「脱炭素化」、事業に「好影響」は14.0% 一方、悪影響は19.5%に 自動車産業の約5割がEV普及を「マイナス」と回答


脱炭素社会に向けた企業への影響調査(2022年)

「脱炭素化」を目指す動きが世界的に加速している。日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすることを宣言しており、7月27日に脱炭素関連政策を推進する「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」の初会合を開いた。会議ではGX実現に向けて、今後10年間で官民合わせて150兆円の投資を実現する方針が示された。
他方、脱炭素の実現に向けた一つの戦略として、政府は2035年までに新車販売で電動車100%の実現を表明している。こうした動きへの対応はビジネスチャンスとなる一方で、対応が遅れた場合は事業にマイナスの影響をもたらすことが危惧されている。
そこで、帝国データバンクは、脱炭素社会に向けた企業への影響についてアンケート調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2022年7月調査とともに行った。


<調査結果(要旨)>




脱炭素社会の進展が自社の事業に「プラスの影響」があるとした企業は14.0%だった一方、「マイナスの影響」は19.5%となり、マイナスの影響がある企業はプラス影響がある企業を5.5ポイント上回った。他方、「影響はない」は33.8%となった
EVの普及が自社の事業に「プラスの影響」があるとした企業は12.3%となった一方、「マイナスの影響」とした企業は13.8%であった。他方、「影響はない」は42.3%となった
EVの普及による「自動車関連業種」への影響について、「プラスの影響」とした企業は16.5%となった一方、「マイナスの影響」とした企業は46.5%となり、全体を大幅に上回った。他方「影響はない」は13.2%であった


脱炭素社会の進展、約2割の企業で「マイナスの影響」


脱炭素社会の進展は、今後の自社の事業にどのような影響があるか尋ねたところ、「プラスの影響」があるとした企業は14.0%と、2021年に実施した同様の調査から0.8ポイント減となった。一方、「マイナスの影響」とした企業は同3.4ポイント増の19.5%となり、マイナスの影響がある企業はプラス影響がある企業を5.5ポイント上回った。

他方、「影響はない」は、1.2ポイント減の33.8%だった。


特にガソリンスタンドや自動車小売業で脱炭素化による「マイナスの影響」目立つ


脱炭素社会の進展により「プラスの影響」があると考えている企業を主な業種別にみると、「金融」が23.3%となった。また、「農・林・水産」(22.6%)や「電気機械製造」(22.3%)なども2割超だった。

一方、「マイナスの影響」 では、ガソリンスタンドなどを含む「専門商品小売」(55.8%)が全体(19.5%)を36.3ポイント上回った。また「自動車・同部品小売」(42.2%)、「鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売」(35.8%)、「運輸・倉庫」(35.5%)は全体より15ポイント以上高くなった。

企業からは、「脱炭素を踏まえた融資商品の設定など、取り組みが進みつつある」(金融、和歌山県)といった声が聞かれた一方、「脱炭素社会が進むにつれて、実際にどのような設備投資が必要になるかが不透明であり、設備投資を行う際の資金面においても不安であり課題でもある」(ガソリンスタンド、北海道)といった、先行きに対する不安感を述べる意見も聞かれた。


EVの普及、12.3%の企業で「プラスの影響」の一方、13.8%で「マイナスの影響」


電気自動車(EV)の普及は、今後の自社の事業にどのような影響があるか尋ねたところ、EVの普及が「プラスの影響」とした企業は前回調査から1.1ポイント減の12.3%であった。

他方、「マイナスの影響」とした企業は同1.1ポイント減の13.8%となり、「影響はない」は1.6ポイント増の42.3%であった。


ガソリンスタンドや自動車関連業界でEV普及による「マイナスの影響」目立つ


EVの普及により「プラスの影響」がある企業を主な業種別にみると、「電気機械製造」が29.8%と、全体(12.3%)を17.5ポイント上回った。また、「家電・情報機器小売」(25.4%)や「自動車・同部品小売」(22.9%)は全体より10ポイント以上高くなった。

一方、「マイナスの影響」 では、ガソリンスタンドなどを含む「専門商品小売」(50.8%)は全体(13.8%)を37.0ポイント上回った。また、「自動車・同部品小売」(43.1%)、自動車や自動車部品メーカーを含む「輸送用機械・器具製造」(39.8%)、「鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売」(32.3%)などでもマイナスの影響があるとする企業が多い。

企業からは、「EV化のための、部品開発をする顧客への装置を製作している。初めての仕様に挑戦している」(SW電源等製造、徳島県)といった具体的なプラス影響を示す声がある一方、「EV化にともない、取り扱いを終了する商品群が出てくる予定」(自動車部分品・付属品小売、大阪府)など、厳しい声も聞かれた。


「自動車関連業種」ではEV普及により5割近くの企業が「マイナスの影響」


EVの普及による「自動車関連業種[1]」への影響に限定すると、「プラスの影響」とした企業は16.5%となった。一方、「マイナスの影響」とした企業は46.5%となり、全体(13.8%)を32.7ポイント上回った。他方「影響はない」は13.2%となった。

EVの普及が今後の事業拡大のチャンスと捉える企業の声は一部あがっているものの、電動化による部品の減少や設備投資・技術面での対応について懸念する声が、自動車部品メーカーといった川上産業から川下産業である自動車整備業まで、数多くあがっている。

企業からは、「EV化については当社固有の技術で生産する部品が使われなくなる可能性が高い」(自動車部分品・付属品製造、和歌山県)や「自動車修理業にとってEVへの転換は、既存設備や技術等だけでは対応が難しく、設備投資やEVサービスパーソン育成等必要なことが多岐にわたる」(自動車一般整備、静岡県)などの声が聞かれた。こうしたなか、「自動車関連以外の取引先を開拓している」(自動車操縦装置製造、長野県)といった声にあるように、すでに対応を行っている企業もみられた。


[1] 「自動車関連業種」は、「内燃機関電装品製造」、「自動車製造」、「自動車車体・付随車製造」、「自動車用内燃機関製造」、「自動車操縦装置製造」、「自動車部分品・付属品製造」、「自動車卸売」、「自動車部分品・付属品卸売」、「中古自動車卸売」、「自動車(新車)小売」、「中古自動車小売」、「自動車部分品・付属品小売」、「二輪自動車小売」、「自動車賃貸」、「自動車一般整備」、「自動車車体整備」、「自動車電装品整備」、「その他の自動車整備」を含む


本調査の結果、脱炭素社会の進展により、14.0%の企業でプラスの影響があることが分かった。一方で、マイナスの影響があると考える企業の割合は前回調査より上昇した。特にガソリンスタンドなど化石燃料を取り扱う企業では先行きに対する不安の声が多くあがっている。
他方、電気自動車(EV)の普及による影響については、プラスの影響とマイナスの影響があると考えている企業はそれぞれ1割超でほぼ同程度となった。しかし、「自動車関連業種」でみると、半数近くの企業がマイナスの影響があると捉えている。

国は省エネ・脱炭素に関する補助金制度の実施や技術開発・研究への公的支援を行うほか、CO2排出に課金することでCO2の削減を進める「カーボンプライシング」なども検討している。他方、消費者の間では環境に対する意識が高まる傾向にあり、いわゆる「エシカル消費」が主流化しつつある。企業はこうした市場環境の変化に対応するために「脱炭素経営」を取り入れていくことが必要不可欠であろう。





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樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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