慶応義塾大学 清水浩教授インタビュー 第2弾(3/3)

  • 筆者: 森口 将之
  • カメラマン:オートックワン編集部
慶応義塾大学 清水浩教授インタビュー 第2弾
慶応義塾大学 清水浩教授 (左)清水浩教授/(右)森口将之氏 慶応義塾大学 清水浩教授 慶応義塾大学 清水浩教授 慶応義塾大学 清水浩教授 慶応義塾大学 清水浩教授 モータージャーナリスト 森口将之氏 (左)清水浩教授/(右)森口将之氏 慶応義塾大学 清水浩教授 慶応義塾大学 清水浩教授 Eliicaのプラットフォーム 画像ギャラリーはこちら

将来、EVの充電時間はガソリンの給油と変わらない程短縮する

慶応義塾大学 清水浩教授

質問:EVが航続距離を稼げるのは、どのような道をどういう速度で走った場合ですか。渋滞ではどの程度落ち込むのでしょうか。ライトやエアコン、カーナビなどを使った場合も気になりますが。(ホンダホンさん)

清水教授:街中と高速道路では、1㎞走行あたりの電力消費量はあまり変わりません。だからガソリン車に比べれば街中向けといえます。ただし消費を増やす抵抗の種類は違います。街中ではタイヤの転がり抵抗、高速では空気抵抗が主となるのです。

ライトやオーディオはほとんど電気を使いませんが、エアコンはパワーの5~10%を食ってしまいます。だからEVでは最近の住宅と同じように、断熱性にすぐれた構造にすることが大切です。

質問:急速充電では30分ほどで満充電になりますが、今後はガソリン車の給油時間ぐらいまで短縮できるようになるのでしょうか。(ホワイトさん)

リチウムイオン電池

清水教授:最初に紹介したSCiBなら、5分で90%、10分で100%充電が完了します。SCiBはマイナス極に従来のカーボンではなく、チタン酸化物を採用したことで、リチウムイオン電池の弱点だった熱暴走を防止し、超急速充電を可能としています。5分なら給油とさほど変わらないのではないでしょうか。

質問:充電設備はどのように増えていくのでしょうか。一般家庭の設備ができると、街中の施設はコストを考慮しても普及しないと思いますが。(ナカムラさん)

清水教授:家で充電すればじゅうぶんです。ただしどの充電方式が良いかは、最終的にはユーザーが選ぶことで、メーカーが決めることではありません。非接触充電の実験も進んでいますが、いくつか課題を残しているので、実用化への道のりはしばらく先でしょう。しかし最終的には自動充電が必須になるはずです。

質問:充電の手軽さ・充電環境の充実・航続距離の延長・バッテリー交換のコスト低減・バッテリー性能向上・車両価格の安さ・車種の充実。このなかでEVの普及にもっとも必要なことはどれだと考えますか。(ぺクスゥさん)

清水教授:シムドライブでアンケートを取ったところ、5人乗りで、満充電で300㎞走り、価格は200~250万円であれば、80%の人がEVを買うという結果が出てきました。だからこのなかでは、航続距離と車両価格が重要と考えています。シムドライブのEVはもちろんこの数字をクリアしたものになるはずです。

インタビューを終えて

(左)清水浩教授/(右)森口将之氏

途中、自らホワイトボードに書きながら、EVのことを説明してくれた清水教授。

なんだか10年前の大学時代の講義を思い出してしまう。印象的だったのは、EVが高価なのは、電池やバッテリーを作る際の資源の値段ではなく、そもそもバッテリーやモーター自体が手作りだからという回答に驚かされたことだ。

今後EV需要がますます高まり、ゆくゆくは大量生産されることになれば、手作りから機械生産へと移り、価格も今よりグッと下がるということも語っていた清水教授。この朗報に、やはりEV時代の本格到来は、そう遠くないという実感が湧いてきた。

中国やアメリカなどで採掘される電池作りに必要なたくさんの物質が次々と次世代電池を誕生させ、同時にクルマ自体の基本性能も向上の一途を辿るという好循環が生まれると清水教授は予測する。

つまりどれだけ我々の生活にEVという新世代の自動車がリアルに溶け込んでくるのか、今後の行方がますます楽しみになってきたインタビューであった。

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森口 将之
筆者森口 将之

1962年東京都生まれ。モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。自動車専門誌の編集部を経て1993年フリーに。各種雑誌、インターネット、ラジオなどのメディアで活動。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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