トヨタ クラウン 試乗レポート

  • 筆者: 松下 宏
  • カメラマン:小平寛
トヨタ クラウン 試乗レポート
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ユーザーの若返りを図る

クラウンが現行モデルに切り替わったのは2003年12月。ゼロ・クラウンというキャッチフレーズで登場したのは、ゼロベースから発想して従来のクラウンから大きく変わった新型車になったからだ。クルマの土台となるプラットホームを全面的に新しくし、搭載エンジンを直列6気筒からV型6気筒に変更、サスペンションも新しくしただけに、ゼロ・クラウンと呼ぶのも過言ではない。

クラウンというとオジサン向けのクルマというイメージが強くなっていて、実際のところ最近のクラウンユーザーの平均年齢は60歳を超えるくらいにまでなっていたという。それを引き下げたいというのがゼロ・クラウンを開発するときのテーマで、結果的に成功を収めたとのこと。特にアスリート系を中心に40代のユーザーが増えているそうだ。

トヨタでは今年から新しい高級車ブランドのレクサスを立ち上げただけに、従来からのトヨタブランドの頂点に立つクラウンが改めて注目されることになる。

ゼロ・クラウンはいろいろ面で熟成

デビューから2年目のマイナーチェンジで、ゼロ・クラウンは内外装や装備など、いろいろ面で熟成が進められた。

外観デザインは前後のライト回りの変更が中心だ。ロイヤル系はスモーク調塗装を施したヘッドランプ、透明感と奥行きのあるリヤコンビネーションランプを採用するとともに、精緻さを強調したフロントグリルを採用することなどによって上級感・存在感を高めている。アスリート系はフロントバンパーを変更したほか、グリルのデザインを変え、前後のランプをスモーク調のものにするなどして、精悍なイメージを強調した。

インテリア回りのデザインは基本的に従来と同じだが、アスリートGの本革シートとドアトリムは表皮に新たな加工が施されている。また内装色やメーターのデザインが一分変更されている。

装備関係ではG-BOOKアルファ対応のHDDナビ、プラズマクラスターエアコン、オートアラーム、レーンキーピングアシスト、キーインテグレーテッドウォッチなど、オプションも含めて各種の最新装備が採用された。

このクラスのエンジンとしては世界でも最強のエンジン

今回のマイナーチェンジではアスリートに新開発のV型6気筒3.5Lエンジンが搭載された。このエンジンはレクサスGSやISに搭載されたのと同じ直噴エンジンで、直噴と通常のポート噴射の2種類の燃料噴射をする仕組み。高回転域では直噴によって効率的にパワーを引き出し、低回転域では通常のボート噴射によって扱いやすさや排気ガス性能を高める工夫が凝らされている。

パワー&トルクの数字は232kW/377N・mだからパワーはpsに換算すると315psに達する。文字通り圧倒的な動力性能で、このクラスのエンジンとしては世界でも最強のエンジンといえる。それでいながら高い環境性能も確保したエンジンだ。

この3.5アスリートを走らせると本当にすごい。発進時にアクセルを踏み込むと体がシートに押しつけられるような強烈な加速Gを感じるし、高速クルージングからの追い越し加速なども6速ATがキックダウンして力強い加速フィールが得られる。豪快な走りのパフォーマンスが楽しめるのが3.5アスリートだ。

動力性能に合わせてブレーキ性能も向上している。サイズと仕様をアップさせたブレーキはしっかりした剛性感を伴って安心してふめるブレーキになっている。操縦安定性を確保しながら乗り心地を改善させた足回りと合わせて注目される。

高級車だが、若々しい

クラウンでは従来、ラグジュアリー志向の強いロイヤルサルーンGが中心にあって、スポーティ志向のアスリート系はやや陰に隠れたような存在だった。今回のマイナーチェンジでアスリートにだけ高い動力性能を持つV型6気筒3.5Lエンジンが搭載されたことで、アスリートがロイヤルサルーンと並ぶ存在になったように思う。

3.5アスリートにGパッケージを装着したモデルになると車両価格が500万円を超えるから、誰にでも簡単に買えるクルマではないが、単にラグジュアリーなイメージを持つだけでなく、高級車ならではの走りのパフォーマンスも備えたクルマとして、若々しいハートを持つ40代のユーザーなどに向いたクルマであると思う。

クラウンのイメージを大きく変え、ユーザーの年齢層を広げるクルマが今回の3.5アスリートだ。

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松下 宏
筆者松下 宏

自動車そのものはもとよりクルマに関連する経済的な話題に詳しい自動車評論家。新車、中古車を含めてユーザーサイドに立った的確な購入アドバイスを語ることで定評がある。記事一覧を見る

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