FRのハチロクで氷上走行をとことん楽しむ!「2017 iceGUARD5 PLUS & PROSPEC Winter Driving Park」試乗レポート(2/3)

FRのハチロクで氷上走行をとことん楽しむ!「2017 iceGUARD5 PLUS & PROSPEC Winter Driving Park」試乗レポート
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自由度の高いコース選択が可能

メインとなるフリー走行は、以下の3つのコースを参加者が自由に選んで走るという単純明快なメニューだ。

(1)スラローム&ブレーキングエリア

滑りやすい路面では如何にクルマが曲がれないか、止まれないかを体験するのが目的のコースエリア。

スラロームの主な走り方は2つ。1つめはオーソドックスに速さを追求する。具体的にはグリップの低いアイスバーンをなるべく避け、グリップの高い雪の上に極力タイヤを載せ、最短距離でパイロンをクリア。かつ左右の切り返しの際に、振り子の原理のように起きる挙動の乱れを抑えるのがポイントだ。

2つめは、コース幅を最大限に使ってクルマのスライドコントロールを楽しむこと。そのため(1)とは対照的に左右の切り返しの際の挙動の乱れを利用したりアクセル大きく開けたりと、クルマを派手にスライドさせる走り方をすることもある。

そしてブレーキングエリアは文字通り進入スピードに対し最短距離で止まることが目的。ABSの入ったブレーキ、ABSを極力介入させないブレーキ、スピードや路面状態によって制動距離がいかに変わるのか、などを体験するのが目的だ。

筆者も、前述したメニューにトライ。といっても、氷上に高性能スタッドレスタイヤ付のFRの86という、いわば“最高のオモチャ”を与えてもらったため、ほとんど車を振り回すことしか頭になく、主には写真のように(時にはサイドブレーキも使いながら)派手に86を振り回して楽しんだ。

(2)アクセルワークエリア

このエリアは、円を描く定常円、8の字、自由エリアの3つに区切られており、1回につき3分間を走行することが出来る。

ここで学ぶのは、「アクセル操作によって、クルマがどう動くのか?」ということ。FFであれば、アクセル一定からオンすればアンダーステアに、オフすれば曲がる方に、そしてFRであればその醍醐味であるパワーオーバーステア(要するにパワードリフト)や、リアから押し出されるようにラインを外れるプッシュアンダーステアなどが体験出来る。

こういった舞台は、86のようなFRにとってはフィギュアスケートのような美しいドリフトを披露する格好の場面ではあるのだが、路面状態にかなり左右されてしまうことも多い。

比較的グリップが高く、かつ雪が載った路面であればそれなりの形にすることが出来る。しかし、何度もクルマが走行することによって雪が無くなってしまい、氷が顔を出したり気温が上がってしまい氷が解けて水が浮いてしまったりと滑る路面になると、低ミュー路ではただでさえ非常に狭いアクセルワークのストライクゾーンがより一層狭くなり、リアをスライドさせるためのきっかけとしてサイドブレーキを使うといった小技を使うものの非常に難易度が高く、残念ながらお手上げに近い状態だった。

(3)ハンドリングエリア

1km近い全長の中に直線や単一コーナー、S字がバランスよくミックスされたコースエリア。いわば、前述までの練習の成果を試すためのコースだ。

(1)のスラローム&ブレーキングエリアと(2)のアクセルワークエリアを終えた筆者は、すでにノリノリになっているという危険な状況でこのハンドリングエリアへ。

そして案の定、1本目から雪壁に突っ込んだ挙句、スタックしてしまい救出いただく羽目に・・・。

だが、その後はクルマを振り回すことを考えながらもグリップの高い地面を選んだり、曲がり切れないと判断した際にはサイドブレーキを引いてリアを流して何とか曲げるなどの対処をしながら走行を楽しんだ。

また、氷上や雪道は刻々と路面状況が変わることもあり、同じアクセル開度で何度も走行しているにもかかわらずアクセルの開け過ぎでスピンしてしまうといった経験もあり、刻々と状況が変わる雪道では常に探るようなデリケートなアクセル操作をしなければならないことも再認識した。

また、3つのコースには共通する素晴らしさが2つ挙げられる。

講師陣へ気軽にドライビングテクニックを教わることが出来るメリット

1つめは、講師陣とフランクに交流できること。

筆者はアクセルワークエリアで片岡良宏氏にお褒めの言葉をいただいたり、ハンドリングエリアでは番場彬氏に同乗&逆同乗をしていただき、番場選手のハンドルをかなり手前から切ってユックリと車の向きを変えるドライビング(※)を目の当たりにすることが出来た。

(※ 車は急に止まれないし、曲がれないということで、こういった乗り方をすれば緊急回避的にサイドブレーキを引いて曲がる必要やケースも劇的に減らせ、低ミュー路も安全に走ることが出来る)

こういったことをすぐに講師陣と同じように実行することはもちろん難しいが、知識や経験として得るだけでも自分のプラスになることは間違いない。

多種多様なクルマが参加し、駆動毎にジャンル分けされる

そしてもう1つは、様々な意味でクルマのジャンルを問わず走れるということだ。

今回の参加車は、

(Aグループ/雪道に絶大な強さを持つ4WD)

インプレッサWRXやランサーエボリューションといったスバル、三菱関係、マツダCX-3、アウディTTなど

(Bグループ/雪道でも扱いやすいFF、トラクションの高さで意外と雪道で乗りやすい面があるミッドシップ)

メガーヌRS、ミニ、S660、MR-Sなど

(Cグループ/雪道では楽しいけど難しいFR)

86、BRZ、ロードスター、BMW、メルセデス・ベンツなど

駆動方式ごとに上記の3つのグループに分けられているのだが、Bグループにはプジョー208の標準グレード、ホンダ シャトル、スズキ アルトバン(!)といったごく普通のクルマがいたり、Cグループには今や20年落ちとなる名車W124型 メルセデス・ベンツ Eクラスワゴンや日下部氏が昨年の旧車を使ったレジェンドオブラリーというイベントのために仕立てたダイハツ シャルマン(なんと昭和52年式!)といったクルマの姿も見受けられた。

低ミュー路は些細なことが大きな挙動につながるだけに、冒頭で記載したようにスタッドレスタイヤを履けばごく普通のクルマでも楽しめる点や、人間で言えばお爺ちゃんのような年式の古い車でも氷上は滑り易いために駆動系への負担はなく、それこそ当たるのも雪壁だけであるため、スポーツ走行は躊躇してしまうような、そういったクルマでもチャレンジし易いのも魅力だ。

ちなみに、氷上のクルマへの負担の少なさは今年で3年落ちの筆者のトヨタ86でも同じ。

タイヤは減らないのはもちろん、暑い季節に定常円旋回など行えば油温はあっという間に130度の注意ゾーンに到達するが、後付けした温度計を見ると雪上もそうなのだが、氷上でもエンジンをそれほど回さないでもテールスライドが起きることもあり油温はピークで110度程度と、高速道路を元気に走ったのと同等で済むというのも嬉しい。

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永田 恵一
筆者永田 恵一

1979年生まれ。26歳の時に本サイトでも活躍する国沢光宏氏に弟子入り。3年間の修業期間後フリーランスのライターとして独立した。豊富なクルマの知識を武器に、自動車メディア業界には貴重な若手世代として活躍してきたが、気付けば中堅と呼ばれる年齢に突入中。愛車はGRヤリスと86、過去には日本自動車史上最初で最後と思われるV12エンジンを搭載した先代センチュリーを所有していたことも。記事一覧を見る

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