日産セレナのカスタムモデル「AUTECH」と「NISMO」を徹底比較|タイヤの違いで表現した走りへのこだわり(2/2)

  • 筆者: 大谷 達也
  • カメラマン:島村栄二 協力:株式会社オーテックジャパン
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走りに関する装備の違いはタイヤの銘柄だけ

では、2台に試乗した印象はどうだったのか?

先に断っておくと、走りに関係する装備はセレナAUTECH SPORTS SPECとセレナNISMOでは基本的に同じものが用いられている。

15mmローダウンの専用サスペンション、ボディ床下に取り付けられた補強材による剛性向上、エンジンを制御するECMの専用チューニングなどが共通だ。

セレナAUTECH SPORTS SPECとセレナNISMOの違いは、ホイール・デザインとタイヤの銘柄だけ。つまり、タイヤのキャラクターによって、それぞれの独自性を生み出していることになる。

タイヤは、セレナAUTECH SPORTS SPECがミシュラン パイロットスポーツ4で、セレナNISMOはブリヂストン ポテンザ アドレナリンRE003。サイズはいずれも205/50R17だ。

>>セレナAUTECH SPORTS SPECとセレナNISMOを画像で比較する

標準のセレナとは違うドイツ車のような乗り心地

まずは2台に共通な走りの味わいについて説明しよう。

乗り始めてすぐに感じるのは、標準モデルのセレナとは明らかに異なるソリッドな乗り心地だ。平たくいえば硬いのだけれど、それが不快な印象に結び付かないのは、ボディ床下に施された補強材のおかげだろう。このため、タイヤがショックを受けてもボディがそれをガッシリと受け止め、イヤな振動を残さない。つまり、硬いサスペンションのネガティブな面がきれいに消し去られているのだ。

足回りは固められたが、路面のうねりなどに伴うボディの揺れがぐっと少なくなり、乗員の身体が揺さぶられるような動きが大幅に減った。これは長距離ドライブでの疲労感の軽減に大きく役立つほか、人によってはクルマ酔いを軽減する効果もあるはず。いずれも、ドイツ製のプレミアムカーでよく見られる足回りの設定だ。

背の高いミニバンにもかかわらず驚愕のコーナリング性能

ここまで申し上げれば容易に想像できるとおり、ハンドリングも実に安定している。今回は箱根のワインディングロードまで足を伸ばしたけれど、超高性能なスポーツカーで走るペースの8割くらいまでであればロール(コーナリングに伴うクルマの傾き)も最小限に抑えられており、ドライバーだけでなく乗員もほとんど不安を覚えないだろう。

率直に言って、背の高いミニバンがこれほどのハイペースでコーナーを駆け抜けても安定した姿勢を保っていることは大きな驚きだった。

実は、ワインディングロードを走行しているとき、後方から日本製の有名なスポーツカーが迫ってきたのだが、高速コーナリングではむしろセレナがジワジワと引き離していったほど。ここで生まれた差を、スポーツカーがパワーにものをいわせて追い上げるといった具合で、2台の間隔はほとんど変わらなかった。恐るべきパフォーマンスといって差し支えない。

さらにその先のコーナリングを試そうとすると、タイヤのグリップ限界が訪れるより先にロール量に対する心理的な限界が訪れ、それ以上、攻めるつもりになれなかった。しかし、だからといってセレナAUTECH SPORTS SPECやセレナNISMOのコーナリング性能を悲観する必要はまったくない。むしろ、スポーツカーと張り合えるほど優れたパフォーマンスであることを堂々と誇ってもいいくらいだ。

基本性能の高さは両車共通、どちらを選んでも間違いない

こうした基本性能の高さに比べれば、2台のキャラクターの違いはあまり大きくない。ステアリング・レスポンスにもっと大きな違いがあるかと思っていたが、今回試乗した範囲でいえば2台とも神経質なところのない扱い易い種類のもので、どちらを選んでも間違いはない。

ひょっとするとグリップ力に違いがあるのかもしれないが、今回は前述のとおり2台のグリップ限界を試すことはできなかった。

サーキット走行や雨で路面が濡れているときには差が現れる可能性もあるが、少なくともドライ路面での日常走行であれば、その違いは決して大きくない。

上質な乗り心地のAUTECHと走りへの情熱を追求したNISMO

乗り心地の傾向も全般的にはよく似ていた。極低速域で段差を乗り越えるときに伝わってくるショックはうまく抑え込まれており、スポーツ性能を追求したタイヤとしてはよくできた部類と評価できる。

敢えていえば、走行中にタイヤが起こすざわついた騒音(ロードノイズ)はポテンザ アドレナリンを履くセレナNISMOの方がいくぶん大きめ。

また、車速が高まってからタイヤに速い周期の振幅が加わったときには、ポテンザのほうがわずかながらその振動を正直に伝える傾向が認められた。

裏を返せば、幅広い条件でミシュラン パイロットスポーツ4を履くセレナAUTECH SPORTS SPECの方が快適に感じられたとなるだろう。

エンジンのコンピューターチューニングは、最高出力や最大トルクに変化がなく、主にレスポンスや加速時の伸び感を改善したものというが、なるほど、アクセルペダルを踏んでから加速に移るまでの過程は自然で、あまりもどかしさを覚えなかった。

また、CVTに特有のエンジン回転数だけが先に上がって実際の車速がなかなか追い付かないという違和感もうまく抑え込まれていると思う。

ある領域を超えると良い音色を響かせるマフラー

もうひとつ、2台に装着された専用マフラーはなかなかいい仕事をしていると感じた。

アクセルペダルをあまり踏み込んでいない常用域ではほとんどエンジン音を発しないのに、全開の半分を越える領域まで踏み込むと、控えめながら乾いた良い音色を聞かせてくれるのだ。スポーティなミニバンとして、実に的を射た設定といえる。

結論として、セレナAUTECH SPORTS SPECとセレナNISMOの走りはスポーティかつ上質なもので、どちらを選んでも間違いはない。言い換えれば、ほとばしるような走りへの情熱をストレートに表現したい人はセレナNISMOを、走りへのこだわりはあっても上質感をより重視する人はセレナAUTECH SPORTS SPECを選ぶといいだろう。

ちなみに、50代の半ばを過ぎた私にはセレナAUTECH SPORTS SPECのほうが肌に馴染んだことをお伝えして、このリポートを締めくくりたい。

[レポート:大谷達也/PHOTO:島村栄二]

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大谷 達也
筆者大谷 達也

1961年、神奈川県生まれ。エンジニア職を経験後、1990年二玄社に就職し、CG編集部に配属となる。以来、20年間にわたり同誌の新車情報、モータースポーツに関する記事を企画・編集・執筆。2010年3月フリーランスとなる。現在もCGの編集・執筆業務に携わる傍ら、ENGINE、GENROQ、東京中日スポーツ新聞、レーシングオンなどにも寄稿。日本モータースポーツ記者会会員。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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