あまりにも早過ぎたミニバンとEVの元祖! 悲運の名車たちとご対面|日産ヘリテージコレクションを徹底探訪【後編】

  • 筆者: 小鮒 康一
  • カメラマン:オートックワン編集部

第二弾はもっと濃いめでお送りします・・・

過去の名車や歴史的車両などを収蔵したミュージアム、日産自動車座間事業所の敷地内にある「日産ヘリテージコレクション」は、自動車メーカーの中でもトップクラスの規模・車両台数を誇る。先日お届けした第一弾では、その貴重なコレクションの中から実際に稼動する2台と触れた印象などをお伝えしたが、今回はその第二弾。もっと濃いぃネタを中心にお届けする。

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あまりにも早過ぎた・・・昭和57年誕生の元祖ミニバン、初代「プレーリー」

300台以上が収蔵されているという日産ヘリテージコレクション。今回、猛烈に注目してしまったのが、この1982年にデビューした初代プレーリーだ。

今でこそセンターピラーレスで乗降性をアップさせたトヨタ アイシスやダイハツ タントが存在しているが、今から35年以上前に存在していたということは「感動に値するレベル!」と単純に言っても過言ではないだろう。

しかも、アイシスやタントは助手席側のみだが、この初代プレーリーは両側ピラーレスだったということも驚愕の事実だ。

そもそも当時は「ミニバン」というカテゴリすら存在しておらず、3列シートでピラーレススライドドアを持った同車は「びっくり BOXY SEDAN」と、新しいセダンという扱いだった。

室内はウォークスルーを実現するためにコラムシフト(MT)を設定するなど、世が世ならもっと爆発的な大ヒット車種となっていた可能性もあったプレーリーは、時代を先取りし過ぎた悲運の名車とも言えるかもしれない。

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そのルーツは終戦直後に! 日産EV前時代の歴史を探る

現在の日産と言えば、リーフやe-NV200でお馴染みの電気自動車(EV)と、ノートやセレナに設定されているe-POWERに代表されるように、電動車のリーディングカンパニーとしても知られているが、実はその電動車の歴史は長い。

プライベートでもノートe-POWERを愛用する筆者が気になった、日産の歴史を彩るEV車をいくつかご紹介しよう。

たま電気自動車|今から70年前に早くも市販化されていた電気自動車のご先祖さま

まずご紹介するのは「たま電気自動車」だ。リーフの遠い遠いご先祖さまにあたる、日産にとってはもはや神様のような存在と言っても過言ではないだろう。

1966年に日産自動車と合併するプリンス自動車工業の前身は、1947年に創業された東京電気自動車。工場があった地域から命名された「たま電気自動車」を終戦直後に早くもリリースしていたのである。

今から70年以上前にすでに電気自動車が登場していたことも驚きだが、終戦直後で石油燃料が不足していたことも相まって、タクシーとして実用されていたということも凄い。実車はリーフ同様(!)に床下へバッテリーが搭載され、その影響もあってかなりの高床式。しかもたま電気自動車は2ドアなのだ。

もちろん、このたま電気自動車も日産ヘリテージコレクションには収蔵されており、しかも2010年には再生が完了。たま電気自動車の設計者、田中次郎氏のお墨付きも得て(ボンネット内にサインがある)実際に走行できる状態になっている。

プレーリーEV|北極で6年間も活躍した車両を収蔵

続いてご紹介するのが、1995年にデビューしたプレーリージョイをベースにした電気自動車であるプレーリーEVだ。

97年にリチウムイオン電池を搭載した世界初の電気自動車としてリリースされており、最高速120km/h、一充電当たり航続距離200Km以上という性能を持ち合わせていた。

トランクスペースにバッテリーなどが搭載されるため、5人乗り仕様がベースとなっているが、外観は左側ヘッドライト前に充電口が備わる以外はガソリン車との大きな差異は認められない。

なお、こちらの車両は国立極地研究所北極観測センターの支援車として実際に北極で使用されたもの。北極の大気を収集、分析するために車両が必要だったものの、大気を収集する車両が排気ガスを出してしまうのは本末転倒ということで導入されたそうだ。

結局6年間にわたって現地で使用されたが、極寒の地でも故障することもなく使用され、高い信頼性があることも実証されている。

>>日産ヘリテージコレクションの電気自動車はほかにもいっぱい! 画像ギャラリーを見る

キューブEV|本当はキューブじゃなくて「キューブキュービック」なんですけど

そして、時は流れて2008年。

リーフの先行開発のために、Z11型キューブを改造して作られた電気自動車”キューブEV”も収蔵されている。

リーフに搭載予定だったリチウムイオンバッテリーの検討のために製作された車両ということで、外板については市販のキューブと車両の寸法関係に大きな差はないということだが、公表されているホイールベースの数値が2600mmということで、キューブベースではなくキューブキュービックベースだと思われる。

試作車とはいえ、フロントグリルの空気穴がベース車とは異なり、イナズママークになっている遊び心が個人的にはハートに突き刺さったポイントだった。

フロントグリル以外はベース車と大きく変わらない外観と比べて、内装はベース車と大きく異なっている。インパネこそキューブのものが流用されているが、フラットフロアのキューブとは異なり、大きなセンターコンソールが車両中央を陣取っており、前後シートもセパレートのタイプが採用され、4人乗りとなっていた。恐らく他車種からの流用と思われるスポーティなシートが装着されていたが、どの車種から流用されたのかが分からないまま取材時間が終了してしまったのが唯一の心残りである。

ティーダEV|再発見! ワイドフェンダーのティーダってむっちゃカッコいい!

リーフ発売前年の2009年に「先進技術説明会」でプレス向けに公開されたティーダEVも同様に所蔵されている。

こちらも前述のキューブEVと同じく、ティーダをベースに作られた試作車だとずっと思っていたが、なんとリーフのシャシーをベースにティーダの外板を組み合わせたものと説明されてビックリ。そう言われてみれば、ホイールベースの2700mmは初代リーフと共通ではないか。さらにホイールボルトも5穴となっており(ティーダは4穴)言われてみればリーフのプロトタイプという事実も納得だ。

とはいえ、ティーダの外板にオーバーフェンダーをプラスした外観はリーフ抜きにして魅力的(白基調のボディなので写真でその格好良さが伝わりづらいのがもどかしい!)であり、ティーダの現役時代にこのオーバーフェンダーがオプションであったら絶対買っていたと思えるほどの完成度であった。

■参考記事

日産先進技術説明会2009 vol.1 EV(電気自動車の技術)編[2009/8/7]

最後に…日産ヘリテージコレクションの紹介

このように300台もの所蔵台数を誇る日産ヘリテージコレクションは、とても一日で見終えることができるボリュームではない。筆者もプライベートを含め4回目の訪問となるが、まだまだ見足りないと思えるほど。

そんな日産ヘリテージコレクションは一般公開をしている。申し込みはwebサイト(https://nissan-heritage-collection.com/TOUR/)からすることが可能で、同乗試乗やエンジン始動などを伴う特別ツアーの実施日時についても同サイトで確認することができる。

展示車両は入れ替えや、他の場所(日産グローバル本社ギャラリーや、各地のディーラー、イベントなど)へ貸し出しをしている場合もあり、1度で全ての車両を見ることは叶わないかもしれないが、入場料金もかからないため、ぜひとも複数回足を運んでいただいたいスポット言えるだろう。

[レポート:小鮒 康一/Photo:オートックワン編集部]

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日産ヘリテージコレクションまでどう行くの!?

■お問い合わせ先:

日産自動車株式会社 座間事業所 座間統括課

電話:046-298-4355

受付時間:月~金10:00~16:00 (12:30~13:30を除く)

〒252-8502 神奈川県座間市広野台2-10-1 ※入口は「2地区正門」になります。

●電車でお越しの場合

小田急江ノ島線南林間駅から、神奈川中央交通バス「日産」「相武台前駅」「小田急相模原駅」行

「ひばりが丘1丁目」下車、徒歩7分

または相鉄本線さがみ野駅から、相鉄バス「南林間駅」行「ひばりが丘1丁目(または工機入口)」下車、徒歩7分

●お車でお越しの場合

東名高速道路「横浜町田インター」から国道16号線を八王子方面へ 国道246号線を左折、東原4丁目交差点を右折、2つめの信号を左折

1つめの信号(正門前専用信号)前が座間事業所 2地区正門

(東名高速道路「横浜町田インター」より15~30分(道路状況による))

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小鮒 康一
筆者小鮒 康一

1979年5月22日生まれ、群馬県出身。某大手自動車関連企業を退社後に急転直下でフリーランスライターへ。国産旧車に造詣が深いが、実は現行車に関してもアンテナを張り続けている。また、過去に中古車販売店に勤務していた経験を活かし、中古車系の媒体でも活動中。最近では「モテない自動車マニア」の称号も獲得。記事一覧を見る

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