トヨタ アルファードはなぜミニバンの王者になれたのか!? その答えは着座位置の高さと徹底的にライバルを意識した設計にあった

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ファミリー層だけでなく各界のVIPまで愛用するまでに支持されているトヨタ アルファード。いわゆる高級ミニバンに属するモデルだが、じつはかつて高級ミニバンといえば日産 エルグランドという図式が出来上がっていた。ところが、遅れて登場したアルファードが今や王者に! 一体なぜアルファードはミニバンの王者になり得たのか!? 歴史を見るとアルファードは初代モデルから王者になりうる要素を備えていたのだ。

目次[開く][閉じる]
  1. 400万円はくだらないアルファードが好調なセールスを記録中
  2. エルグランド登場で市場は一変! トヨタも負けじと開発したのがアルファードだった
  3. アルファードはエルグランドより維持費の安いモデルも用意するほど本気だった
  4. アルファード人気の理由は着座位置の高さにあり! まさに勝者のクルマ

400万円はくだらないアルファードが好調なセールスを記録中

高級ミニバン市場において一強状態となっているトヨタ アルファード。現行モデルは2015年登場とモデル末期ながら、その人気は400万円超えの高額車にも関わらず、2021年1月〜3月の販売台数では3ヶ月連続で1万台を超えるほど、まったく衰えない。ここでは2002年登場の初代モデルからアルファードが高級ミニバンの王者に上り詰めるまでの道のりを振り返ってみた。

>>アルファードが前年比160%増とバカ売れ! その影でヴェルファイアは半分の台数しか売れないワケとは!?

エルグランド登場で市場は一変! トヨタも負けじと開発したのがアルファードだった

じつはトヨタはアルファードの前に1995年登場のグランビアというラージミニバンがあった。

グランビアは当時の欧州向けハイエースを乗用ミニバンとした、短いノーズの中にエンジンを搭載したFR構造となるモデルであった。1997年には初代エスティマの5ナンバーサイズ版にあたるルシーダ&エミーナを投入したのと同じように、グランビアを5ナンバーサイズとしたハイエースレジアスも加わった。

ド派手デザインと高級な車内で一躍人気となった初代エルグランド

しかし、1997年に日産が初代エルグランドをリリースすると、エルグランドは日本人好みの押し出しのあるフロントマスクやインテリアなどのゴージャスさを理由に大ヒットし、高級ミニバンというジャンルを開拓。

初代エルグランドの登場でグランビアは一気に失速し、1999年にグランビアに立派なグリルを付けたグランドハイエースと、ハイエースレジアスの兄弟車となるツーリングハイエースを加えるが、効果は焼け石に水で、初代エルグランドに完敗した。

>>エルグランドがなけりゃ今のアルファードはいなかった!【偉大なクルマたち】

アルファードはエルグランドより維持費の安いモデルも用意するほど本気だった

上記のような背景の中2002年5月にグランビアは後継車となる初代アルファードを投入。じつは初代アルファードは、2代目エルグランドと1日違いでフルモデルチェンジを行うほど、トヨタも日産の新型エルグランドをかなり意識をしたうえで登場したのだった。

2台のザックリとした成り立ちは、初代アルファードは2代目エスティマをベースとしたFF構造で2.4リッター直4と3リッターV6を搭載。対して2代目エルグランドはFR構造のまま3.5リッターV6のみと、高級ミニバンというジャンルは同じでも、ラインアップの違いは意外に大きかった。

構造も全く違った! アルファードのメリットは広い車内にあった

それぞれの良さとしては、初代アルファードはFF構造によりフロアが低いため、実質的に車内が広い。そして2代目エルグランドは厚みあるシートや大型モニターによるゴージャス感、といったものがあった。

しかし、登場時の2代目エルグランドには2.5リッター級エンジンがなかったため、2.4リッターエンジン搭載の初代アルファードと比べると初代エルグランドの価格は20万円ほど高く、燃費や自動車税も厳しいと、この点を大きな武器に初代アルファードの雪辱戦が始まったのだ。

一時はホンダも参入するほど大盛り上がりだった高級ミニバン市場

2004年にはホンダが2台に対抗するエリシオンをリリース。エリシオンは走りなどよさもあったのだが、押し出しに欠けるフロントマスクや3列目シートが座面のチップアップしかできなかったため、ラゲッジスペースを最大にした際の容量が小さいなどの弱点もあり、アルファードの牙城を崩すには至らず。

>>ホンダの高級ミニバン「エリシオン」の車内に注目! アルファードにはないどデカいモニターが特徴だった

そして2代目エルグランドも2004年に2.5リッターV6を追加し、価格も初代アルファードの2.4リッターと同等にしたのだが、時遅しというかこの頃には大勢が決まってしまっていた。

その後アルファードは2008年に2代目フルモデルチェンジされ、この際に兄弟車のヴェルファイアも追加した。今でこそ風前の灯のヴェルファイアだが、この頃はむしろアルファードよりも人気を集めたほどだった。

トヨタ勢の快進撃となっていたのに対しエルグランドはフルモデルチェンジが遅れ、2代目アルファード&ヴェルファイアとの差は広がってしまった。

アルファード人気の理由は着座位置の高さにあり! まさに勝者のクルマ

エルグランドも2010年に満を持して現行型3代目モデルとなり、FF化などもあり乗れば2代目アルファード&ヴェルファイアよりずっといいクルマだった。

しかし、現行エルグランドは着座位置が高くなく、アルファード&ヴェルファイアのような周りを見下ろす感じに欠けることも小さくない理由だったのか、現行エルグランドは伸び悩んでしまう。

その間にエリシオンは2013年に後継車の現行型5代目オデッセイにバトンタッチされ、まずますの成功を収めた。そしてアルファード&ヴェルファイアは2015年に3代目モデルに移行し、エルグランドに決定的な差を付けた。

さらにアルファード&ヴェルファイアは2017年にトドメとなるビッグマイナーチェンジを受け、完全な独走状態が続いているという状況である。

アルファード人気は海外に波及! 中国にはレクサス版も

現在アルファード&ヴェルファイアは海外でも人気で、アルファード&ヴェルファイアベースのレクサス LMが登場するほどとなっている。ハリアーが現代のマークIIとなっているのと同様に、アルファード&ヴェルファイアは「現代のクラウン」的な日本独自の高級車に成長している。

アルファード&ヴェルファイアの快進撃(というより今はアルファードだが)を見ていると、クラウンの行く末も心配になるが、グランビアの無念からここまで成長しただけに、次期モデルでは世界に通用する高級ミニバンとなることを期待したい。

【筆者:永田 恵一】

トヨタ/アルファード
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新車価格:
540万円872万円
中古価格:
29.7万円2,215.6万円

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永田 恵一
筆者永田 恵一

1979年生まれ。26歳の時に本サイトでも活躍する国沢光宏氏に弟子入り。3年間の修業期間後フリーランスのライターとして独立した。豊富なクルマの知識を武器に、自動車メディア業界には貴重な若手世代として活躍してきたが、気付けば中堅と呼ばれる年齢に突入中。愛車はGRヤリスと86、過去には日本自動車史上最初で最後と思われるV12エンジンを搭載した先代センチュリーを所有していたことも。記事一覧を見る

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