ポルシェ 911ターボ 海外試乗レポート(2/2)

  • 筆者: 河村 康彦
  • カメラマン:ポルシェジャパン株式会社
ポルシェ 911ターボ 海外試乗レポート
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新しい911ターボは「テクノロジーフラッグシップ」

ポルシェ 911ターボ
ポルシェ 911ターボポルシェ 911ターボ

まず、一般道を走り出した段階で実感させられたのは、従来型にも増してフレキシブルなエンジンの性格。排気量を増した事と直噴化によって圧縮比9.0から9.8へとアップされた事などによる相乗効果で、街中で乗るこのモデルの心臓はとにかく「ターボが付いているとは信じられないくらい」に低回転域から力強いトルクを実感させてくれる。

“PDK”のDレンジでは、日本の道をシミュレートした走りでも全く違和感のない変速を素早くやってのける。日常的な緩い加速シーンでは2速発進となるが、それでも加速力に不満は皆無。

ちなみに、100km/hクルージング時のエンジン回転数は1,700rpmほどに過ぎないが、すでに1,950rpmから最大トルクを発するという性格を持つエンジンのお陰で、ここからジワジワとアクセルペダルを踏み加えるとキックダウンに頼らずとも十分強力な中間加速が得られるのだ。

500psという最高出力の持ち主ゆえ、シャシーがそれ相応に固められている事は乗り味からも実感できる。路面の凹凸を拾った際の突き上げ感はカレラシリーズよりは少々強め。

ちなみに、クーペとカブリオレのボディ剛性感はやはり明確に異なり、快適性の面でも振動の減衰がより素早いクーペがカブリオレをわずかながらも確実に上回る。

このモデルで興味深いのは、カレラシリーズではマイナーチェンジに伴う新スペックのタイヤ装着時に、快適性向上を目的として下げられた空気圧が、911ターボの場合には従来型と同じ値の基本時フロント2.3bar/リア2.7bar、高負荷時フロント2.5bar/リア3.0barに設定されていた事。

この点をシャシー担当のエンジニア氏に尋ねると、「クーペ比で75kg重いカブリオレの重量を考慮すると、これ以上空気圧を下げるわけには行かなかった」との事。それでは、もしもこのモデルがクーペボディ専用であったとしたら?という当方の問いに対する回答は、「恐らく、もう少し低い設定にしただろう」というものだった。

ポルシェ 911ターボ

かつてはF1レースも開催されたエストリル・サーキットを用いてのセッションでは、最新の911ターボが持つ走りのパフォーマンスをフルに引き出す事が出来た。

フルアクセルでのパワーの炸裂感は「さすがは500ps!」と納得の行くもの。そんな圧倒的なパワフルさがレッドゾーンの6,800rpmまで衰えを知らないのだから、一般道で味わった低回転域でのフレキシブルさと共に、この心臓の持つ圧倒的なパフォーマンスには、もはや呆れるばかりという印象だ。

ちなみに、ステアリング操作に忙しいホットな走りのシーンで助けられたのが、右がアップで左がダウンという“世界標準”に則ってデザインされた、パドル付きの新ステアリングホイール。

カレラシリーズでは、「フロアレバーの操作ロジックを反映させた」エルゴノミクスに基づいたというステアリングホイールの操作性に多くの人が戸惑った経緯からすると、オプション設定とはいえこれは嬉しいポイントだ。

ところで、いくら駆動力が4輪に分散されるとはいえ、強烈なターボパワーの持ち主ゆえハンドリング特性はかなりトリッキーなものと想像をする人が居るかも知れない。

もちろん、その速さは圧倒的でそれを御すためにはそれなりのドライビング・スキルを要するのは確かだが、しかしその扱いに決して神経をすり減らすような思いを感じる事が無いのは、アンダーステアが顔を覗かせそうになると巧みに進路を引き戻してくれるトルク・ベクタリングや、4輪が補填し合いながら路面に駆動力を伝える4WD、いざというシーンでスピンを防ぐスタビリティコントロールなど、様々な電子制御システムが“裏方”として働いているために他ならないだろう。

すなわち、実は新しい911ターボというのはポルシェ史上で最先端を行く“テクノロジー・フラッグシップ”でもあるという事。どうやら、そこに新たに採用された様々なアイテムの中身に目をやっても、再び日産GT-Rとの間に色濃いライバル関係を再燃させそうな最新ポルシェの誕生である。

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河村 康彦
筆者河村 康彦

1960年東京生まれ。工学院大学機械工学科卒。モーターファン(三栄書房)の編集者を経て、1985年よりフリーランスのモータージャーナリストとして活動を開始し、現在に至る。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー選考委員 などを歴任。記事一覧を見る

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