日産 ノート デザイナーインタビュー/プロダクトチーフデザイナー 前田 敦(2/4)
- 筆者: 森口 将之
- カメラマン:オートックワン編集部
考えたことは人間と同じように目、鼻、口のバランス
AO:ボディサイドではやっぱり、スカッシュラインが目立ちます。5ナンバー枠を守りつつ、こういうダイナミックなラインを入れるのは大変だったと思うんですが。
M:リアフェンダーの力感とボディの厚みを、5ナンバー枠内でどうやって両立させるかがテーマでした。ただ斜め上方に流すだけだと単調になるし、ユーティリティを追求していくとペタンとなってしまうし、苦肉の策です。
通常こういう造形をすると、プレスラインの上下が痩せて見えるのですが、近づいて見てもらえれば分かるとおり、下側のプレスライン周辺の面は張っているんです。あるモデラーが『オレに作らせろ』と言ったので、任せたらイメージに近いものが出来上がりました。モデラーの力量に感謝です。
AO:後ろ姿も、多くの国産コンパクトカーがシンプルに作りがちな中で、リアコンビランプをはじめ凝っていますよね。
M:ユーティリティを考えると旧型のような縦長ランプが有効なんですが、エモーショナルじゃないし、広がり感を出しずらい。今回のブーメランシェイプは、ジュークやフェアレディZと同じ言語です。クロスオーバーやスポーツカーの言語をハッチバックに持ってくるのは稀なんですが、動性能を強調するために採用しました。
さらにリアウインドーと一体にすることで、斜め後ろから見た時の広がり感を強調し、ブーメランの尖った部分をスカッシュラインにつなげることで、勢いがフロントに流れていくように見せています。
AO:フロントマスクに、従来の欧州向けの日産車でおなじみのウインググリルが使われていないのは意外に思ったんですが。
M:日産は、 BMWやアウディが備えるようなコンシステンシー(一貫性)では、まだまだ勉強しなければいけない状況にあります。新型ノートは、一貫性を決める途中のクルマなので、トライアルのひとつとして考えました。目力が必要だと思ったんですが、コンパクトカーなのでお金は掛けられないから、アイデアで勝負するしかない。
そこでヘッドランプとグリルを楔形で組ませる、嵌合(かんごう)という手法を用いたうえで、人間と同じように目、鼻、口のバランスを考えました。今後の日産車をすべてこの顔に揃えるわけではありませんが、もう少し強い一貫性を持たせたいと考えています。
AO:新型ではノートとティーダを統合させたわけですが、デザイン面ではその点は意識しましたか。
M:もちろんティーダのお客様まで視野に入れて考えました。お客様には、インテリアが広くて上質だった点や、どっしりしていて大きく見える外観が評価されていたので、その点をノートの個性とバランスさせながら入れていきました。『ノートではもったいない』というレベルであっても、ティーダのお客さんに認めてもらうために、クオリティの高さにもこだわりました。
この記事にコメントする