スズキ 新型スペーシアベースは乗用車ライクなデザインに車中泊やワーケーションなどもおすすめな広く使い勝手の良い荷室が魅力な新型軽商用車!【2022年】
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:和田 清志
スズキは2022年8月26日(金)、新型スペーシアベースを発売開始しました。新型スペーシアベースは、商用車の積載性や広い荷室空間、使い勝手のよさと、乗用車のデザインや快適性、 運転のしやすさを融合した新型軽商用車で、スペーシアの4つ目のモデルとして設定されました。
今回、そんな新型スペーシアベースについて、カーライフ・ジャーナリストの渡辺陽一郎さんが詳しく解説します。
スズキ スペーシアに4つ目のモデル、新型スペーシアベースが登場
軽自動車は薄利多売の商品です。今の軽自動車は、平均価格帯が140〜180万円に達しますが、メーカーや販売店の利益は少ないです。そのために1車種当たりの売れ行きを増やして、量産効果を向上させ、コスト低減を図る必要があります。
この対策として、軽自動車の各車種は、エンジンやプラットフォームを共通化しています。さらに全高が1600mmを超える軽自動車の多くは、1つの車種に標準ボディとカスタムなど、エアロパーツを装着した仕様も設定しています。
スズキで国内の販売台数が最も多いスペーシアは、標準ボディ、エアロパーツを装着するカスタム、SUV風のギアを設定しており、2022年8月26日には、4つ目の新型スペーシアベースを加えました。
4ナンバーの軽商用車となる新型スペーシアベースの外観・ボディサイズ
新型スペーシアベースのボディサイズは、全長3395mm×全幅1475mm×全高1800mm(XF)/1785mm(GF)、ホイールベース2460mmです。
その特徴は、軽乗用車ではなく、4ナンバー車として届け出される軽商用車になることです。外観を見ると、フロントマスクは、改良前のスペーシアカスタムに準じた形状で、ブラックに塗装されています。ホイールや外側のドアハンドル、上級のXFに装着されるルーフレールなどもブラックです。
さらに軽乗用車のスペーシアでは、荷室の左右にサイドウインドウが装着されますが、新型スペーシアベースでは、この部分がボディ同色のリヤクォーターパネルになって埋められています。タフに使えるツールとしての雰囲気を強め、車外から荷物を見えにくくする効果もあります。
新型スペーシアベースの内装┃使い勝手が高く、車中泊にもおすすめな荷室
新型スペーシアベースの内装・室内空間については、フロント側は軽乗用車のスペーシアに準じた形状です。フルオートエアコンは、全グレードに標準装着しました。ステアリングホイールと着座位置の上下調節機能は、上級のXFに標準装着されます。
注目されるのは荷室で、商用車なので後席のサイズが小さく、コンパクトに格納できます。格納された状態では、荷室長は1205mm、荷室幅は1245mm、荷室高が1220mmの空間になります。
荷室には汚れを落としやすい素材が使われ、シート生地にも撥水・防水加工を施しました。そのため屋外で使用したテントなども、気兼ねなく積めます。
さらに新型スペーシアベースは、荷室にセットするマルチボードを採用しました。これを上段にセットすると、荷室の床からマルチボードまでの高さが430mmになります。後席の背もたれを前側に倒してベンチのように腰掛けて、マルチボードをテーブルに使うと、デスクワークが行えます。マルチボードを中段に装着すると、床からの高さが290mmになり、リラックスして座れます。
さらに下段にセットすると165mmになり、この状態で前席を後方にリクライニングさせると、マルチボードと繋げられます。車内が広い空間になり、車中泊も行いやすいです。ディーラーオプションのリラックスクッションを上に被せると、表面のデコボコが抑えられ、さらに快適に就寝できます。この状態では、マルチボードの下側が荷物の収納スペースになり、就寝時でも荷物の整理がしやすいです。
またマルチボードは、車内の中央に立てて使うことも可能です。この状態では、荷室が前後に60:40の割合で分割されます。前側にペットを乗せて、間仕切りを隔てた後ろ側には、荷物を積むといった使い分けが可能です。
新型スペーシアベースの後席はエマージェンシー的要素! その分、豊富な収納設備多彩なアレンジができる荷室が魅力
このような機能が備わる代わりに、新型スペーシアベースの後席はとても狭いです。商用車の規格に適合させるには、後席よりも荷室の面積を広く確保する必要があるからです。新型スペーシアベースの後席は、軽乗用車のスペーシアに比べてサイズが小さく、足元空間も狭いため、大人4名が乗車するには厳しいです。チャイルドシートも後席側には装着できません。実質的に2人乗りです。
その代わり荷室として使う時の積載容量を拡大させ、マルチボードの採用により、車中泊や車内での作業など多彩な使い方を可能にしました。この用途をサポートするため、収納設備も豊富です。助手席の前側には、スペーシアの乗用仕様と同じくインパネアッパーボックスとグローブボックスが上下に並び、助手席の下側にも収納設備を装着しています。
新型スペーシアベースは、軽乗用車譲りの充実した装備を標準装着
新型スペーシアベースならではの装備としては、XFには天井に小物類の整理をしやすいオーバーヘッドシェルフが装着されます。先に述べたリヤクォーターパネルの内側にはリヤクォーターポケットが備わり、ディーラーオプションのカラーコードを使うと、ペットボトルなどを固定できます。助手席の背もたれを前側に倒すと、テーブルとして使えるなど、利便性を向上させるさまざまな工夫が見られます。
また新型スペーシアベースは、軽乗用車から派生しているので、軽商用車としては装備が充実しています。軽商用車では初採用の装備として、サイドエアバッグ、運転席と助手席のシートヒーター、ロールサンシェードなどがあります。衝突被害軽減ブレーキは全車に標準装着され、上級のXFには、車間距離を自動制御できるアダプティブクルーズコントロールも採用されています。
新型スペーシアベースの価格、おすすめグレード
エンジンはノーマルタイプのみが搭載され、乗用車のスペーシアに設定されているマイルドハイブリッドやターボは選べません。最高出力は52馬力(6500回転)、最大トルクは6.1kg-m(4000回転)とされ、軽自動車では平均的な動力性能です。燃費は良好で、2WDの場合、WLTCモードが21.2km/Lです。軽商用車の中では、燃費数値が最も優れている車種のひとつです。
グレードは前述の通り2種類が用意され、ベーシックなGF(2WDの価格は139万4800円)と、上級のXF(同154万7700円)があります。XFには、GFに採用されないアダプティブクルーズコントロール、スライドドアの電動開閉機能、プレミアムUV&IRカットガラス、オーバーヘッドシェルフ、ルーフレール、14インチアルミホイールなどを標準装着しました。
これらのXFで得られる装備を価格に換算すると、合計22万円に相当します。両グレードの価格差は15万2900円ですから、XFはGFに比べて7万円ほど価格が割安になっています。XFに装着される装備は、実用性の優れた内容が多いため、買い得グレードもXFです。多くのユーザーが欲しがる装備を採用したので、仮に数年後に手放す場合の売却額でもXFは有利になります。
そして新型スペーシアベースGFの価格は、2WDが139万4800円ですから、軽乗用車となるスペーシアハイブリッドGと同額です。スペーシアハイブリッドGにはマイルドハイブリッドが搭載され、カーテンエアバッグ、座り心地の優れた大きな後席、後席のスライド機能などが備わります。
一方、新型スペーシアベースGFは、前述の通り荷室が広いです。マルチボードが装着されて、車中泊なども含め、車内の使い勝手も多彩です。さらに軽乗用車のスペーシアは、標準ボディの場合、上級のハイブリッドXでもLEDヘッドランプやLEDフォグランプがオプション設定です。それが新型スペーシアベースでは、軽商用車ですが、LEDヘッドランプ/LEDフォグランプ/LEDポジションランプを全グレードに標準装着しました。
以上のように新型スペーシアベースは、軽商用車のカテゴリーを生かして広い荷室と多彩なシートアレンジを用意しており、なおかつ装備も充実しています。スペーシアの標準ボディやカスタムに負けない買い得で実用的な軽自動車です。
[筆者:渡辺 陽一郎 撮影:和田 清志]
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