急速に広がるメーカー間のOEM戦略/松下宏のコラム(1/4)
- 筆者: 松下 宏
メーカー間で広がるOEM供給
OEMとは「Original Equipment Manufacturer」の略だ。相手先ブランドによる製造を意味する言葉である。
家電業界では早くからOEMが行われていて、特定の家電の生産を得意とするメーカーにほかのメーカーが生産を依頼し、自社ブランドの商品として販売する方式が採用されてきた。
最近は自動車業界でもOEM供給が進み、特に自社で軽自動車を生産していない日産が、スズキや三菱から供給を受けて自社のネットワークで販売してきた。
開発負担なしでラインナップ強化
多くの販売台数が見込めない車種などは、増大傾向が強まる開発コストを取り戻すのが難しいケースも増えているが、OEM供給ならば直接的な開発コストを負担せずに済む。
OEM供給を受ける側のメリットとしては「自社で開発コストを負担することなく、商品ラインナップが拡大できること」だ。
OEM供給側のメリットとしては、「販売台数の増加によって、開発コストの回収が容易になること」である。
OEM供給はメーカーにとっては良い面が多く、両方がWin-Winの関係を築きやすいが、実はディーラーにとっては甚だ迷惑な話である。特に、OEM供給元のディーラーが迷惑をこうむる。
本当なら自社だけで売れるはずのクルマが、OEM供給によって他のメーカー系列ディーラーで販売されてしまうので、売り上げ減につながるからだ。場合によっては、値引きでの競合を迫られることにもなる。
あまりOEM供給が広がると、メーカーのアイデンティティが薄れることにもなりかねないし、ユーザーとしても同じクルマが違う名前で売られているというのは、そもそも分かりにくい。
OEM供給は、必ずしも良いことづくめではないのだ。どんな車種をどのような形でOEM供給するかについての考え方には、それぞれのメーカーごとに温度差がある。
次頁からは、個別メーカーごとにOEMの事例を見ていこう。
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