1116万円でもお買い得!? BMW iXは全長5m弱のサイズを気にしなければ実用性満点だった!

  • 筆者: 竹花 寿実
  • カメラマン:堤 晋一
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BMWの新型BEVであるiXは、彼らが次の時代を見据えて開発したSAV(スポーツ・アクティビティ・ビークル)である。そのルーツは、2016年3月にBMWの創業100周年記念イベントで公開された「BMWヴィジョンNEXT 100」というコンセプトカー。

当時は背の低い4ドアクーペだったが、2018年秋にパリ・モーターショーで発表された「BMWヴィジョンiNEXT」ではSAVに路線変更。コロナ禍や半導体不足といった困難が続く中、当初の計画通り2021年中に生産がスタート。11月に日本上陸も果たした。

今回はiX xDrive50に試乗したジャーナリストの竹花寿実さんに実際の乗り味を解説してもらった。

目次[開く][閉じる]
  1. インパクトのある外観のiXはBMWが向かう未来を示した一台だ
  2. 内装は豪華絢爛! 一番の特徴はすっきりとしたインパネ周りだ
  3. 合計523馬力のパワフルな走りが魅力!

インパクトのある外観のiXはBMWが向かう未来を示した一台だ

今回都内で試乗することができたiXは、相当な意欲作だ。BMWは、メルセデス・ベンツなどのように、全モデルピュアEV化は宣言していないが、2030年までに世界で販売する新車の50%以上をBEVにするという目標を掲げ、ミニ・ブランドについては全モデルをBEV化するとアナウンスしている。彼らはBEVの普及拡大によるCO2削減のみを目指しているわけではなく、「RE:THINK、RE:DUCE、RE:USE、RE:CYCLE(再考、削減、再使用、リサイクル)」をキーワードに、「循環型経済の未来」の実現に向けて、先駆者的な役割を果たすことを目指しているのである。9月にミュンヘンで開催されたIAAモビリティでも、コンセプトカー「BMW iヴィジョンサーキュラー」でこの点を強くアピールしていた。

iXは、BMWのこのような思考を現時点でプロダクトとして具現化したものだ。リサイクル・プラスチック使用率は20%で、インテリアにはサステイナブルな素材を使用し、ドイツ・バイエルン州のディンゴルフィンゲン工場では、100%再生可能エネルギーで生産されているiXは、その見る者に強烈な印象を与える斬新なデザインからも、「BMWが向かおうとしている未来が詰まったモデル」という強いメッセージが感じられる。

全長は5m弱! 先進的なエクステリアが特徴的だ

全長4955mm、全幅1965mm、全高1695mmと大柄なボディは、従来のBMWのデザインとは明らかに一線を画している。ラインを極力使わずに、シンプルで張りのある面で構成した「モノリシック(一枚岩の)」なボディは、現代彫刻のような不思議な雰囲気で、大きなキドニーグリルとスリムなヘッドライトによるフロントマスクや、直線的な造形のリアコンビランプなどと絶妙なコントラストを生み、先進的なイメージも感じさせる。

内装は豪華絢爛! 一番の特徴はすっきりとしたインパネ周りだ

ドアグリップの代わりに窪みの上部に備わる電磁スイッチを押すと開くサッシュレスのドアを開けて運転席に乗り込むと、インテリアはさらに斬新だ。

ダッシュボードには、12.3インチのメーター・ディスプレイと14.9インチのタッチディスプレイを繋いだ横長のBMWカーブド・ディスプレイが備わり、ドライバー正面にはBMW初のヘキサゴナル(六角形の)デザインのステアリング・ホイールを装備する。センターコンソールには、トグルスイッチ状のシフトセレクターと、クリスタル製のiDriveコントローラーが備わる。

iDriveはBMWオペレーティング・システム8を搭載し、AI音声会話システムのBMWインテリジェント・パーソナル・アシスタントによるボイス・コントロールも可能なため、タッチ式ボタンも最小限となっている。結果、インパネ周りは非常にシンプルな構成で、最先端のデザインホテルのような雰囲気である。

個性的なヘッドレスト一体型のシートが採用される

ヘッドレスト一体型のシートも、個性的なデザインだが、座り心地やサポート性は申し分ない。ルーフに備わるスカイ・パノラマ・ガラス・サンルーフは、スイッチひとつで透明・不透明を切り替えられる、ボーイング787ドリームライナーの電子カーテンと同様の機能が備わるため、物理的なシェードは省略されている。

とにかくどこを切り取っても新しく、機能的でありながら、これ見よがしにハイテクをアピールする事なく、とてもくつろぎ感にあふれている。BMWが「シャイ・テク(Shy Tech)」と表現するのもよくわかる。

合計523馬力のパワフルな走りが魅力!

今回の試乗モデルは、2タイプ用意されているうちの、より高性能な仕様であるiX xDrive50。電気モーターは、フロントが258馬力と365Nm、リアは313馬力と400Nmを発揮し、合計で523馬力の最高出力と765Nmの最大トルクを実現している。

フロア下に搭載されるリチウムイオンバッテリーは、111.5kWhの容量を持ち、WLTCモードで650kmもの航続距離を実現。充電は、最大11kWの普通充電のほか、CHAdeMOを採用する日本でも出力150kWまで対応(コンボ式が普及しているヨーロッパでは最大200kW)し、10分間で100km以上の走行ができる電力を充電出来るという。今回は充電する機会はなかったが、航続距離も長いので、実用面で困ることは少なそうだ。

BMW初の4WDのBEVであるiXは、走りの方もBEVを長く作り続けてきたBMWらしい仕上がりである。今回は生憎の雨で、時間も限られていたのでファーストインプレッションの域を出ないが、デフォルトのパーソナルモード(いわゆるノーマルモード)では、発進時を含む常用域でアクセルペダルの操作に対して過敏に反応するようなことがなく、とても扱いやすいと感じた。

またシフトセレクターをBに入れると、アクセルペダルを戻すと最終的に完全停止するワンペダルドライブも可能。Dに入れた状態でも車両設定で回生ブレーキの効き具合を4段階に調整でき、ドライバーの運転スタイルに合わせた制御に設定可能となっているのは嬉しい。

スポーツモードの人工的な走行音も「未来のクルマ」を感じさせる

スポーツモードに入れると、俄然パワフルでダイナミックな走りを披露する。「アイコニック・サウンド・エレクトリック」と呼ばれる人工的な走行音も、なんだかSFアニメで聞こえてきそうな不思議なサウンドに変化し、これまで経験した事の無い「未来のクルマに乗っている感覚」に包まれた。

走行モードにはもうひとつエフィシエントモードが用意されているが、デイリーユースでは動力性能的にこれで十分である。航続距離の心配も少なくなるので、実際にはほぼエフィシエントモードで走ることになるだろう。ただし、その場合はSF的な走行サウンドはオフになる。

ハンドリングはとても軽快だ。車両重量は2560kg(スカイ・ラウンジ・パノラマ・ガラス・サンルーフ非装着車は2530kg)とかなり重いが、重さは全く感じない。

むしろ熱可塑性プラスチックやカーボンを多用した軽量ボディのおかげで上体が軽いため、とても低重心でとても軽さを感じる身のこなしである。iX xDrive50に標準搭載の、前後輪統合制御ステアリング・システムであるインテグレイテッド・アクティブ・ステアリングの制御も自然で、ホイールベースが3000mmもあることを意識させない取り回しのしやすさも感じられた。

乗り心地は比較的硬質だが、こちらもiX xDrive50に標準の4輪アダプティブ・エア・サスペンションが、路面からの入力の角を上手くいなしていて、とてもフラットな乗り味を実現している。高速走行時の風切り音もとても小さく、Cd値が0.25というのも納得。ロングドライブでも優れた快適性を発揮してくれるだろう。

ラグジュアリーカーとして実用性も申し分ない

クルマとしての基本性能をしっかり押さえながら、極めて未来的で、さらにはラグジュアリーカーとしての新しい表現も感じさせるiX。実用性も申し分なく、これで1116万円という価格は、かなりお買い得なのではないかと感じた。充電環境に問題がなく、大柄な車両サイズを苦にしない人には、かなり魅力的な選択肢になるはずである。

【筆者:竹花 寿実】

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