[試乗]スズキの新型ソリオ フルハイブリッドは、これまでと何が違うの!? ライバルのトール/ルーミーとも徹底比較!【最新情報】(2/2)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:和田清志
ソリオ ”フル”ハイブリッドの特長をさらに際立たせるには、”アレ”が必要だ!
乗り心地はマイルドハイブリッドに比べて少し硬い。車両重量が40kg増加するのに応じて(それでも990kgと軽いが)、足まわりを変更したことが影響している。
ただし粗さはなく、低燃費指向のタイヤを履いたコンパクトカーでは納得できる水準だ。タイヤは15インチ(165/65R15)で、指定空気圧は前輪が250kPa、後輪が220kPaだから前輪は若干高めの設定になる。この乗り心地なら納得できる。
>>スズキ ソリオ ハイブリッド[JC08燃費32.0km/L] フォトギャラリー[画像100枚超]
一番の課題は燃費性能だろう。JC08モード燃費はフルハイブリッドのソリオ ハイブリッドが32km/L、マイルドハイブリッドが27.8km/Lだから差が小さく、価格差を燃料代の差額で取り戻すには約30万kmの走行を要する。
そうなるとフルハイブリッドには、燃費以外の付加価値が必要だ。進化した5速AGSのダイレクトな運転感覚はこれに含まれるが、これに加え自由に5速ギアを使いこなせるパドルシフトも追加して欲しい。そうするとスズキ式フルハイブリッドの特長がさらに際立つ。簡単にシフトダウンできる現状のLレンジも残した上で、パドルシフトを加えると使いやすいだろう。
CVTのパドルシフトによる疑似変速は、運転していてあまり楽しくないが、5速AGSは有段ギヤだから、実際にメリハリのある走りを楽しめるはずだ。
宿命のライバル、ソリオ vs トール/ルーミー4姉妹車を徹底的に比較してみたものの
ここで、冒頭で述べたダイハツトール/トヨタ ルーミー&タンク/スバル ジャスティとスズキ ソリオの比較も述べておこう。
結論をいえば、トール/ルーミー4姉妹車は、主に走行性能においてスズキ ソリオ(マイルド/フルハイブリッドの両方)と比べて明らかに見劣りする。
トール/ルーミー4姉妹車は3気筒の1リッターエンジンを搭載しており、特にノンターボモデルは動力性能が不足している。車両重量もソリオのマイルドハイブリッドに比べて120kgも重く、排気量は200cc少ないから当然だ。
いっぽうのトール/ルーミー ターボモデルは動力性能が1.5リッター相当に高まるが、2000回転付近で大きな共鳴音が生じる。
ソリオの成功を受け、急ピッチで開発されたトール/ルーミー4姉妹車
トール/ルーミー4姉妹車の開発がスタートしたのは2014年頃だという。同年1月に販売を開始したスズキ ハスラーが好調に売れて、2月には日産 デイズルークスと三菱 eKスペースも発売された。スズキ/ダイハツ/ホンダ/日産で軽自動車の販売合戦が激化。同年4月には新車販売されたクルマの45%が軽自動車になった(暦年でも軽比率が41%に達した)。
そして小型車ユーザーが次々と軽自動車に代替えすると、トヨタにとっては困る。そこでダウンサイジングの流れをコンパクトカーで食い止めるべく、トール/ルーミー4姉妹車を企画。折しもスズキでは、2011年に登場した先代ソリオが安定した販売を続けていた。
ただしトール/ルーミーの開発期間が約2年間とすれば、開発現場は多忙をきわめる。プラットフォームは2世代前の初代パッソ&ブーンから使われるタイプを補強した。もともと車両重量が900kg前後を想定して開発されたプラットフォームだから、背の高い1070~1100kgのボディを架装するには無理がある。試乗でもカーブを曲がる時に、ボディやサスペンション付近の歪みを感じた。走行安定性と乗り心地は限界にきている。
トール/ルーミー4姉妹車は今の日本車の状況を象徴している
今は多くの日本メーカーにとって、世界生産台数に占める国内の販売比率は20%を下まわる。その結果、国内向けの商品開発が滞り、2008年末のリーマンショック頃から、コンパクトカーでは内装や乗り心地など質の低下が著しくなった。
その一方で軽自動車に対する依存度が高まり、競争も激化して、この10年ほどの間に軽の商品力が大幅に高まった。軽自動車がコンパクトカーを販売面で駆逐するのは当然の成り行きだろう。
この経緯を踏まえると、トール/ルーミー4姉妹車は今の日本車の状況を象徴しているように感じる。
そして開発を行ったダイハツは、他メーカーと違って、国内の販売比率が61%と高い。今でも日本国内を中心とした唯一のメーカーだ。懸命に開発を行った軽自動車が好調に売れて、その影響で販売台数を下げたコンパクトカーのケアも大慌てで行わねばならない。
ダイハツの立場は、とても辛いと思う。
ソリオの仕上がりはライバルメーカーにとって脅威であり、良いお手本でもある
ただしこれはダイハツに限らない。軽への依存度を高めるいっぽうで、8年に渡り小型車ハイトワゴンの元祖ともいえるキューブをモデルチェンジ出来ずにいる日産なども同じ状況だ。もちろんスズキも、軽への高い依存度から脱却しようと、ソリオをはじめイグニスやバレーノなど新しい小型車を続々と国内に投入し、模索を続けている段階にある。
しかもスズキはこのソリオで、ひと足先に新しいプラットフォームを開発し、良い手本となっている。同様に、ライバルメーカーも一刻も早く新しいプラットフォームを開発し、軽に負けない魅力的な小型車を続々と登場させてくれば、市場もさらに活気付くことだろう。他社の今後の動きにも大いに期待したい。
[レポート:渡辺陽一郎/Photo:和田清志]
SUZUKI ”SOLIO BANDIT HYBRID”(ソリオ バンディット ハイブリッド) SV デュアルカメラブレーキサポート装着車[FF] 主要諸元
全長x全幅x全高:3710x1625x1745mm/ホイールベース:2480mm/車両重量:990kg/駆動方式:前輪駆動(FF)/乗車定員:5名/最小回転半径:4.8m/エンジン種類:直列4気筒 DOHC 16V ガソリンエンジン/総排気量:1242cc/エンジン最高出力:91ps(67kW)/6000rpm/エンジン最大トルク:12.0kg-m(118N・m)/4400rpm/駆動用モーター(MGU)種類:交流同期電動機/モーター最高出力:13.6ps(10kW)/3155-8000rpm/モーター最大トルク:3.1kg-m(30N・m)/1000-3185rpm/動力用主電池:リチウムイオン電池/動力用主電池容量:4.4Ah/トランスミッション:5AGS(5速オートギアシフト)/燃料消費率:32.0km/L[JC08モード燃費]/タイヤサイズ:165/65R15 81S/メーカー希望小売価格:2,106,000円[消費税込]
新型ソリオの納期は?
さて、新型ソリオの気になる納期だが、納期については、地域や色・機種によって異なるため、スズキではもともと公表していない。
地域によって変わってきてしまうとのことだが、購入時期によっても変わってくるので、ネットなどで購入したユーザーに聞くよりも、ご自身の住んでいる地域の販売店に直接問い合わせるのが確実と言えるだろう。
[2016/12/2初出/2017/3/29編集部追記]
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