日産、環境対応と高級車用塗装を両立させた新塗装技術を開発
日産自動車株式会社と日産車体株式会社、関西ペイント株式会社、株式会社大気社は24日、環境対応と高級車への適応が可能な塗装外観品質を両立させた新塗装技術を共同開発し、実用化したと発表した。
この新塗装技術は、今年1月から本格稼働を開始した日産車体の生産子会社である日産車体九州株式会社の新工場で、中近東を主なマーケットとした高級SUV「新型パトロール」の塗装工程に採用した。
自動車の塗装工程には、塗料をスプレーする工程や高温で焼き付ける工程があり、車体・組立工程等を含めた自動車工場全体のおよそ1/4のCO2を排出している。このCO2排出量を減らし、環境への配慮に対応していくため、中塗り・上塗り工程でのスプレー・焼付けの統合3WET(スリー・ウェット)塗装を採用した。3WET塗装は、中塗り・上塗りのカラーベースとクリアーの3層を連続して塗り重ねた後、1回で焼き付ける方法である。
3WET塗装では3層連続塗装のリスクとして、塗装面の外観品質(肌の平滑感や艶)が従来の塗装方法に比べて低いため、高級車に求められる塗装外観品質を確保することができなかった。
今回、1層目の中塗りに新開発の塗料(吸水性中塗り塗料:*1)を採用し、これまで困難とされてきた水性の上塗りカラーベース塗料との層の間の混層(混じり合い)を解決することで、上塗りを平滑にすることが可能となり、3WET塗装においても高級車に適用できる塗装外観品質を世界で初めて実現した。
また、本新工法では、上塗りのカラーベースに水性塗料を採用することで、VOC(揮発性有機化合物)についてもおよそ27%(*3)低減を図っている。水性塗料では水分を蒸発させるための乾燥設備によってCO2排出量が増加してしまうが、上塗りカラーベースの塗料スプレー中に水分を蒸発させるために、塗装ガンに乾燥装置を一体化させた装置(塗装機一体型エアシールド:*2)を開発し、乾燥設備の乾燥時間を半減することで上塗りベース塗装から上塗りクリアー塗装までの工程部分のCO2排出量を25%(*3)低減し、世界最高水準とした。
なお、塗装工場全体でのCO2排出量も16%(*3)削減し、環境への配慮に寄与している。
*1: 関西ペイントと日産車体が共同開発。吸水性のある樹脂と溶剤からなる溶剤型の中塗り塗料で、2層目に塗装される水性のカラーベース塗料に平滑性を付与し、高品質塗装を可能とした。
*2: 大気社と日産車体が共同開発。塗装ガンの外周部に装着し、スプレー中の水性塗料を高温低湿度のエアで包み込み、塗装中のエリア内を一定の温度・湿度にしながら、塗料粒子が塗装ガンからボディへ飛行している間に水分を蒸発させる装置。
*3: 日産車体の算出基準による。
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