日産 エルグランド2.5 試乗レポート
- 筆者: 松下 宏
- カメラマン:難波賢二
V型6気筒2.5Lで競合車にはない質の高い走りを実現
旧型モデルの時代まで、エルグランドは上級ミニバンをリードするクルマとして存在してきた。それが02年5月に現行モデルに切り替わった後は、グランビアからフルモデルチェンジしたアルファードに売り負ける状況になり、さらに04年5月にはホンダからエリシオンが発売されてエルグランドの牙城はさらに揺るいでしまった。
アルファードの売れ行きの中身を見ると、V型6気筒の3Lエンジンを搭載したモデルではなく、直列4気筒2.4Lエンジンを搭載したモデルが高い比率を占めている。発売されたばかりのエリシオンでは3L車も良く売れているが、やはり2.4L車の比率が高い。V型6気筒3.5Lだけの設定であるエルグランドは不利な状況に置かれていたわけだ。
そんな状況に対応してエルグランドにも2.5エンジンの搭載車が設定された。競合車と同じ直列4気筒ではなくV型6気筒で、排気量も2.5にした点に違いがある。これによって競合車にはないパワフルな走りと静かでスムーズな質感の高い走りを実現したという。
オプションの2列目ベンチシートは6:4分割可倒式で回転座席機能もあり、使い勝手が良さそう
エルグランド2.5には標準仕様ともいえるVとエアロパーツを装着したハイウェースターが設定されるほか、オーテックジャパン製のライダーやライダーSも用意されているが、今回追加された2.5Lエンジン車に専用のエクステリアやインテリアが用意されているわけではない。グレードによる違いはあるにしても内外装の仕様は基本的に共通である。
インテリアの仕様に関しては、2.5Lエンジンの搭載車だけに、2列目ベンチシート仕様がオプションで設定されている。シートの快適性などの面から考えるとやや仕様ダウンともいえるのだが、6:4の分割可倒式で回転対座機能も備わるだけに、ベンチシート仕様が人気になる可能性は高い。
シートの快適性だけを考えたなら、最上級グレードのXLに設定される独立式のキャプテンシートが良いが、乗車定員も減るために日本ではあまり人気がない。3.5L車を含めて標準のマルチセンターシートよりベンチシートが人気になりそうだ。
車両重量は3.5L車とほぼ同じだが、上り坂でも難なく走るパワフルなエンジン
搭載エンジンが3.5Lから2.5Lに変わっても車両重量はほとんど変わらないので、エルグランド2.5に乗る前は走りにはあまり期待できないかなと思ったが、実際に走らせてみるとこれがけっこう良く走る。それを端的に感じたのは箱根ターンパイクの上り坂。小田原の料金所を過ぎるとすぐに急な上り坂があるのだが、この坂を想像した以上に元気よく走り抜けて行った。
エルグランドはFRの駆動方式を採用するため競合車に比べると車両重量がかなり重いのだが、それに合わせて動力性能に優れたV型6気筒2.5Lエンジンを搭載したのだろう。VQ25DE型エンジンが発生する137kW/232N・mのパワー&トルクは2t級のボディに見合ったものといえる。0-100㎞の発進加速タイムは競合車を上回るとの説明があったが、納得できるだけの走りを示してくれた。
足回りは大きな変更をしていないようで、相変わらずかなり柔らかめのチューニング。上級ミニバンとしての乗り心地を考えるとこうしたチューニングになるのだろうが、アイポイントが高めなこともあってコーナーでのロール感が大きくなるため、山道を運転していると不快な揺れを感じた。もう少ししっかりした感じの乗り味が欲しいところだ。
比較的低価格で上級ミニバンを手に入れたいというユーザーにとって新しい選択肢に
従来からの3.5L車の価格はベースグレードでも300万円を超えており、簡単には手が届かないクルマという印象を与えていた。3.5L車だけではアルファードに売り負けるであろうということはデビューした当初から指摘していたが、発売直後からそうした状況になった割には、2.5L車が追加されるのに時間がかかりすぎたように思う。もっと早い段階で追加していれば、販売状況には大きな違いが出たのではないか。
ただ、後から出てきた分だけ動力性能の高さでは大きく上回っているし、6気筒エンジンならではの回転フィールの良さや静粛性の高さなど、競合車を上回る魅力を備えたクルマに仕上がっている。比較的低価格で上級ミニバンを手に入れたいというユーザーにとって、エルグランドが新しい選択肢として加わったのは間違いない。カーナビなどのオプションを装着すると、車両価格はやはり300万円を超えるが、手頃な上級ミニバンであるのは間違いない。
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