ポルシェ 911ターボ 海外試乗レポート(3/3)
- 筆者: 河村 康彦
- カメラマン:ポルシェ・ジャパン
全てのターボ付きエンジン車の『印象を覆すほどの動力性能
新型911ターボのメカニズム上のハイライトのひとつは、2基のターボチャージャーに採用された『可変タービン・ジオメトリー機構』の存在。
米国“ボルグワーナー・ターボシステムズ”製で、タービンの周囲に排気の流入角と流入速度を可変とする11枚の可動式ガイドベーンを設けたこのターボチャージャーは、「(高出力を発揮する)大型ターボと(レスポンスの良い)小型ターボそれぞれの長所を併せ持つ」というのが謳い文句。実は同様の機構はすでにディーゼルの世界では珍しくなく、ガソリン・エンジンでも1985年に日産が可動ベーンが1枚の“ジェットターボ”、また1988年にはホンダが可動と固定式が対を成すベーンが4組の“ウイングターボ”をリリースと、同様コンセプトのメカニズムを市販モデルに採用した経験がある。もっとも、そうした過去のアイテムに比べると「排ガス浄化のために要求される耐熱性がグンと高くなり、また耐久性も当時よりは圧倒的な長期間が求められる今日のユニットには、遥かに高度なテクノロジーが必要」というのがポルシェの言い分だ。
この期に及んでの“再デビュー”となるからには、当然そのあたりにも大いなる自信があるという事なのだろう。果たせるかな、その動力性能のほどは---ちょっと大袈裟に表現をすれば---従来型911ターボを含み、これまでの全てのターボ付きエンジン車の印象を覆すほどのものだった。
何しろそれは、すでに1,000rpm台で「これは本当にターボ付き?」と思わせるフレキシブルなトルク感を味わわせてくれる一方で、4,000rpm付近に達すればまさに『炸裂!』という表現を使う以外にない強烈なパンチ力を提供してくれたのだ。なるほど、こんなエンジン特性であればアップシフト時にアクセルペダルを戻す必要のないAT仕様の方が「発進加速データは優れている」というカタログデータにも納得が行く。
まさに高回転・高出力型の典型のような心臓を積んだGT3に比べると、同じ「強力」ではあってもこちらのエンジン・キャラクターは180度正反対な性格の持ち主と言っても良さそう。2台並んでジュネーブショーでデビューをした背景には、まずはこうした極端なまでのエンジン・キャラクターの違いがあるというわけだ。
もうひとつの技術ハイライトは、このクルマに搭載の4WDシステム。
ビスカスカップリングを用い、前後のアクスル回転数の差(のみ)を前後トルク配分のための“信号”として用いた従来型のそれに対し、「カイエンのシステムから学んだ」という電子制御の電磁式多板クラッチを用いる新型のそれは、走行速度や前後左右への加速度、ステアリング舵角などを“信号”として用いる事でよりアクティブな前後トルク配分を行えるのが特徴。実際に走行をしてみると前述の強大なエンジン出力を基本的には後輪側に大きくバイアスの掛かった前後トルク配分で伝える事で素直なハンドリング感覚を実現しながら、しかし305/30というファットな後2輪でも強大なトルク吸収出来なくなりそうになると、瞬時に前輪側へのバイアスを増やして安定した走りをキープし続ける…という印象が強い。
端的なところハンドリングの軽快感ではGT3に遠く及ばない一方、特に高速時の安定感では今度はこちらが比較にならない高さを実現している。中でも、4WDの威力と共に空力性能の素晴らしさが実感として納得出来るようになるのが150km/h付近から上の領域。少々ハードな街乗りでの印象から推測すると「これは高速ではギャップで“跳んで”しまうかな」と思えたものの、実際にはむしろ速度が増すほどにフラット感もアップ。路面へと吸い付く感触すらが生まれて来るのだ。
少なくとも、200km/hを大きく超える速度域になると「真剣にステリアングを握り直したくなる」GT3に比べ、こちらターボは同様スピードでも遥かにリラックスした気分でクルージングを続けられる事は間違いない。もちろん、そんな気持ちにさせてくれる前提としては、オーバー300km/hまでの速度からの効きをも保証する、あの強靭なブレーキ・システムの採用などもあってのハナシ、という事にはなるわけだが・・・。
それにしても、気が付けばここまでスーパーなそんな各種の運動性能を、「わずかに」1.6トンに満たない重量の下で実現させてしまったというのも驚愕ものであるのが新型911ターボ。その余りの高性能ぶりは思わず、数百m先まで見通しの効くコーナーが連続するという、羨ましい限りのこちらのワインディング・ロードと共に日本へと連れて帰りたくなるものであったのだ。
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