棒
サーキット走行で体感したのは、電子デファレンシャルロック“XDS”の進化版“XDS+”。
これはブレーキをかけていない走行状態すべてにおいて、コーナリング中の内輪ブレーキ圧を調整するもので、いわゆるトルクベクタリングのような作用をもたらすから、とにかくタイヤが積極的にコーナーの中へ中へと入っていき、運転がラクでしょうがない。
ステアリングも舵角をアシストする機能がついているために激しく右へ左へ切り倒さなくてもいいし、こちらもラク。一番驚いたのは市街地でこのスポーツモードを選択した際のエンジン回転数の低さと、そのために静粛性が非常に高く保たれるということ。さすがにサーキットではアクセルペダルを踏みまくるためにそうもいかないが、街中では安定して2,000回転以下でどんどんシフトアップしていくDSGの底力を見た気がした。
さらにエコモードなんて選んじゃったら市街地ではなんと1,500回転あたりでシフトアップしていくし、そしてそれに付随するエンジンのノック音や振動は感じさせないのだから、やはりTSI+DSGの熟成とダウンサイザーの先駆者はスゴいと感激した。ただし、エコモードは他に類を見ないくらいの本気エコモードなので、とにかく加速しない。ひたすら“のぺ~”っとしているのであった。
まるで高級車のようなGTIに、ギュンギュン乗りたい派はいささかの物足りなさを感じるかもしれないが、日常の相棒としては頼りになる存在であることは間違いない。
新型ゴルフGTIの魅力はあらゆるニーズに応えるレンジ、守備範囲の広さ・懐の深さ。家族全員で違った走行モードで遊べる、奥行きにあると思う。
[レポート:今井優杏]
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