日産 ムラーノ 試乗レポート

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新型クロスオーバーSUV 日産ムラーノ誕生!

日本人にも妙に語感の良いネーミングの持ち主である日産のブランニュー・モデルが『ムラーノ』。といっても、実はその名前の出典は「ベネチア沖に浮かぶガラス工芸で有名な島の名前」にあると言う。“クロスオーバーSUV”をコンセプトに開発された、まずはルックスが売り物のこのクルマの全長×全幅は、4770×1880mmとそれなりに大柄。それもそのはずで、そもそもムラーノは北米市場をターゲットに開発されてきたモデル。それが日本でも発売されるようになったのは「2003年に開催された東京モーターショーに参考出品した結果、その評判が良かったから」というのが日産の公式見解だ。

何とも個性的なそのエクステリア・デザインから俄かには想像をしにくいが、ハードウェア上の骨格となったのはティアナやプレサージュ、そしてやはり北米向けのマキシマやアルティマなども採用する日産が“FF-L”と呼ぶ大型のFF車用プラットフォーム。すなわち、搭載するV6エンジンとトランスミッション(CVT)はいわゆる横置きレイアウト。ここからも、ムラーノはあくまでも“乗用車ベース”である事が伺える。

デザインは“外”も“内”も大胆で個性的

ムラーノの“売り”がまずはそのルックスにあるというのは前述の通り。180mmと大きく採られた地上高や18インチという大径のシューズの採用も、機能面からの要請よりはあくまでも「“ムラーノ・ルック”を実現させるための手法」と考えるべきだ。

それにしてもムラーノのデザインはご覧のように、“外”も“内”も大胆で個性的。エクステリアでは前述のようなワイルドなSUVらしい記号性を巧みに取り入れつつ、いかにも都会的なフロントマスクや流れるようにスポーティなサイド・ウインドウグラフィックを採り入れるなど、既存のいわゆるSUVたちとは完全に一線を画したオリジナリティを確立。

かくも頑張ったエクステリアに合わせるようにインテリアもモダーンで独創性に溢れたデザインを採用し、見る人にフェアレディZなどと共に「日産自動車は生まれ変わった」事を印象づける。 フロアが高めなので乗降時の足運びはやや大変だが室内空間は十二分に広い。やはりフロア位置は高めになるが、ラゲージスペースも満足レベルにある。

3.5リッター・モデルのCVTは、世界のCVTの中でも秀逸な出来栄え。

ムラーノが搭載するパワーパックは2タイプ。CVTと組み合わされる3・5リッターV型6気筒と、4速ATと組み合わされる2.5リッターの直列4気筒だ。 後者は日本仕様のみに用意されるコスト重視のユニット。設定も軽量なFWDモデルのみに限定される。

今回テストドライブを行ったのは3.5リッターの4WDモデルと2.5リッター・モデル。当然ながらより緻密かつ力強いパワーフィールを味わわせてくれるのは3.5リッター版ではあるが、2.5リッター・モデルは前述のように軽量なFWDシャシーとの組み合わせなので、絶対的な加速力では両者の差は予想をしたほど大きなものではなかった。

3.5リッター・モデルのCVTは、世界のCVTの中でも秀逸な出来栄え。通常のトルコン式ATからの乗換えでもスタートの瞬間から違和感なく、それでいながら通常時は可能な限り低いエンジン回転数を選択するというCVTならではのメリットが光る。フットワークはあくまでも“セダン・ライク”な味付け。オールシーズン・タイヤを履く事もあり舵の正確性は今ひとつでスポーティな感覚は薄いが、それも「まずはルックス重視」というこのクルマのキャラクターに照らすと、余り大きな弱点にはなりそうにない。

おすすめは3.5Lの2WDだが、日本の狭い道路事情での取り回しが気になるところ。

主な行動場所は都会に限られる、というのであれば、このクルマの場合敢えて4WDモデルを選択する理由は薄いかも知れない。となると、注目すべきは残念ながら今回テストドライブのならなかった3.5リッターのFWDモデル。ムラーノで「加速の力強さを重視したい」というのであれば、この仕様がオススメになりそうだ。

一方注意すべきはちょっと日本離れ(?)をした1880mmというボディ全幅と1685mmという全高サイズ。もともとアメリカ意識で開発されたこのクルマの場合、日本名物(?)の“タワーパーキング”への進入可能性などは当然考慮をされていない。それもあって、自宅のパーキングも含めある程度余裕の駐車スペースが確保されていないと、このクルマをスマートに使いこなすのは難しそうだ。

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河村 康彦
筆者河村 康彦

1960年東京生まれ。工学院大学機械工学科卒。モーターファン(三栄書房)の編集者を経て、1985年よりフリーランスのモータージャーナリストとして活動を開始し、現在に至る。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー選考委員 などを歴任。記事一覧を見る

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