東京モーターショーが残した課題/河村康彦のコラム
- 筆者: 河村 康彦
- カメラマン:島村栄二/柳田由人
東京モーターショーが残した課題/河村康彦のコラム
東京モーターショーが13日間の会期を経て終了した。「総来場者数が2年前の前回に比べ半減」という見出しはすでにあちこちで目にした気はするが、61万余人という数は2年前の前回に比べると「43%強に過ぎない」というのだから、実際には“半減”どころの騒ぎではない。
しかし、そんな数字より問題なのは、その内容。ハッキリ言って、あの程度の中味の展示会であれば、それはもはや「料金を徴収する見せ物には値しない」と、個人的にはそのように感じてしまった。
もちろんそれは、単に「多くの輸入車がやって来なかった」という例の話題ばかりを取り上げての事だけではない。ごく一部に例外は存在したものの、多くの展示ブースから「自らも会員である“自工会”主催のイベントだから、仕方なくお付き合いで参加をするか・・・」と、どこかそんな香りが漂ってしまったというのが、ボクにそう感じさせた最大の要因だ。
中でも、業界最大手のトヨタ/レクサスのブースで、「ようこそいらっしゃいました」という歓迎の雰囲気が感じられなかったのは残念だった。
プレスデー初日に目にした限りでは、今回のショー全体での目玉出品車でもあるはずの「TOYOTA FT-86コンセプト」も「LEXUS LFA」も、まるで「通路に置き去りにされた」かのようなディスプレイ方法。
特に、建物の隅に追いやられるようにレイアウトされた後者の展示は、3,000万円を大きく超えると目されるスーパースポーツカーのお披露目の姿とは到底思えなかったほど。
なんでも、トヨタが今回のショーに掛けた予算額は前回の1/5だ1/6だというハナシも漏れ伝わってくるし、実際業績的には赤字を計上しているわけではあるけれど、それでも寂しい雰囲気が漂う祭事ほど、哀れでツマラナイものは無いと思うのだけれど・・・。
むろん、こうしたトヨタ・グループの話題はごく一例で、他の日本車メーカーのブースを巡っても何となく“大同小異”の雰囲気に包まれていた。
こんなご時勢だからこそ、わざわざ訪れてくれたお客さんというのはこれまでにも増して大切に扱うべき『VIP』であったはず。そんなお客さんたちが今回のショーを観てどう思い、果たして次回もまた訪れる気になってくれたか否かは、とても気になるポイントだ。
集中と選択の動きが世界的に加速する中、残念ながら日本のモーターショーがかつてのような「世界からの多数のワールド・プレミアを発表する場」にはもう戻る事はないだろう。
それを踏まえて、もはや次回以降の東京モーターショーが今までほどの展示面積を必要としないというのであれば、今後の会場は不便な幕張などではなく“真の東京”に移動すべきだ。また、海外メーカーへの便宜を考えるのであれば、フランクフルト・ショーに出展したアイテムを再展示するために高コストの“空輸”が必須となる同ショー直後というタイミングではなく、少なくとも航路での運搬が可能になる程度の時間的ゆとりを考えるという事などがあっても然るべきであるはずだと思う。
一方で、ホンダが2輪車と共通スペースで展示を行ったのは、「ホンダというのは、モビリティを2輪・4輪の双方から考えるメーカー」という事柄を再度アピールするきっかけになったと思えるし、今回は部品メーカーのブースがメイン・ホールに集約されたため、前述のLEXUS LFAに採用された各種アイテムの技術展示を実車に近い場所で見る事が出来た。
それは「あれを自動車メーカー主導で集約展示すれば、日本の最先端技術力を骨格とした“新しい見せ方”が可能になるのではないか?」と、今後の東京モーターショーの展示方法への新たなアイディアへのヒントを発見したような感じにもなったものだ。
とにかく、今回のイベントが“惨敗”に終わった事は真摯に認めた上で、その結果を糧にこれまでのやり方にはとらわれない新たな方法を考えないと、東京モーターショーは国際ショーとしての価値を本当に失う事になりかねないと思う。
自工会は次回のショーの概要を2010年の春に発表するとしているが、そこに至るまでのわずかな時間の間に、是非ともこれまでの慣習やしがらみに縛られる事のない、大胆かつ柔軟な発想が盛り込まれる事を願うばかりだ。
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