インディ500:佐藤琢磨が20位完走、武藤英紀はリタイアで28位

インディ500 佐藤琢磨

第94回インディ500の決勝レースが30日(日)、アメリカのインディアナポリスで開催され、佐藤琢磨が20位完走、武藤英紀はリタイアで28位だった。

ポールポジションからスタートしたのは、3回の優勝経験を誇るエリオ・カストロネベス(Team Penske)だったが、2007年ウイナーのダリオ・フランキッティ(Chip Ganassi Racing)がグリーンフラッグと同時に見事な加速を見せ、1周目にして3番手からトップへと躍り出た。暑さの中でマシンのハンドリングが定まらないマシンも出る中、フランキッティはライバル勢を悠々と突き放すハイペースで疾走し、レースをリードし続けた。

レース終盤の161周目、ルーキーのセバスチャン・サーべドラ(Bryan Herta Autosport)がアクシデントを起こしてフルコース・コーションが発生。このチャンスを利用して、ほぼすべてのドライバーがピットストップを行った。しかし、ピットアウトした彼らにはフルタンクで走れるギリギリの周回数が残されていた。

ここでピットインをしなかったマイク・コンウェイ(Dreyer & Reinbold Racing)は177周目までトップを走った。続いてトップに立ったジャスティン・ウィルソン(Dreyer & Reinbold Racing)は残り13周でピットに向かわざるを得なかった。この少し前のタイミングで長いフルコース・コーションが出されていれば、彼らがウイナーとなったかもしれない。

ポジションを争いながら燃費をセーブする必要のある難しい戦いは、ベテランのフランキッティの得意とするところだ。彼はゴールまで残り9周でトップに復活した。そしてファイナルラップを迎えようというとき、コンウェイがライアン・ハンターレイ(Andretti Autosport)と接触して宙へと舞い上がり、ターン3出口のフェンスに激突するアクシデントが発生。レースはイエローフラッグとチェッカーフラッグが同時に振られ、フランキッティがインディ500でのキャリア2勝目を飾った。フランキッティのリードしたラップは200周のうちの155周にも及んだ。Chip Ganassi Racingにとってはインディ500での通算3勝目で、チップ・ガナッシにとってはオーナー、もしくは共同オーナーとしての通算4勝目となった。

2位でゴールしたのはダン・ウェルドン(Panther Racing)だった。彼は最後のアクシデントがなければ、フランキッティとの優勝争いをファイナルラップで見せることができていたかもしれない。

レース後にフルコース・コーションの出された最終ラップで追い越しがあったかどうかが審議された結果、3位はマルコ・アンドレッティ(Andretti Autosport)のものと判定が下された。当初に3位と発表されたアレックス・ロイド(Dale Coyne Racing)は4位、5位はスコット・ディクソン(Chip Ganassi Racing)のものとなった。

インディ500史上最多タイ記録となる4勝目達成のチャンスにあったカストロネベスは、ゴールまで55周のピットストップを3位で迎えたが、エンジンをストールさせるミスを犯して16位まで後退。レース終盤にピットタイミングをずらして大逆転を狙う作戦に出たが、それは成功せずに9位でのゴールとなった。

佐藤琢磨(KV Racing Technology)は31番手という最後尾グリッドからのスタートながら、レースの折り返し点を15位で迎えた。しかし、ピットでタイヤなどへの接触があったことに加え、閉鎖されているピットへ入って作業を行わなければならなかったため、レース再開後にピットで15秒停止という厳しいペナルティを受け、周回遅れとなった。さらに、レースへ戻った後にリーダーにパスされたために2周の遅れとなり、完走は果たしたが20位でのゴールとなった。

武藤英紀(Newman/Haas Racing)は、スタート直後からマシンのハンドリングが不安定で、徐々にポジションを落としていった。マシンに何かトラブルがあることも考えられたため、武藤は1回目のピットストップを早目に行った。その後も何度かピットに入ってマシンに変更を施したが、ハンドリングの向上が見られず、76周でリタイアとなった。

女性ドライバーの最上位はダニカ・パトリック(Andretti Autosport)の6位。ルーキー最上位はマリオ・ロマンシーニ(Conquest Racing)による13位だった。

ダリオ・フランキッティ(優勝)

「チームの用意してくれたマシンはスタート直後からハンドリングがとてもよく、楽々とトップに立つことができた。ずっとレースをリードし続けることができたが、最後の最後になって燃費をセーブすることが重要なレース展開へと変わった。そして、私にとって燃費による戦いはかなり厳しいものになると感じた。トニー・カナーン(Andretti Autosport)のペースが速かったからだ。しかし、彼はピットへと消えた。ウェルドンとの間には十分な距離があると思っていたが、それが一気に縮まった。そこへイエローフラッグが出された。インディカー・シリーズに1年出場していなかったというのに、昨年はチャンピオンシップを獲得でき、今年はこうしてインディ500での2勝目を飾ることができた。チームのクルー全員に感謝している」

ダン・ウェルドン(2位)

「2年連続の2位は決していい結果ではない。来年こそは1つポジションを上げなくてはならない。我々はいいレースを戦っていたと思う。Panther Racingのクルー全員がすばらしい働きをしてくれた。ただ、私のレースは少しばかり行儀がよすぎたかもしれない。レース終盤の5周、私はピットからの指示をいくつか無視した方がよかったのかもしれない。勝ちたかったけれど、チームとしてはゴールまで無給油で走りきることを重視した。もう少し私が若かったら、チームの指示を無視してフランキッティを追い詰めていたと思う。彼は残り2周で失速した。結果はどうなっていたかわからない」

佐藤琢磨(20位)

「すごく難しいレースでした。しかし、自分にとって最初のインディ500挑戦で完走できたことはよかったと思います。アクシデントも経験しましたが、インディ500の決勝に進出することができ、目標をひとつ達成しました。次の目標がレースの完走でした。レースの中盤までにトップ10付近までポジションを上げることができ、最終リザルトもいいものにできると考えていました。ところが、ピットストップでいくつか問題が出て、その上にペナルティを受けて周回遅れに陥りました。そこからばん回するのは難しかったですが、最後まで走って、とても多くのいい経験をし、長い戦いの中で本当に多くのことを学ぶことができました」

武藤英紀(28位)

「チームは冬の間からインディ500に向けてマシンを準備していました。本当に一生懸命に働いてくれていました。それだけに、本当に悔しいレースでした。予選2日目に暑い中で走り、グリップが低いと感じました。そこで、ファイナルプラクティスには調整をしたマシンで臨み、マシンのフィーリングがよくなっていました。ところが、今日はファイナルプラクティスよりさらに気温が上がった影響か、レースがスタートしてみるとマシンのグリップが全然感じられない状態でした。周回を重ねるたびにハンドリングが悪くなっていきました。ピットに何度か入り、車高、トウ、キャンバーなどのセットアップを変更しましたが、基本的に問題の本質は改善されず、ピットでの作業だけで大きなグリップを得られるマシンにするのは難しいという判断になりました。高くなった気温だけがグリップ不足の原因ではなく、何かほかにも理由はあったと思います。次のテキサスはもうすぐですが、気持ちを切り替えてがんばります」

エリック・バークマン|HPD社長

「インディ500での2勝目を挙げたフランキッティ、そしてChip Ganassi Racingを称えたい。序盤からトップを快走した彼らだったが、終盤に入ってからは勝利を獲得できない可能性も出てきていた。最後は燃費も重要なファクターとなる戦いとなった。さまざまな戦いが見られ、実にエキサイティングなレースであった。インディカー・シリーズではHonda Indy V8エンジンを全員が使い、シャシーはダラーラ、タイヤはファイアストンのワンメイク。マシンの差はチームのノウハウによる小さなものだけで、だからこそ接近戦が展開されている。今日はインディ500史上最も暑い一日だった。それが各チームの走りに影響していた。インディ500とは何が起こるかわからないレースだ。今日も180周を過ぎてから展開が変わった。今回の勝利はHondaにとってインディカー・シリーズにおける100勝目となった。Honda Indy V8エンジンは5年連続してインディ500で一切のトラブルを出さなかった」

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筆者
樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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