ポルシェ 911ターボカブリオレ 海外試乗レポート(3/3)

  • 筆者: 河村 康彦
  • カメラマン:ポルシェ・ジャパン株式会社
ポルシェ 911ターボカブリオレ 海外試乗レポート
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カブリオレボディの剛性感が意外な乗り心地へ

インパネ

ドライバーズ・シートへと収まれば、その目の前に広がるのはもう見慣れた997型911ならではのコクピットの風景。本国では6速MT仕様の設定もなされる新しいターボカブリオレだが、クーペ以上にゴージャスさを重んじるモデルというキャラクターも意識してか、日本導入仕様はAT(ティプトロニック)のみとなる事がすでに発表済みだ。

テストドライブを行ったのは、“スポーツ・クロノパッケージ”装着車。このオプションを選択した場合、スポーツボタンを押すことで可変減衰力ダンパー“PASM”のセッティングをスポーツモードへと固定し、アクセル操作に対するレスポンスを決定づけるスロットルの線形やシフト・プログラムをよりスポーティなものへと変更すると共に、2,100~4,000rpmというエンジン回転数の範囲内で可変タービンジオメトリー機構付きのツインターボチャージャーが生み出す過給圧を最大0.2bar引き上げ、それによって通常時620Nmの最大トルクを短時間のみ680Nmまでアップさせる・・・というのはクーペの場合と同様スペックだ。

前述のように、“体重”を70kgばかり増したターボカブリオレだが、クーペとの直接比較でも「動力性能の悪化は微塵も感じられない」というのが率直な感想。

排気エネルギーの高まりが期待出来ない低速走行時でもターボ付きエンジンとは信じられないほどのフレキシブルなトルク感を味わわせてくれる一方で、アクセルペダルを深く踏み込めばエンジン回転の高まりと共にまさに“スポーツ・ターボ”らしい仰け反るほどのパンチ力を発生。

実際、ドイツで開催された今回の国際試乗会の場では、空いたアウトバーン上で「殆ど300km/h(!)」という速度をあっけないほど簡単にマークしてくれたのだから、そのスピード性能のほどは相変わらず超一流なのだ。

フロントシートリアシートラゲッジタイヤ&ホイール走行
エンジン

とにかく速い(!)そんなターボカブリオレだが、フットワークのテイストはクーペのそれとはわずかに異なって感じられた。ボディのしっかり感が高いのはやはりクーペの方。それに比べるとこちらカブリオレはボディに入った振動の減衰にやや時間がかかり、いわゆるボディの剛性感は――オープン・モデルとしては一級品ではあるものの、――「文句ナシに圧倒的!」と感じられるクーペのそれよりは、やはり1ランクダウンとなる印象が否めない。

しかし一方で、それがそのまま乗り心地のダウンへとは必ずしも結びつかなかったのは興味深いポイント。40km/h程度までの速度では明確に「硬い」印象だし、速度が60km/h程度になっても、まだ「しなやか」という表現を使う気になれないのは事実。けれども、前述したボディ剛性感のダウンが時と場合よっては路面凹凸からの硬さをまるで“いなす”かのように和らげてくれるシーンにも遭遇をしたのだ。脚の硬さをボディの固さが増幅させてしまう場面もあるクーペに比べると、これはちょっと意外な発見だった。

それにしても、圧倒的な動力性能を発揮し、RRレイアウトをベースとした4WDシステムの採用でまさに鉄壁のトラクション能力を誇り、その上で軽量さと低重心ぶりからスポーツカーに相応しいオープンエア・モータリングを手に入れるソフトトップを採用したこのモデルは、まさに“究極の贅沢カー”という印象。2,000万円を遥かに超えるプライスタグは、確かにこちらもまた飛び切りのもの。

が、そうした対価に対する実際のポテンシャルの様々な高さを余す事なくドライバーへとダイレクトに還元してくれるというのが、またいかにもポルシェ車らしい911ターボカブリオレでもあるのだ。

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河村 康彦
筆者河村 康彦

1960年東京生まれ。工学院大学機械工学科卒。モーターファン(三栄書房)の編集者を経て、1985年よりフリーランスのモータージャーナリストとして活動を開始し、現在に至る。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー選考委員 などを歴任。記事一覧を見る

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