ニスモ&STIのチューニングカーを中谷明彦がサーキットで試す!|ワークスチューニンググループ合同試乗会 前編
- 筆者: 中谷 明彦
- カメラマン:大西 靖
メーカー系ワークスチューナーが手掛けるチューニングカーを中谷明彦がテスト。前編ではGT-R を始めとする日産のコンプリートカーを手掛ける「NISMO」とスバル車をチューニングする「STI」の2メーカーを紹介する。果たして、ベース車とのパーフォマンスはどれほど異なるのか? サーキットでCHECK!
NISMOが旧モデルを蘇らせる?
ワークスチューン系の中でも最も技術的なグレードが高く、性能的に極だっているのが「NISMO」の各モデルだ。長年のレースシーンにおける実績と、日産 GT-Rという世界レベルのハイパフォーマンスカーを手がけるだけのノウハウと責任を担っている。
そのニスモが今回用意したのは歴代GT-Rの各モデル。スカイライン時代のR32〜34型、そして現行モデルのR35型(2013年モデル)だ。ニスモはこうした旧モデルをメンテナンスして蘇らせ、最新技術を盛り込んでチューニングし再販する取り組みを行っているのだという。これらの車両はクラブマンレーススペック(以下、CRS)というネーミングが付けられ「サーキット走行を1日楽しみ、自走で帰宅できる車」として仕上げているという。
面倒な負担とおさらばできるのがCRSの魅力
実際、GT-Rといえどもサーキットの全開走行を行うのは車両への負担が大きく、十分な準備とメンテナンスを行うことが不可欠だ。
それをCRS化することでユーザーに大きな手間と負担をかけることなく、サーキット走行を楽しんでもらえるようにするのが狙いだ。もちろんCRSだったらメンテナンスフリーでサーキット走行できるというわけではないが、面倒な負担は軽減できるはずだ。
エンジンをO/Hするなど、ニスモ本気のプログラム
R35GT-Rに盛り込まれたチューニングアイテムはGT3やNアタックパッケージで採用されたオーリンズ社製4wayのショックアブソーバーをベースに独自のチューニングを施したものを装着。エンジンのECM&TCMは専用品とし、カムシャフトにはGT3仕様を仕込んでいる。もちろんポン付けするだけではなく、まずベースエンジンをきちんとオーバーホールしたうえでチューニングを加えていくというのだから手が込んでいる。
外装も前後にダウンフォースが増す専用エアロパーツが開発され装着されている。一見ノーマル風な外観だが、細かなディテールにニスモならではの空力アイテムが付加され、無言の圧力とも言える迫力を醸し出していた。
GT-Rの最新モデルにも負けないパフォーマンスに脱帽
早速サーキット試乗してみる。2013年モデルはローンチコントロールが省略されてしまったためスタートはDレンジで通常発進。電子制御系はレーシングのRモードを選択しトラクションコントロールもオフで走行開始した。GT-RのようにツインクラッチのDCT装着車はDレンジで走行するのが最速。実際、もてぎ北コースの小さなハンドリングサーキットでもギア選択は的確で不満ない。
加速感の力強さ、直進安定性の高さ、しっかりしたブレーキフィールなど、とても6年落ちの中古車とは思えない。アライメントがしっかり調整されていて本来の性能がまずしっかり引き出せる。その上でパワフルかつレスポンスに優れたエンジン特性が車両姿勢コントロールを容易にし、まさに意のままに操れる。最新のニスモGT-R2020モデルに勝るとも劣らない性能の高さを確認できた。
STIは得意の「体幹チューニング」でノーマル車との違いをアピール
次はスバルのメーカーチューンを代表するSTIのモデルを試乗する。車両はスバル フォレスターのX-BREAKにSTIパフォーマンスパーツを装着したモデルだ。
STIパフォーマンスパーツは、車体を人体に例え「体幹チューニング」を目指しているという。車にとっての体幹となるシャシーのプラットフォームを強靭化することで運転し易く、快適、かつ限界性能も高めることが可能だそうだ。
タイヤの接地感&走行性能がグッとレベルアップ
チューニングアイテムとしてフレキシブルタワーバー、フレキシブルロードスティフナー、サポートフロントキットなどを装着している。これらはシャシーの捻りや曲げ剛性を高め、4輪の接地安定性が向上し、走行性能が高まることが実証されている。その証に幾つかのパーツはメーカー純正パーツとして新車純正装着として採用されたものもあるという。
アクセルを踏み込める安心感がより格別に!
フォレスターに乗り込んで走りだすと、最初のコーナーを曲がる時にすぐにチューニングアイテムの効果が体感できる。ステアリングの切り込み操舵に対し前輪がブレることなくしっかりとスリップアングルをつけ、コーナリングフォースを発生する。その様子がシャシーを通じてドライバーにしっかり伝わってくるのだ。
さらにステアリングを戻す場面でも通常失われやすいステアリングの手応えが残っていてタイヤが直進に戻っていく様子まで感じ取れる。
このようなステアリングインフォメーションは車を操る上で極めて重要で、我々ドライバーはそこから路面の状況やミューの変化を感じ取っている。WRC(世界ラリー選手権)などで長年活躍してきたSTIの技術がドライバーの求めるインフォメーションを的確、かつ確実に伝達するノウハウを蓄積し磨き上げてきた結果といえるだろう。
思い通りのラインを狙えるコントロール性が大幅アップ
フォレスターは重心の高いSUVで全輪駆動のAWDだが、STIパフォーマンスパーツが装着されたことでサーキットのタイトターンでもステアリングに忠実に回頭し、ライントレース性も高くアンダーステアとは無縁の優れた運動特性を備えていた。絶対的な速さではなくコントロール性の高さと自在性にチューニングの粋を見た。
この体感チューニングパーツは同じプラットフォームを持つスバル車なら簡単に装着でき試乗会場にはインプレッサに装着したモデルも用意されていた。コストパフォーマンスの高さは抜群といえるのだ。
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