ひと言でいうなら「圧倒的進化!」 トヨタ 新型アクアは廉価なエコカーの域を超え、走りの質も高めた[試乗&解説]

  • 筆者: 今井 優杏
  • カメラマン:小林 岳夫・TOYOTA
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トヨタのコンパクトハイブリッドカー「アクア」が2021年6月にフルモデルチェンジを実施した。モータージャーナリストの今井 優杏さんは新型アクアについて、初代モデルが果たした「小型で廉価なエコカーを普及させる」という役割から、さらに大きく前へ進んだと感嘆する。そんな今井さんに、新型アクアを公道で試乗した印象について語っていただこう。

目次[開く][閉じる]
  1. 新型アクアには、エコカーの域を超えた“走りの愉しさ”があった
  2. 格好良くなっただけじゃない! 後席空間が広くなった新型アクア
  3. “廉価なエコカー”からさらに進化! 高出力な新バッテリーのおかげで走りも愉しめた
  4. これまでのハイブリッドとは異なり「エンジンがなかなかかからない」衝撃!
  5. 誰もが買えるエコカーを普及させる「幸せの量産」こそが、トヨタの考える“美しい地球”への最大の貢献なのだ

新型アクアには、エコカーの域を超えた“走りの愉しさ”があった

ハイブリッド専用コンパクトカーとして2011年に誕生したアクアが、全面刷新をして生まれ変わったというので、早速試乗をしてきた。

先に言うけどこりゃスゴい。正直、エコカーという枠を飛び越えて、クルマ好きをも満足させるような走りの愉しさすら湛(たた)えているのだ。さらにアクアといえば、の超絶燃費も、実走行で言えばプリウスに勝るとも劣らない数字を叩き出している(実数値は後述する)。内外装ともに商品としての全体的な質感も向上し、さらにアシスタンス系も充実。まさに全方位に守りを固めた、無敵のハイブリッドカーとして降臨した感がある。

そう、この新型アクアを一言で表すなら「圧倒的進化」だ。

格好良くなっただけじゃない! 後席空間が広くなった新型アクア

まずはエクステリアから見てみよう。

伸びやかなラインのおかげで、すこし大きくなったようにも感じられる。しかし、実際には全長・全幅は先代と変わらないから、これはデザインの妙とも言えそうだ。上級グレード「Z」にはBi-Beam LEDヘッドランプ(マニュアルレベリング機能付き)+LEDターンランプ+LEDクリアランスランプ(デイライト機能付き)で、クラス以上の質感を手に入れている(このライトがかなりかっこかわいい!)。

変わったのは全高で、+30mmのアップ。これは前・後席の頭上空間に充てられていて、圧迫感を軽減している。事実、後席に座るとこの効果はテキメンで、かなりのゆとりを感じることができる。狭い室内空間での3センチは、たかがじゃなくてされど、の3センチなのだ。

ちなみに室内空間で言えば、前席と後席のあいだを20mm拡大し、後席の足元まわりの快適性も向上させている。5ナンバーサイズ車ではあるけれど、存分にファーストカーとして役に立てるような刷新もなされているというわけだ。

さらにちょっとした工夫もある。地面からシート座面までを、先代に比べてすこし高くしたのだという。これにより、かがみ込むようなエントリーから、スッと乗り込めるように、乗降性も向上させている。

大型ディスプレイ採用に加え室内の質感向上も目覚ましい

コックピットではやはり、トヨタコンパクトカー初となる、大型の10.5インチディスプレイオーディオ採用が嬉しい(Z:標準装備/G:メーカーオプション)。DCM(車載通信機)は、緊急時にコールセンターにSOSコールを出来たり、また警告灯が点灯した際に自動的に販売店から確認コールが入ったり、また対話型AI「エージェント」機能と連動していたりと、かなり重要なコネクト機能のキモだが、いかんせんこれまではディスプレイサイズが小さかった。10.5インチはかなり満足のいくサイズだから、これだけでも所有欲をかなり満たしてくれるはずだ。

ほかには、合皮採用のシートやパワーシートなど、ダウンサイザーにも納得の機能が盛り込まれている。

“廉価なエコカー”からさらに進化! 高出力な新バッテリーのおかげで走りも愉しめた

エコカーだからって、走りに禁欲的な我慢を強いられる訳ではない!

さて、肝心の走りだが、これこそが新型アクアの真髄である。

そう、さほどクルマに詳しくないようなひとでもその名を聞けば「ああ、あのトヨタの小さいクルマね」くらいの返事が返ってくるほど知名度の高いのがこのアクア。さらに高い燃費性能を誇る同社プリウスよりも安価な車両価格で、それに迫る燃費を達成するというのだからそりゃ、魅力的に決まってる。事実、アクアは実に187万台以上を売り上げる、大人気モデルだった。

そんなアクアだけれど、これまではやはりコストを追求せねばならないという絶対的な使命を遂行すべき優先順位から、やや走りは犠牲にされていたようにも感じていた。

冒頭に書いた通り、そんなネガティブを一気に払しょくするのが今回の新型である。

新搭載の進化型「バイポーラ型」バッテリーはパワフル! ニッケル水素電池の大逆襲だ

プラットフォームはトヨタの新生代プラットフォーム戦略「TNGA」を、ヤリスに続きコンパクトカーで二番目に採用。走りの質感と剛性を手に入れている。さらにバッテリーをトヨタ初のバイポーラニッケル電池に変え、EV走行域をおよそ40km/hまで拡大した。

ハイブリッドに慣れきってしまった我々日本人からすると、ニッケルといえば安価なバッテリーの代名詞のような気がしてしまうが、これが実は、今や非常識なのだという。リチウムはたしかに軽いので、BEV(100%電気自動車)のようにバッテリーセルを床面に敷き詰めるようなクルマに向いているのだという。

しかし、今回のバイポーラニッケル電池は“ニッケルの大逆襲”とも言える特徴を持っている。従来のニッケル水素電池と比べて部品点数が少なくコンパクトで、さらに通電面積を広く、構造をシンプルにすることで電池内の抵抗を低減し、大電流が一気に流れるように出来たのだ。結果、従来型アクアのニッケル電池に比べ、今回のバイポーラニッケル電池は約二倍の高出力を実現している。

これまでのハイブリッドとは異なり「エンジンがなかなかかからない」衝撃!

燃費が良いうえにモーター中心の力強い走りが愉しい

実際に走行してみると、都内をゆるゆると抜けていくくらいじゃ、本当にエンジンがなかなか掛からない。さらに、モーターからエンジンのつなぎ目も非常にシームレスだから、結局どっちで走っているのかよくわからない。結果、ディスプレイに示される燃費の数値は実に28km/Lを軽く超える数値!二度見しましたよ。だってひとつもエコドライブを心がけてなくてコレなんだから!カタログ燃費は35.8km/L(WLTCモード燃費)だけど、ちょっと心がけてエコドライブしたら、簡単に達成できそうな気もするくらいだ。

パワープラスモードでノート e-POWERのような強めの回生ブレーキも作動可能だが、トヨタ独自のブレーキ協調回生機能もしっかり働く

ちなみに、日産でいうところのeペダル、つまりワンペダルドライブのようなことも出来なくはない。しかし、走行モードをパワー+モードにしても、アクセルオフでほぼ停止、というところまで減速するようなものではない。やや強めのエンジンブレーキ、みたいな感覚だ。しかし、強回生システムにより、この減速でもトヨタが得意とするエネルギー協調回生システムはしっかり働いているのだという。つまり、ほぼICE(ガソリンエンジン)モデルのようなナチュラルなブレーキで、十分役割は果たしているというわけだ。

個人的にはこの制動感がとても良かった。奥の方までコントロールできるし、いわゆるカックンしちゃうようなハイブリッドブレーキのピーキーな効きもない。とても扱いやすくて、気楽にブレーキを踏める感じだ。

さらにアシスタンス系も充実している。最新の運転支援機能「トヨタセーフティセンス」が全車標準装備となり、クルーズコントロールも全車速対応になっている。加えてインテリジェントクリアランスソナーやパノラミックビューモニター、ブラインドスポットモニターやリアクロストラフィックアラートなどもメーカーオプションで用意される。

ほかにもフルオート駐車支援機能はMIRAI同様のものが用意されているから、こちらも是非、試して欲しい。

誰もが買えるエコカーを普及させる「幸せの量産」こそが、トヨタの考える“美しい地球”への最大の貢献なのだ

先代で感じていた「?」を、「!」に変えたのが新型アクア。今回の進化は率直に“欲しい!”と思わせるものだった。待望の四輪駆動e-fourも追加され、あらゆる層に受け入れられる商品力を備えたと思う。

トヨタの考える「ホームプラネット」とは、次世代に向け美しい地球を残す、という考え方。初代のトヨタ アクアは、これまでに約1240万トンのCO2削減に貢献しているのだという。プレスリリースに書かれた『これからも「幸せの量産」をめざしていきます』の言葉が心に残った。

[筆者:今井 優杏/撮影:小林 岳夫・TOYOTA]

今井 優杏 公式YouTubeチャンネル「トヨタ 新型アクア」試乗動画も併せてチェック!

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今井 優杏
筆者今井 優杏

自動車ジャーナリストとして、新車や乗用車に関する記事を自動車専門誌、WEBメディア、一般ファッション誌などに寄稿しながら、サーキットやイベント会場ではモータースポーツMCとしてマイクを握り、自動車/ モータースポーツの楽しさ・素晴らしさを伝える活動を精力的に行う。近年、大型自動二輪免許を取得後、自動二輪雑誌に寄稿するなど活動の場を自動二輪にも拡げている。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。記事一覧を見る

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